登米市南方町の佐々木徳久(のりひさ)さん(52)は、25ヘクタールの水田と110頭の和牛肥育を手がける耕畜連結の有機循環農業者。東京電力福島第1原発事故による放射性セシウムに汚染された稲わらと牛ふん堆肥(たいひ)を抱え、指定廃棄物最終処分場問題の行方を注視しながら営農に励む。
佐々木さんは原発事故後の2011年3〜4月、汚染を知らずに田んぼから回収した稲わらを飼料として牛に与えた。その後の測定で稲わらは1キロ当たり8000ベクレル超、堆肥は暫定許容値の同400ベクレル超の汚染と判明した。
堆肥は農水省の通知で「使用可能レベル」とされたが、佐々木さんは「自分の手で汚染を耕作地に広げるわけにはいかない」と、まかずに牛舎裏手にある堆肥舎で保管を続ける。その量は約500立方メートルで、堆肥舎の大半を占有。さらに、適当な牧草地の一角に別に臨時堆肥場を設けた。時間と手間が余計にかかるが、年間で300トン必要な堆肥づくりを欠かすわけにはいかない。
汚染稲わらは指定廃棄物に認定され、近隣農家分と合わせ計180トンを、県と市で設置した一時保管庫に収めた。これも牛舎から遠くない。
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佐々木さんが有機農業に取り組んだのは1996年。知人農家の子どもがアトピーやぜんそくに苦しむ姿に農薬の影響があるとみて、有機に転換した。まもなく開始される見込みの栗原、加美、大和3市町の最終処分場候補地に対する現地詳細調査について、佐々木さんは「汚染度の薄い地域同士が、処分場の一番の適地はどこかという選別にさらされている」と感じ、こう訴える。
「住民の帰還が不可能と明らかになってきた福島第1原発の敷地で集中保管を、と言ってはいけないのだろうか」【小原博人】
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