廃炉のタブーが現実味 福島第一原発事故から6年、原発ルポ via dot.

(抜粋)

晴れ間が広がった2月上旬の月曜日。日本記者クラブの取材団に参加し、東電福島第一原発の構内に入った。いくつものチェックゲートを通過すると、1~4号機の原子炉建屋を一望できる高台にバスで案内された。

「建物の中には放射性物質が充満しています」

東電担当者が指さした先には、水素爆発で原子炉建屋上部が吹き飛んだ1号機が間近に見えた。1号機の原子炉建屋の最上階では鉄骨があめ細工のように折れ曲がり、事故当時の無残な姿をさらしていた。目線を南側にある3号機に移すと、分厚いコンクリートの壁がぼろぼろに崩れ、鉄筋がむき出しになった原子炉建屋が見えた。

その間にある2号機の原子炉建屋。炉心溶融は起こしたが、爆発をまぬがれ、事故前の姿をかろうじてとどめていた。

この2号機での廃炉に向けた作業が最近注目を浴びた。1月末、遠隔操作によるカメラで調査したところ、2号機の原子炉圧力容器の下にある足場で、溶けた核燃料(デブリ)のような黒い塊が確認されたからだ。

溶けた燃料は、周辺機器のさまざまな金属などと混じりながら、圧力容器の下に流れ落ち、格納容器の底に落ちていると見られる。専門家によっては、飛び散って周辺にこびりついているのかもしれないという見方もある。

(略)

●100年単位の核管理

福島第一原発でチェルノブイリのような石棺は考えられていない。ただ、専門家の間には「選択肢としてあり得る」といった見方は少なくない。吉岡斉・九州大学教授(科学技術史)は「福島第一原発も当面石棺化するしかない。発熱量がわずかなので、何らかの事故があっても核物質の再燃はまず起こらない。100~200年経過すれば、放射線量は相当減るので、その時点で高濃度の物質の取り出しを考えればいい」と指摘する。

原発の推進、反対の立場を問わず聞こえてくるのは、「デブリは確認できても取り出すのは難しいのではないか」との見方だ。東電は廃炉期間を30~40年とするスケジュールを掲げるが、さらに長期化する恐れは十分ある。長期管理も含めた石棺の可能性を否定するだけでは、ふたたび疑念が生じる。正面からとらえて、議論をすべき時期を迎えている。

福島第一原発の敷地内はもはやタンクだらけで、何か別の化学工場の中にいるような気分になる。それというのも、日々、タンクに入れる汚染水の発生が絶えないためだ。

第一原発では、事故直後から、溶けた燃料を冷やすため、1~3号機の建屋に水を注入し続けている。注入された水は溶けた燃料にふれて汚染されるが、地下水なども流入してくるので、入れた量よりも多くの汚染水が出てくる。

海洋放出の現実味

流入する地下水を抑制するために、1~4号機の建屋を氷の壁で覆う凍土壁の設置、建屋地下から水をくみ上げるなどの対策を進めているが、いまだに汚染水が増え続ける。すでに約96万トンの汚染水タンクが敷地内にたまり、その数は1千基に。3階建て相当のタンクが数日でいっぱいになる勢いだ。

(略)

今後の方針を決める別の部会のメンバーでもある東京大学の関谷直也特任准教授(災害社会学)は、「経産省の報告では、漁業が受ける経済被害をコストに含めていない。地元の漁業が再生の途上にあり、放射性物質の国民の理解が十分に進んでいないなかでの放出は時期尚早だ」と国の姿勢の不足を指摘する。

原子力規制委員会も、海洋放出が現実的な対応だとしているが、強く主導するわけでもない。

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