高浜原発のトラブル対策に380億円、それでも避難パニックが via 女性自身

再稼働にむけた原発のトラブルが相次いでいる。7月末に再稼働が予定されていた伊方原発3号機で17日、原子炉の冷却水を循環させるポンプから水が漏れ出るトラブルがあり、再稼働が8月以降に延期。高浜原発4号機でも、今年2月に再稼働した直後、変圧器周辺でトラブルが起き、原子炉が自動停止。

 

「そもそも、5年以上停止させている原発を動かすこと自体が大きなリスク。どんな機械でも、しばらく使っていないものを動かせば不具合が生じる。原発みたいに複雑なシステムなら、なおさらです」

 

と話すのは、東芝で原子力プラントの設計をしていた後藤政志さん。リスクのある原発の安全対策はどうなっているのか――。現場を取材した。

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「40年の寿命を越えてなお、再稼働させようとしている老朽原発の1~2号機です」

 

と話すのは、記者を高浜原発に案内してくれた敦賀市在住の山本雅彦さん。原発の設計にも携わっていた技術者だ。

 

「格納容器に中性子線が当たり続けると、金属がもろくなって低い温度への耐久性が弱くなります。高浜原発1、2号機の場合、注水して原子炉を冷やさなければならないような過酷事故が起きても水を入れられない。格納容器が冷却水の温度に耐えられず割れる可能性があるんです」

 

こうした危険な状況で老朽原発が再稼働されることを、立地自治体の住民はどう思っているのだろうか。

 

「お父さんは原発で働いているから、仕事がなくなったら困る。でも自信満々に“安全です”と言えるようになるまで動かさないでほしい!」

 

と正直に思いを語ってくれたくれたのは、高浜中学の男子生徒たち。これに対し、地元のオトナたちは口が重く、「そういう質問には答えられません」と足早に立ち去る人がほとんどだった。
しかし原発事故が起きて被害をこうむるのは、立地自治体だけではない。高浜原発の場合、避難計画の作成が義務づけられている原発から30km圏内の人口は、約18万人。うち福井県が約5万4千人なのに対し、京都府はなんと約12万5千人と、圧倒的に多いのだ。肝心の避難計画の中身はどうなのか。

 

「原発から5km圏内の住民は、原発で事故が起きたらただちに避難できることになっています。でも10km~30km圏内の住民は、空間線量が毎時500マイクロシーベルトにならないと、ただちに避難できない。甲状腺を被ばくさせないためのヨウ素剤も、事前に配布されていません」

 

そう訴えるのは、市の一部が30km圏内に含まれる京都府南丹市の児玉正人さん。彼の言う「毎時500マイクロシーベルト」とは、ICRP(国際放射線防護委員会)が定めた一般公衆の被ばく限度量である「年間1ミリシーベルト」にたった2時間で達するほど高い値だ。

 

「つまり、被ばくすることが前提に作られた避難計画なんです! 福島原発事故のときも、第一原発から約40km離れた飯館村に高濃度の放射性物質が飛んできて全村避難になりましたよね。高浜原発で事故が起きたら、京都の歴史的建造物も琵琶湖の水源も汚染されてしまいます。なのに再稼働に際して、近隣自治体には何も説明がないんです」

 

さらに児玉さんは、内閣府や自治体が定めた避難計画の無謀さを、こう指摘する。

 

「南丹市の避難計画では、30km圏内の住民は大型バスで避難することになってます。でも福井からの避難者約3万6千人(内閣府試算)も南丹市の避難者と同じルートを通って自家用車で避難するので、道は大渋滞になるはず」

[…]
「内閣府の官僚は、『大型バスが来たら、9トン橋は通れないので引き返してもらう』って言うんですが、一車線しかない道で避難する乗用車がどんどんやってくるのに、引き返せるのか!」

 

国の無責任ぶりに、児玉さんは怒りを露わにしていた。

 

取材・文/和田秀子

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