論説・あぶくま抄 via 福島民報

「いいかげんにしろ」。怒りの声が聞こえてきそうだ。文部科学省は県内の放射性物質の年間積算線量予測値と測定地点の住所に誤りがあった、と発表した。原発事故の訂正は何度目だろう。神経を逆なでする。
 重要な情報をなぜ誤って公表するのか。同省は、実際と異なる数値をコンピューターに入力し、点検で見逃した。衛星を利用して場所を特定するGPSに示された地名を地図で確認しなかった-と弁明する。数字や固有名詞の読み合わせに念には念を入れるのは仕事のイロハのはずだが。
 人間は間違える生き物だ。疲れた時のうっかりミスは誰でも経験があろう。積極的に行動しようとして誤る場合もある。大目に見てよい。原因を分析すれば、同じ過ちを二度と犯さないはずだ。だが、社会システムを破壊して大混乱に陥れたり、人命を奪ったりする誤りは論外だ(海保博之著「『誤り』の心理を読む」)。
 県民は放射線量の推移に敏感だ。子どもを外で遊ばせられるか、プールで泳がせても大丈夫か…。政府の発表は命と暮らしに直結する。「謝る」は「誤り」から生まれたという。原発事故への対応は、誤ったからといって謝って済む話ではない。

論説・あぶくま抄

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