2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにするとの政府目標に絡み、原発の活用を訴える声が政府・与党から出ている。
菅義偉首相は「原子力を含むあらゆる選択肢を追求する」と説明。自民党の世耕弘成参院幹事長は「新設も検討することが重要」と踏み込んだ。
新設や増設について首相や関係閣僚は「想定していない」と説明するが、いずれも「現時点において」との前置きが付く。
11年の東京電力福島第1原発事故を機に、原発の安全性に対する信頼は大きく失われた。一方、経済界などには原発の活用推進を求める意見が根強くある。
世論を瀬踏みしつつ、脱炭素への道を原発の復権に結び付けようとしているのではないか。
事故で学んだのは、ひとたび制御を失えば取り返しの付かない被害を生む現実だ。現政権も「依存度を可能な限り低減させる」との方針は変えていない。
温室効果ガスを排出しないからと原発の再稼働や新増設を進める考えは、脱原発を求める多くの国民の意思に反している。
自然エネルギーへの思い切った転換など、温暖化対策は原発に頼らない方法で進めるべきだ。
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