朝日の「原発事故・吉田調書」誤報を追及する読売、産経の裏に官邸!? via Litera

「福島第一事故『吉田調書』、『全面撤退』明確に否定」(産経新聞2014年8月18日)「福島第一事故吉田調書 『全面撤退』強く否定」「朝日報道 吉田調書と食い違い」(読売新聞2014年8月30日)

福島第一原発事故で陣頭指揮をとった故・吉田昌郎所長の聴取結果書、通称「吉田調書」に再び焦点が当たっている。吉田調書は9月中旬に政府の手で公開されることが決まっていたのだが、それに先がけてこの8月、産経、読売が立て続けに全容をスクープしたのだ。

ただし、どちらの記事もメインにしているのは事故の深刻さや東京電力本社の対応の問題点ではなく、朝日報道への批判だった。今年5月20日、朝日 新聞は吉田調書をもとに、「所長命令に違反 原発撤退」という見出しを掲げ、当時、待機命令に反して9割の作業員が第二原発に逃げたと報道していた。

ところが今回、産経、読売が吉田調書の正確な中身を紹介。実際には吉田所長は「線量が低いようなところに一回退避して次の指示を待てと言った」 が、その指示がうまく伝わらなかったため9割の所員が第二原発に退避した、「よく考えれば、2F(第二原発)に行った方がはるかに正しいと思った」と語っ ていたとして、朝日新聞の報道は事実を歪めていると指摘したのだ。

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「産経、読売に吉田調書を流したのは官邸です。内閣の事故調の聴取結果は内閣官房、官邸が握っていて、あそこまで正確な内容は官邸からしか出ない。官邸は 今、本気で朝日を潰しにかかっている。官邸がこの吉田調書を本人の非公開の意志があったにもかかわらず公開にしたのは、5月に朝日の例の誤報があって、本 物を出せば、民主党と朝日潰しの材料にできると考えたからです。そして、自分たちに近い産経と読売に前打ちさせた。産経のネタ元は菅義官房長官、読売のネ タ元は今井尚哉首相秘書官だといわれています。とくに今井秘書官と読売の関係は有名で、TPP交渉はじめこのところの官邸がらみの重要なニュースは今井秘 書官のリークでことごとく読売がスクープしている」

実は今回の吉田調書で誤報が発覚したのは朝日だけではない。読売新聞は事故後しばらくたった2011年5月、一面トップで当時の菅首相が「海水注入中断」 を命じ、「震災翌日、55分間」に中断があったと報道しているが、吉田調書では海水注入を止めてきたのは「(東電の)武黒フェロー」であり、しかも、吉田 所長は中断をせずに海水注入を続けたと証言していた。読売も完全に誤報をおかしていたわけだが、こちらの方は菅元首相がブログでひとり騒いでいるだけで まったく問題になっていない。読売、産経、官邸連合軍によって、明らかに朝日だけが狙い撃ちされているのだ。

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「われわれのイメージは東日本壊滅ですよ。完全に燃料露出しているにもかかわらず、減圧もできない、水も入らないという状態で、本当にここだけは一番思い 出したくないところです。ここで本当に死んだと思ったんです。2号機はメルト(ダウン)して、完全に格納容器の圧力をぶち破って燃料が全部出ていってしま う。最悪の事故ですから。チェルノブイリ級ではなくてチャイナシンドロームではないですけれども、ああいう状況になってしまう」

東日本壊滅、そしてチャイナシンドロームが目前に迫っていたのだ。すんでのところで、踏みとどまることができたが、もしもう一歩、ほんの一歩間違 えれば、東日本一帯が壊滅し、首都圏を含む広大な地域とそこに生活する人間が被爆するところだった。多くの人間が逃げ惑い、人口の密集する東京は大パニッ ク、人々は西へ西へと向かう。もちろん交通機関もマヒし、物資は滞り、そのために略奪や殺人さえ起きていても不思議はなかった。直接的原発事故の被害だけ でなく、そうなれば多くの人々が命を落としていただろう。本当にもう一歩──。この証言は、原発事故がいかに恐ろしい事態を生み出すかをリアルに伝えるも のだった。

ところが、読売や産経は朝日新聞誤報と菅首相の対応のまずさだけを書きたてるばかりで、このもっとも重要な部分をほとんど報じなかったのである。読売は吉田所長が「東日本壊滅」を覚悟した部分の記述は一切なし、産経も第一報の9日後に、連載の最終回で触れただけだった。

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周知のように、産経、読売は何十年も前からから自民党政権とともに原発導入の旗ふり役をつとめ、福島原発の事故後も原発再稼働を叫んできた。まさに原発シ ンジケートの一角をなしている2 つのメディアが、同じく原発再稼働をもくろむ安倍政権とともに仕掛けた情報誘導―—それが今、起きている吉田調書騒動の本質なのだ。

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