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地元同意には法的な定めがなく、宮城県の村井嘉浩知事は「立地自治体の判断で十分」との立場を取る。
樋口氏は、東京電力福島第1原発事故で半径250キロ圏内の住民避難が検討された背景を踏まえ「250キロに及ばなかったのは全くの偶然。数々の奇跡が重なった」と強調する。
女川原発の250キロ圏には宮城以外の東北5県も含まれる。「同意の範囲は少なくとも100キロは必要。5県の知事が同意権を持ってもおかしくない。県民の生命と財産を守ることが知事の第一の役割だ」と語った。
女川2号機の重大事故を想定した広域避難計画に実効性がないとして、石巻市民が宮城県と同市に地元同意の差し止めを求めた仮処分で、仙台地裁は7月、申し立てを却下。住民側が主張する避難計画の不備によって「人格権が侵害される具体的な危険性があるとは言えない」と結論付けた。
今回の仮処分は、従来争われた原発自体の安全性ではなく、避難計画に主眼を置いた初のケースだった。樋口氏は地裁決定に「裁判所の最終的な役割は国民の命と生活を守ること。争点設定や法律構成を当事者任せにせず、本当の争点だと思うところに主張を合わせないといけない」と述べ、より積極的な訴訟指揮の必要性を訴えた。
女川原発は03年の三陸南地震、05年の8.16宮城地震、11年の東日本大震災で、いずれも耐震設計の目安となる基準地震動(最大想定の揺れ)を超える揺れを記録。東北電は従来の最大580ガルから1000ガルに引き上げたが、樋口氏は「とんでもなく危ない。何ガル以上の地震は来ないということは人間に言えるわけがない」と危惧する。
その上で、経済効果や二酸化炭素排出抑制を理由とした再稼働の推進に対し「経済が第一ではない。事故が起きた時の環境汚染は比較にならない。はるかに値打ちのある国土が失われることの重要性を考えてほしい」と投げ掛けた。
[関西電力大飯原発3、4号機運転差し止め訴訟] 周辺住民ら189人が2012年11月、関電を相手に提訴。一審福井地裁(樋口英明裁判長)は14年5月、2基の地震対策に構造的欠陥があり、「基準地震動(最大想定の揺れ)を超える地震が到来しないというのは、根拠のない楽観的な見通しにすぎない」と指摘。「運転によって人格権が侵害される具体的な危険がある」として、原発の半径250キロ圏内の住民の請求を認め、運転差し止めを命じた。二審名古屋高裁金沢支部は18年7月、「2基の危険性は社会通念上無視し得る程度にまで管理・統制されている」として地裁判決を取り消し、住民側の請求を棄却。住民側は上告せず、二審判決が確定した。
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