筆洗 via 東京新聞

 露骨なメディア戦略がまったく功を奏しなかったのも痛快だった。全廃した原発を復活させるかどうかを問うイタリアの国民投票は、反対派が圧倒的な大差で勝利した▼“メディア王”と呼ばれるベルルスコーニ首相傘下の多くのテレビ局は、国民投票のニュースを黙殺。首相は棄権を呼び掛けたが反発を招いただけだった▼大差の結果は、福島第一原発の事故を自分のこととして受け止めたからだろう。危機感は、超党派の国会議員が「地下式原子力発電所政策推進議連」なる団体をこんな時期に発足させる日本の政界とは雲泥の差だ▼フクシマ・ショックの発信地となった日本でも、原発の存廃をテーマにした国民投票の実現を目指す市民の動きがある。政府や国会議員にすべてを委ねず、大事なことは国民が決めようと、独自の法案づくりを進めている▼国民投票は議会制民主主義の否定だという意見がある。自らの政策が否定される可能性のある国民投票を政権が認めるのか、という指摘もあるが、民意をくみ取らない政治が続けば、国民投票を求める声が高まるのは必然だ▼自民党の石原伸晃幹事長は反原発運動のうねりを「あれだけ大きな事故があったので、集団ヒステリー状態になるのは心情としては分かる」と語ったそうだ。いつ終わるか先が見えない不安を抱える国民の気持ちを想像できない人なのだろう。

筆洗

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