東京電力福島第1原発事故で、核燃料が溶け落ちる「炉心溶融(メルトダウン)」の公表が遅れた問題で、東電の第三者検証委員会(委員長・田中康久弁護士)は16日、清水正孝社長(当時)が「炉心溶融」の言葉を使わないよう指示したとする報告書をまとめ、東電に提出した。指示は電話などで広く社内で共有していたと認定。首相官邸の関与については「炉心溶融に慎重な対応をするように要請を受けたと(清水氏が)理解していたと推定される」と指摘した。
報告書によると、清水氏は事故発生から3日後の2011年3月14日午後8時40分ごろ、記者会見していた武藤栄副社長(当時)に対し、社員を経由して「炉心溶融」などと記載された手書きのメモを渡し、「官邸からの指示により、これとこの言葉は使わないように」と耳打ちした。当時、炉心溶融したかが焦点となっており、会見でも繰り返し質問が出ていた。
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しかし、清水氏の記憶はあいまいで、第三者委は当時の官邸にいた政治家には聞き取りを実施しておらず、「官邸の誰から具体的にどんな指示、要請を受けたかを解明するに至らなかった」としている。
東電は事故発生後、「炉心溶融」を判定する基準がないとして、原子炉の状態を「炉心損傷」などと言い換えていた。しかし今年2月、炉心溶融について「損傷割合が5%超」と定義する社内マニュアルがあったと発表。これに従えば事故3日後には炉心溶融と判定ができたが、認めたのは2カ月以上後だった。
マニュアルの存在を5年間、見逃していたことについて、報告書は「秘匿する理由はない」とし、意図的な隠蔽(いんぺい)はないと結論付けた。[…]
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