【報告集会】南相馬20ミリ基準撤回訴訟 判決の内容は? via FoE Japan

満田夏花

南相馬避難20ミリシーベルト撤回訴訟支援の会の事務局/FoE Japanの満田です。
この国の司法のあり方に打ちのめされる判決となりました。憤りを禁じえません。
わずか12秒。主文を読み上げるだけで逃げるように退室した鎌野真敬裁判長は、
6年間も闘い続け、5時間もの道のりを18回も通った原告の顔を直視した上で、
判決理由を述べることができなかったのでしょう。

司法は、20ミリシーベルトの不当性についても、解除の違法性についても判断を
逃げたといえるでしょう。腐りきっています。

東京地裁の鎌野真敬裁判長は、特定避難勧奨地点の指定解除について「年間の被
ばく線量が20ミリシーベルトの基準を下回ることが確実だという情報を提供する
もので、帰還を強制したとはいえない」として、取り消す対象にはならないと判
断し、住民側の訴えを退けました。

特定避難勧奨地点の指定にも解除にも処分性(行政庁の処分その他公権力の行使
に当たる行為)はないとし、「単なる情報提供」としたのです。また、解除にあ
たって、原告たちが被った不利益もないとしました。許しがたい判決です。

被告である国がこの主張をしたときも驚きましたが、まさかそんなわけのわから
ない主張は通らないと思っていました。司法はそれをそのままなぞった判決を出
したました。以下のような主要論点はすべてスルーしたといえます。

・解除に伴い、一定期間後ではあったが、避難勧奨に伴う公的な支援がすべて打
ち切られたこと。とりわけ、住宅提供が打ち切られ、住民は帰還を余儀なくされ
たこと。
・ICRPが勧告している公衆の被ばく限度としての年1ミリシーベルトを反映して
現在の国の被ばく防護の規制は構築されていること(例:原発の敷地境界線上の
ti年1ミリシーベルトを守る義務を事業者にかしていることなど)
・ICRP勧告では、事故後の現存時被ばく状況を1~20ミリシーベルトとして、そ
の下方から参考レベルを選び、それを1ミリシーベルトに向けて下げるべきとし
ている。実際は、避難指示の指定も解除も20ミリシーベルトであり、ICRP勧告で
すら守られなかったこと
・ICRP勧告や原子力安全委員会の文書、原子力災害対策本部の避難指示解除の用
件で求められていた「住民との協議」がまったく行われず、住民の反対を無視し
て解除されたこと
・解除の空間線量率(3.8マイクロシーベルト/時)の計算式は、屋内を屋外の
0.4であるとして計算されているが、実際には屋内屋外の差は平均0.7くらいで、
実際は屋内の方が屋外よりも高い例もあったこと

こちら判決および判決要旨です。
http://minamisouma.blogspot.com/p/blog-page_89.html

本当に何のために司法が存在するのか絶望的な気持になります。
しかし、国のあまりといえばあまりな20ミリシーベルト基準に、真っ向から立ち
向かった原告のみなさんの勇気は決して無駄になったわけではありません。
この裁判で多くのことが明らかになりました。心から感謝したいと思います。

※南相馬避難20ミリシーベルト基準撤回訴訟とは
2014年12月、政府は、南相馬市の特定避難勧奨地点について、年間積算被ばく線
量が20ミリシーベルトを下回ることが確実になったとしてすべて解除し、その後
順次支援策や賠償を打ち切りました。

これに対して、地点に指定されていた世帯や近隣の世帯合計808名が、解除の取
消しなどを求めて、2015年4月および6月に、国(原子力災害対策現地本部長)を
相手取って提訴しました。
裁判では、年間20ミリシーベルトという基準による特定避難勧奨地点の解除の是
非が争われました。
原告は、年間20ミリシーベルト基準での特定避難勧奨地点の解除は、次の3点か
ら違法であると主張し、その取消し等を求めています。

1)公衆の被ばく限度が年間1ミリシーベルトを超えないことを確保するべき国
の義務に反する。

2)政府が放射線防護の基準として採用している国際放射線防護委員会(ICRP)
の勧告に反する。

3)政府が事前に定めた解除の手続(新たな防護措置の実施計画の策定、住民等
の意思決定への関与体制の確保)を経ることがないまま解除を強行した。

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