「悲惨な状況をはね返そうとする人間の美しさを表現したかった」。脚本家の倉本聰さんが、福島をテーマにした舞台『ノクターン-夜想曲』に寄せた思いを本紙で語っていた。「今、現に古里を追われている人々を傷付けないか」。細部に目を凝らし、改稿を重ねた
▼現場から逃げだした原発労働者、患者を残して避難するかどうか判断を迫られた看護師…。登場人物に投影されて「理不尽」が浮かび上がる。声高に原発を批 判することもなく、物語は静かに1億年後の海底で終わる。原発が生む放射性物質が遠い未来まで残ることを暗示する▼無害化されるまで数万年を要する「核の ごみ」。原発再稼働の条件として、その処理対策を明確にせよ、と日本学術会議が提言するという。政府と電力会社、科学者による「原子力ムラ」の病弊を白日 の下にさらしたのも原発事故だった
(略)
▼政府と企業が最大スポンサーである状況は変え難いにして も、科学者には社会に寄り添い、議論を喚起し続ける責任がある。「安全」にも利害関係があってはならない。
全文は河北春秋