「危ないから止めるしかないじゃないか」「とんでもない、原発は必要だ。電力不足がひどくなってもいいのか」「それに、二酸化炭素を出さない原発は地球温暖化対策に欠かせない」…こんな論争が世界を舞台に続くことになるのではないでしょうか。
数学のように「正解はこれだ」というものがあるようでもなく、要はそれぞれの国民が、あるいは世界の人々が事実や経験をもとに政策論争を通じて選ぶべきものであると、私は思います。もちろん、北朝鮮などと違って曲がりなりにも民主主義の国であれば、の話ですが。(共産党独裁の中国ですら原発政策の見直しに動いていることを注視したいところです)
実際、私たちは自民党政権を通じて、これまでのところ「原発との共存」を多数決によって選んできたともいえます。むろんこの問題で国民投票をやったことはありませんが。
大いに議論を深めるうえで、過去の世論調査なども参考にしたいものです。
古い話ですが、チェルノブイリ原発事故の後の1986年8月の朝日新聞世論調査では、それまで「原発推進」について賛成が反対を上回っていたのが、初めて賛否が逆転しました。原発の推進に賛成する人が34%、反対が41%で、53年から同じ質問文で始まった朝日の調査で初めて、反対が賛成を上回ったのでした。
また、日本の原発でも大事故が起きる、との不安を7割近くの人が感じ、原発は安全なものにできるというより、人の手に負えない危険性があるという見方が強かった、と当時の記事は書いています。
これからのエネルギー源として、原発を推進することの賛否を聞く朝日調査の質問は、53年12月以来、86年が7回目。石油の代替エネルギー問題が緊急課題となったこともあってか、賛成が反対を上回っていました。米国スリーマイル島の原発事故の後で行った54年6月の調査でも、賛成が50%で、反対は29%でした。
ところがチェルノブイリ後では、女性の変化が目立ち、賛成23%に対し、反対はその倍の48%にのぼったのでした。原発事故について、原子力関係者の見方は「わが国では起こりえない事故だ」というのが一般的でしたが、国民の側からみると、日本の原発でも大事故が起きるという不安を感じている人は67%でかなり多いことが示されていました。
原発の安全性でも、国民の見方はチェルノブイリ後、厳しくなりました。「今後、技術と管理しだいで安全なものにできる」と思う人は、54年6月調査の52%から86年は37%に減り、逆に「人の手には負えない危険性がある」が33%から47%に増加しました。男女とも、安全性に疑問を持つ人が増えたのですが、男性の5割は86年ではまだ、「安全派」でした。
続きは『原発、どう考えますか』から。