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井口教授はもともと今年5月に「桜島の北側の海底、地下深くにマグマ溜りがあり、このマグマが桜島の直下に流れ込み、山体が膨脹し続けている。さま ざまな兆候から2020年頃には大噴火が発生する可能性が高い」と警告していたが、まさに指摘通りの状況が起きつつあるということだ。
だとすると、気になるのが、2週間前に再稼働になった川内原発への影響だ。川内原発は桜島から50キロの場所にあるが、その桜島は「姶良(あいら)カルデラ」という巨大火山の一部で、この巨大火山が噴火した場合、川内原発も壊滅的な被害にあうことが予想されている。
実際、川内原発を再稼働させた九州電力も3万年前に起きた姶良カルデラの破局的噴火の際、火砕流が川内原発のある地点まで到達したことを認めている。
だが、再稼働当日の記事でも指摘したように、原子力規制委 員会は、川内原発が稼動している数十年の間に噴火は来ないとして立地不適にしなかった。九州電力が火山活動のモニタリングを行い、火山噴火の兆候把握時に 適切な対処をするとして、再稼働にGOサインを出した。規制委は「再稼働ありき」で、数万年に一度の噴火など考慮するに値しないとその危険性を排除してし まったのだ。
しかし、この桜島の噴火が姶良カルデラの破局的噴火につながる可能性はけっしてゼロではない。01年に長崎大学の長岡信治氏らが発表した研究論文 「10万~3万年前の姶良カルデラ火山のテフラ層序と噴火史」によると、2万9000年前の姶良カルデラの破局的噴火の際、最初に現在の桜島付近で大噴火 が発生しているという。その後、数カ月程度活動が中断した後、破局的な巨大噴火が発生したと推定している。
(略)
繰り返すが、火山学者の多くは、数十年の間に噴火しないとは科学的に言えない、と疑義を呈している。しかも、再稼働については火山噴火の兆候のモニ タリングが前提になっており、本来なら、桜島の異変が起きている今こそ、姶良カルデラの噴火の可能性を、数年、数十年などでパターン分けをして調査、解析 して、科学的に姶良カルデラの噴火ははないと現時点で報告する必要がある。それができないのなら一旦川内原発の稼動を停止し、ガイドラインを修正した上で再審査せねばならない。
ところが、九州電力はそんなモニタリングも分析もしていない。当然だろう。実際は、火山予知連絡会の藤井敏嗣会長はじめ、ほとんどの火山学者が認めているように、火山活動のモニタリング、兆候把握は不可能なのだ。
にもかかわらず、田中委員長は「3kmとか4km以内の立入禁止でしょう」と現在の桜島の噴火警戒レベルの話と意図的に混同させ、「ばたばたする ような状況じゃない」と根拠なく断定。モニタリングについても現実にできるはずがないのに「予兆をできるだけ確実につかめるような方法を考える」などとご まかしているのだ。
しかも、記者がそういった矛盾を追及しようとすると「もう答えてもしようがないから、やめましょう」などと遮ってしまった。これが、原発の安全性を判定する国家機関の責任者の態度なのか。
実は、田中委員長は以前にも同様の態度を見せている。昨年9月、原子力規制委が川内原発再稼働にGOを出す判断をした当日、会見で、記者が「専門家が『わからない』といっている火山リスクを規制委が『ない』とするのはおかしい」と質問しているのに、田中委員長は今回と同様の官僚的答弁に終始。業を煮やした記者が角度を変えて質問を繰り返したところ、田中委員長が「答える必要ありますか」と打ち切ってしまったのだ。
しかも、『報道ステーション』(テレビ朝日系)がこの田中委員長の無責任なセリフを報道すると、原子力規制委が「恣意的に発言を切り取り編集した」と抗議。テレビ朝日の吉田慎一社長が謝罪し、『報ステ』はBPO審議にかけられる事態となった。
ようするに、原発再稼働のために火山リスクを無視し、非合法な判定をやっていることは田中委員長自身がわかっているのだ。だから、それを追及されるとすぐに逆ギレし、力で報道をつぶそうとする。
これは原発の是非以前の問題だ。こんな無責任で横暴な「原子力ムラの代弁者」が原発の安全性を判定する立場に居座ったままでは、“フクシマの悲劇”が再び繰り返されることになりかねない。国民は一刻も早い罷免を政府に求めるべきだろう。
全文は桜島噴火で川内原発と規制委は? 桜島大規模噴火の予兆で川内原発は大丈夫か? 規制委・田中委員長の信じがたい無責任な対応