『ホンマでっか!?TV』の武田邦彦、濃縮ウランの研究者から"反原発"になった理由 via Rolling Stone

『ホンマでっか!?TV』の武田邦彦は、濃縮ウランの研究者で、かつては原子力ムラのエリートだった。そんな武田が"反原発"になった理由は何っだったのか。

連載|SAVE HUMANITY:武田邦彦 工学博士/中部大学総合工学研究所特任教授

武田邦彦といえば、『ホンマでっか!?TV』での歯に衣着せぬ発言を連発する姿を思い浮かべる人が多いだろう。彼は濃縮ウランの研究者で、かつては原子力ムラのエリートだった。そんな武田が"反原発"になった理由は何っだったのか。内閣府原子力委員会および安全委員会の専門委員をも務めた男の、核心的な原子力論とは。

―武田さんは元々、濃縮ウランの研究をなさっていたんですよね?

そうですね。原発の原料を研究していたっていうことです。1990年には日本原子力学会特賞も獲って、待遇も良かったんですが、45歳の時に原子力ムラの嘘が嫌で辞めました。嘘というのは、原子力は危険なのに、安全だと思わせるための嘘です。それでも、私はその後、原子力委員会や原子力安全委員会の専門員をやったりしてきました。それは、そうした委員会の上のほうにはちゃんと原子力が危険だと思っている人もいて、そういう人たちが"武田みたいな原子力に批判的なヤツも使わなきゃいけない"って後ろ盾をしてくれたらからです。ですが、事故以降はそういう人がいなくなり、完全な裏切り者扱いで声もかかりませんけどね(苦笑)。

―原子力は危険だとおっしゃいましたが、具体的に言うと?

簡単に言えば、原子炉を止めることができないということです。福島の事故が起こった時、NHKは"原子炉は止まりました"って言っていましたが、実際は走り続けたわけです。だから冷やさなければいけなかった。それで、今も8億ベクレルも毎日放射性物質が出ているんです。もっと言えば、止まってないから福島は爆発したんですから。

―確かに。

もう一つ、原子力には解決せざるべき欠陥があります。それは、人間がどのくらいの放射線を浴びたらどうなるかがわからないということです。特に、被ばくした人の子供がどんな影響を受けるかが明らかじゃないんです。だからといって、それがわかるまで原発をやらないとなると、100年〜200年は稼働できない。専門家同士の国際会議でも"放射能による子孫への影響はある"という前提で議論しているんですが、一般市民には子孫への影響については言わないことになっているんです。

(略)

みんなそうです。武士の魂がなくなっちゃったんですね。だけど、しょうがないなと思うんです。原発の所長さんに会ってご飯を食べることもあるんですが、彼らはみんなサラリーマンなんですよ。サラリーマンが原発の所長をしていてはいけないんです。僕はウラン濃縮研究所にいたんですけど、そこでもしょっちゅう問題は起こっていました。例えば、研究所の従業員がウランを濃縮する濃縮塔の上から落ちたことがあった。そしたら誰かが、"救急車を呼びましょうか?"って聞いてきた。救急車を呼んだら翌日の新聞には"ウラン濃縮研究所で事故!"と、ウランの中に人が落ちたような記事が出てしまう。そう思うと、普通のサラリーマンだったらタクシーで運びますよ。そして親しくしている医者に連れて行けばマル秘で終わる。だけど僕は"救急車を呼べ"と言ったんです。僕らは市民のために研究しているのですから。これは格好つけているわけじゃなく、僕の考えなだけです。

(略)

―では、福一の事故の健康への影響をどんな風に捉えていますか?ここにも嘘が潜んでいるんだとは思いますが……。

事故に関しては2号機が爆発しなかったので、軽度で済みましたが、放出した放射性物質がすごく多い。広島原爆とよく対比されますが、僕は200倍と言っています。量にして100京ベクレルです。これは、頭の上に降ってきたら日本人全員が16回死ぬ量です。不幸中の幸いだったのが、福島原発は太平洋側にあったということです。そしてあの時、西風だったから9割は海のほうへ行った。あれが新潟の原発だったら大変なことになっていたと思います。

―ええ。健康への影響はどんなふうに?

放射線の被ばくによる害は、主に2つあります。致命的ガンと重篤な遺伝性疾患。遺伝性疾患です。ガンの場合、潜伏期間が5年から20年なので、今の段階ではわからないのが当たり前なんです。ああいう事故では、即死しませんから。ガンの場合、潜伏期間20年だと5歳で被ばくしたら、25歳くらいからガンが出る。チェルノブイリでは随分そうした事例がありました。

―福島でも小児甲状腺がんは既に増えていると言われていますが、その実態は?

小児甲状腺がんの発生率は普通10万人に3人くらいですが、今の福島では10万人で150人を超している。発症率で言えば通常の50倍くらいです。と、ここまでは言えますが、まだ潜伏期間を過ぎてないので、あとはわからないんです。今わかっていることは一つしかない。国立がん研究センターの見解によれば、原発事故前の被ばくの限度=1年1ミリシーベルトの被ばくで交通事故と死亡数がほとんど同じ、数で言うと10万人あたり6.6人が死ぬということです。

―ということは、年間100~250ミリシーベルトの基準で働く福島の原発作業員は、被ばくの影響が出る可能性は高いと?

ええ。実際にけっこう亡くなっているのではないかと思います。被ばく線量に比例して影響が出ますからね。1年1ミリシーベルトだったら交通事故くらい。100ミリシーベルトならその100倍か、成人男子だったらそれを5で割るくらいになります。しかも作業員は防護服を着ていると言いますが、あれは何も防護していません。放射線は鉛じゃないと防護できないのに、彼らが着ている防護服はペラペラのプラスチック製なんですから。放射能を含んだ粉が付かないようにする"チリ付着防止服"でしかないんですよ。放射性物質を付けて家の中へ入ることは防いではいますが、それ以上の意味はありません。

(略)

―そして、その原発は日本が核武装する可能性を示唆したものであり、原発というかたちであれ核を保有することが他国からの攻撃の抑止力になっているという理論も原発推進派にはありますが、武田さんはそこも否定していますよね。

核はいらないです。今の時代で日本に核攻撃してくる国なんてありませんから。僕は思想的には右翼で、靖国神社の講演会の最高人数記録を持っているような人間なんです。だけど、僕は今の憲法を支持しています。今の憲法には自衛をしちゃダメだとは書いてないわけだから、自衛はすればいいんです。それで、世界各国が全部自衛したら戦争は起こらないですからね。そもそも、万が一他国が攻撃してきたとしても、日本はもう少し軍事予算を増やせば迎撃できる技術は十分備えられますから。だから、日本が核武装する必要はないいと思っています。

全文は『ホンマでっか!?TV』の武田邦彦、濃縮ウランの研究者から"反原発"になった理由

This entry was posted in *日本語 and tagged , , , , . Bookmark the permalink.

Leave a Reply