米国の元原子力規制委員会委員長:米国の原発「40年」ルールに科学的根拠はない 〜 “It was a guess.” via The Huffington Post

米国の原子力規制委員会(NRC)で2006〜09年に委員長を務めたデール・クライン氏Dr. Dale E. Klein)は現在、東京電力が福島第一原子力発電所事故を受けて発足した、国内外の専門家で構成する第三者委員会「原子力改革監視委員会」の委員長。今月25日、私はクライン氏と懇談させていただき、①福島第一原発・汚染水問題、②原発「40年」ルール問題、③原発ゴミ処分問題、④今後の原発再稼働の見通しなどに関して御意見を伺った。

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石川)「40年」の根拠は、どのようなものか?

クライン)当てずっぽうだ(”It was a guess.”)。米国で原子力発電が始まったのは1950年代だが、当時まだ新しい技術でよくわからなかったので、他の産業分野を参考にしながら原発プラントに対して「40年分の許可」とした。この「40年」には科学的根拠はない。どんな年数でも構わなかったのだが、保守的な数字として選ばれたのが「40年」だった。投資回収期間を考えた場合、1950年代の頃の感覚としては、「40年」程度であれば納得感があったということ。

石川)延長期間として認める『20年』というのにも、科学的根拠はないのか?

クライン)ない。これも保守的な数字。NRCは、「40年」以降継続的に稼働させていくに当たっての安全上のポイントを診る。「60年」くらいまでは安全に運転できるだろうと、「59年目」で急に壊れることはないだろうと、判断する。NRCは、個々の機器や設備の状態がどうなっているか、この先も安全に稼働させることができるのかといったことを診ており、これは科学的な見地からの審査。

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石川)日本では、使用済燃料の再処理によるリサイクル(核燃料サイクル)を進めようとしているが、これについてはどうお考えか?

クレイン)昨今ではウラン価格が安いので、核燃料リサイクルを行っても、経済的には合わない。しかし、政策的に必要ならば経済的に合わずとも行われる。それはそれで良い。フランスは現に行っている。ロシアや中国は今後行うだろうし、日本も今後行うようになるだろう。核燃料サイクルは、経済的な視点だけではなく、包括的な視点で行われるもの。ただやはり、ウラン価格が低迷しているうちは、核燃料サイクルは進みにくいと思う。

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石川)NRAによる今の規制運用は、新基準の全てを満たさないと合格を出さず、そして現政権は、NRAが合格を出した原発でなければ再稼働させない方針。これについてどう思われるか?

クライン)米国の場合、NRCは、全ての基準を今すぐ満たさなければ稼働を認めないというのではなく、基準に代替する措置を採ることを認めており、その代替措置でOKとなれば稼働を認めている。米国では経験や蓄積があるので、安全とリスクをいかにして折り合いをつけるかが上手に行われている。例えば、確率論的なリスク評価を行い、最もリスク要素の多い所にはより注力をし、そうでない小さな所にはそれほど注力せずとも大丈夫だろう、といったようなさじ加減がうまくできている。

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