沈黙のフクシマ撮る 原発事故後潜む恐怖…写真展 via 東京新聞

 雑草の海と化した校庭、つる草に覆われた駅、人の姿がない商店街-東京電力福島第一原発事故で、住民が避難した街を撮影している東京都八王子市の写真家中筋純さん(48)が、市内で写真展を開いている。

(略)

中筋さんは二〇一二年五月から、自治体の許可を受けて大熊町や双葉町、南相馬市などに入り、一~二カ月ごとに撮影している。撮影場所には商店や自動販売機がないため、一日分の食料と水を携えて行く。

 初めてとなる福島の写真展は、三十三点を選んだ。「夏はつる科の植物、秋はセイタカアワダチソウがばっこしている」。つる草に覆われた寺院(富岡町)や駅(南相馬市)、アワダチソウが黄色い花を咲かせる校庭(双葉町)の写真が、目に飛び込んでくる。

 食料品店の棚で干からびた大根(浪江町)。机に、かばんと水筒が置かれたままの教室(富岡町)。「原発被災地では『時間が止まっている』という言葉がよく使われるが、自然や空気は脈々と動き、着実に時間は刻まれている。取り残されたのは人間だ」

 長さ四・六メートルの大きなパノラマ写真は浪江町の商店街。どの店もシャッターが下り、建物が並ぶだけ。

 「住み慣れた街やにぎやかな場所が、原発事故でどうなるか、自分自身に置き換えて考えてほしい」と中筋さん。「つまり『原発はいらない』ということだ。原発に反対でも賛成でもない人に見てほしい」

 雨に流された土がたまる場所で二六二・八マイクロシーベルトを示す線量計や、夕闇にそびえる原発の写真には「すべてここから始まっているんだ」と いうメッセージを込めた。十カ所ほどで定点観測もしており、今後も時間の経過による変化を撮り続ける考え。「チェルノブイリのように廃虚となるのか、違う 未来があるのか、この目で見たい」と語る。

 フランスで福島の子どもたちの支援活動をしているNPO法人の会長で、中筋さんと交流のある日本人男性から「福島の現状を知らせたい」と呼び掛けがあり、写真展はパリやポルトガル・リスボンなどでも今月半ば以降に開かれる。

 八王子の会場は二十日まで。日、月曜休み。問い合わせは、同市南新町のカフェ「ゆいまーる生活館」=電042(626)2296=へ。

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