研究成果は、国際科学誌「Urology(ウロロジー)」に2018 年5 月8 日掲載
この度、名古屋市立大学大学院システム自然科学研究科村瀬研究室と、名古屋市立大学大学院医学研究科小児泌尿器科学、腎・泌尿器科学分野との共同研究による論文(福島原発事故後の停留精巣の全国的増加)が、国際科学雑誌Urology に掲載されましたのでご報告いたします。
小児先天性奇形の一つである停留精巣は出産前に診断することができず、それを理由とする中絶は発生しません。そのためこの疾患は、2011 年に発生した東日本大震災とそれに続く福島第一原子力発電所事故が先天性疾患にどのような影響を与えたかを評価するのに適していると考えられます。私たちは、医療費の包括支払い制度(DPC/PDPS*1)を導入している病院に関して、中央社会保険医療協議会により公表されている退院件数データを用い、2010 年度から2015 年度の6 年間で連続して停留精巣の手術退院件数が得られた35 県94 病院のデータを集計*2しました。その集計データについて2010-2011 年度と2012-2015 年度を比較したところ、停留精巣の手術退院件数は、原発事故後に13.4%(95%信頼区間:4.7%-23.0%)の有意な増加が認められ、調査終了時の2015 年度まで高い水準が維持されていました。停留精巣のリスクファクターである低出生体重児や早期産の割合は調査期間中においてはほぼ一定であり、原発事故の関与が主要な原因として考えられました。しかしながら、本研究ではそれを証明するには至っていません。
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◇Nationwide Increase in Cryptorchidism after the Fukushima Nuclear Accident