週刊金曜日 6月7日(火)19時58分配信
高木義明文部科学大臣はこのほど、文科省での会見で、同省と経済産業省資源エネルギー庁が制作した副読本の「原子炉は五重の壁で守られている」等の記述について、「今回(福島)の事実を受けとめ、見直すべきものは見直し、事実と反したことは、事実を表現できるようにしなければならない」と明言した。文科省は〇八年三月告示の新学習指導要領・中学理科の第一分野で、「人間は、水力、火力、原子力などからエネルギーを得ていることを知る」という指導内容に関し、「放射線の性質と利用にも触れること」との規定を新設。また、一〇年三月二日、資源エネ庁とともに、約一五〇〇万円で(財)日本生産性本部に委託し、「新指導要領に対応した原子力に関する副読本」を制作。「小・中学校段階から原子力やエネルギーについて学び、自ら考え、判断する力を育成することが大切である」と述べていた。
だが全国の小・中学校と区市町村教育委員会に各一部ずつ配布した、小学生対象の『わくわく原子力ランド』、中学生対象の『チャレンジ!原子力ワールド』は、「大きな津波にも耐えられる設計」「CO2を出さず、多くの電力を安定供給」など”長所”を強調している。
同年一〇月一〇日に大阪市で行なわれた文科省・資源エネ庁共催の「原子力・放射線に関する教員セミナー」では、資源エネ庁原子力発電立地対策・広報室の渡辺直行室長補佐が「原発一基の発電量を太陽光・風力発電で代替すると高額になる」などと講義。また、東大大学院医学系研究科の鈴木崇彦講師も、「放射性物質が出ないよう、原子炉圧力容器や格納容器、建屋など『五重の壁』でしっかり閉じ込めている。原発と原子爆弾は違う」などと、副読本に沿った講義を行なっていた。
学校現場には、こうした内容を授業に活用していた教員は少なくなく、今後、議論を呼びそうだ。
(永野厚男・教育ライター、4月22日号)