東京電力福島第1原発事故の帰還困難区域のアカマツに放射線の影響とみられる形態異常が確認されていることについて、福島大は2日、放射線の影響でアカマツの植物ホルモンの濃度が低下したことが原因と考えられるとの研究成果を発表した。
福島大環境放射能研究所のヴァシル・ヨシェンコ教授(56)と難波謙二所長(55)、ロシア農業放射線生態学研究所の研究者らでつくる日ロの研究チームが、環境科学の学術誌「サイエンス・オブ・ザ・トータル・エンバイロメント」に発表した。研究チームは今後、放射線が植物ホルモン濃度に影響するメカニズムの解明を目指す。
ヨシェンコ教授らは、大熊、浪江両町の帰還困難区域内の4地点に福島市を加えた5地点で、放射線影響を受けやすいとされる針葉樹であるアカマツの形態異常の発生率を調べてきた。
今回の研究では、5地点のマツを正常な形態のグループや、垂直に伸びる幹がない形態異常のグループなどに分けた上で、それぞれの植物ホルモン濃度などを調べた。
その結果、植物ホルモンの一つ「オーキシン」の濃度は福島市の正常のマツが最も高く、外部被ばくと内部被ばくを合計した被ばく線量が1時間当たり3.5~6.5マイクログレイ(3.5~6.5マイクロシーベルトに相当)だった帰還困難区域のマツは濃度がその半分程度だった。福島市の形態異常のマツも同様に濃度が低く、研究チームは「オーキシン濃度の低下により形態異常が増加すると説明できる」としている。