福井県にある大飯原子力発電所の3号機と4号機について、大地震への耐震性が不十分だと原発に反対する市民グループが訴えていた裁判で、大阪地方裁判所は原発の設置を許可した国の決定を取り消す判決を言い渡しました。
福島第一原発事故を教訓にした新たな規制基準が設けられてから、原発の設置許可を取り消す司法判断は初めてです。
関西電力・大飯原子力発電所の3号機と4号機について、関西や福井県などに住むおよそ130人は「大地震への耐震性が不十分だ」と主張して訴えを起こし、設置を許可した原子力規制委員会の決定を取り消すよう求めていました。
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3号機と4号機は現在、定期検査のため稼働を停止していて、判決の効力は国側が控訴すれば生じません。
しかし、福島第一原発事故のあと裁判所が原子力規制委員会の設置許可を否定したのは初めてで、事故を教訓に規制のあり方を大きく見直してきた国は司法から厳しい判断を突きつけられた形になりました。
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【判決言い渡し廷内では】。
判決の言い渡しは、4日午後3時から始まり、森鍵一裁判長が、冒頭に「3号機と4号機の設置許可を取り消す」と主文を述べると、法廷に詰めかけた原告や支援者から「おぉっー」というどよめきが起こりました。
そして、5分ほどの判決要旨の読み上げが終わると、大きな拍手がわき起こりました。
【原子力規制委コメント】。
大阪地方裁判所が福井県にある大飯原子力発電所の設置を許可した国の決定を取り消す判決を言い渡したことについて、原子力規制委員会は「国の主張について裁判所の十分な理解が得られなかったものと考えている。今後については関係省庁と協議のうえ、適切に対応してまいりたい」とするコメントを出しました。
【関西電力“極めて遺憾”】。
福井県にある大飯原発の設置を許可した国の決定を取り消す判決が出たことについて、関西電力は、「裁判所に対し大飯原発の安全性について丁寧に説明を行い、理解してもらえるよう真摯(しんし)に対応してきた。今回の判決については国や当社の主張を裁判所に理解してもらえず極めて遺憾で、到底承服できるものではない。今後、判決内容の詳細を確認し、速やかに国と協議のうえ、適切に対応していく」とするコメントを出しました。
(略)【原発訴訟の司法判断】。
原子力発電所をめぐる裁判で住民側の訴えが認められたケースは、これで9件目となり、設置許可を無効とする判決は平成15年の高速増殖炉「もんじゅ」をめぐる判決以来、2件目です。
原子力発電所の運転停止や設置許可の取り消しを求める訴えは昭和40年代後半から各地の裁判所に起こされましたが、「具体的な危険があるとはいえない」などとして退けられてきました。
平成15年に福井県の高速増殖炉「もんじゅ」をめぐる裁判で、名古屋高裁金沢支部が国の設置許可を無効とする判決を言い渡し、これが住民側の訴えを認めた初めての判決でしたが、最高裁で取り消されました。
平成18年には、金沢地裁が石川県の志賀原発2号機の運転停止を命じる判決を言い渡しましたが、高裁で取り消されました。
こうした中、平成23年に福島第一原発の事故が起き、改めて安全性を問う動きが広がり、住民側の訴えを認める司法判断が増えました。
平成26年に福井地裁が福井県の大飯原発3号機と4号機の運転停止を命じる判決を言い渡しましたが、2審で取り消されました。
また、運転停止を命じる仮処分の決定も相次ぎ、福井県の高浜原発3号機と4号機では、平成27年に福井地裁、平成28年に大津地裁が2度、運転停止を命じました。
関西電力は平成28年3月、大津地裁の1回目の決定が出た際に運転中だった3号機の原子炉を停止させ、司法の判断で運転中の原発が停止した初めてのケースとなりました。
運転停止の決定は高裁で取り消され、高浜原発3・4号機は再び運転を始めました。
また、愛媛県の伊方原発3号機では平成29年とことし1月に広島高裁が2度、運転停止を命じる決定を出しました。
平成29年の決定はその後、取り消されましたが、ことし1月の決定については広島高裁の別の部で審理され、伊方原発3号機は運転できない状態が続いています。
原子力発電所をめぐる裁判で住民側の訴えが認められたケースは、これで9件目となり、設置許可を無効とする判決は平成15年の高速増殖炉「もんじゅ」をめぐる判決以来で、2件目です。