(抜粋)
「日本社会の一番の問題は『お任せ体質』。電力は電力会社に、ゴミ処理は自治体にお任せで、自分たちは消費するだけ。問題が生じれば文句を言うだけ。それでは何も変えられません」
別に、メガソーラー(大規模太陽光発電)でいいじゃないか、という声が聞こえてきそうだ。しかし池内さ んは「大規模な施設を造れば、また何か別の問題が生じます。『お任せ体質』も結局変わらない」。高層建築、高速道路、そして原子力発電所……大型化、集中 化、一様化した社会は、ひとたび天災が起きれば被害が拡大しやすい。だから「小型化、分散化、多様化」へ。文明のあり方を変えよう、と提唱しているのだ。
「原発の分、すなわち日本の電力使用量の30%分をカバーするには、太陽光発電を導入する世帯を今の約 100万から約1500万に増やさねばならない。しかし、半分の15%分をみんなで節電すれば、約800万でいい。これを10年で実現していく。脱原発化 にかかる金と時間を我々皆で支えていく。決して『お任せ』ではなく」
(中略)
放射能に過度に反応して、恐怖ばかりをあおる手法には反対だ。「大切なのは、原発は反倫理的であるということを意識して生きること。原発は第一に 空間的に反倫理的です。過疎地に押しつけ、都会の人間はのうのうと暮らしている。植民地主義的発想によって成り立っている。沖縄の基地問題と同じです。第 二に、時間的にも反倫理的です。我々が電気を使って優雅な生活を送り、子孫に核廃棄物などのツケを押しつける」
ここで一瞬、ふふっと苦笑し、そっと言葉をつないだ。
「経済界のえらい人は、学者が何を青臭い議論をしてんだ、って言うかもしれません。でも、明日のことばかり考え、青臭いことを誰も言わなくなったら、国の将来を見通せないですからねえ」