汚染土壌で栽培した野菜、収穫へ〜飯館村・帰還困難区域 via Our Planet-TV

原発事故後、年間50ミリシーベルトを超える高い放射放射線量が計測されたため、帰還困難区域に指定されている飯館村の長泥地区で今年から、除染土壌を再利用し、農業を再開しようと実証事業が本格化している。

「覆土なし」の汚染土畑をメディアに初公開
農地再生計画では従来、除染土の上に汚染されていない土を50センチほどかぶせて、野菜や花を栽培するとされてきた。ところが今年8月、突如、汚染されていない土はかぶせず、汚染土壌にそのまま野菜を育てる計画があることが判明。実際、8月19日に、汚染した土壌に直接、モロッコいんげんとキャベツの種植えが行われた。

その畑が今月6日、メディアに初公開された。線量計で計測したところ、表土50センチほどで毎時0.5マ〜0.7マイクロシーベルト。放射線管理区域を超える高い放射線量にガイガーカンターからはピーピーという緊張感のある音が鳴り響いた。

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ただ問題は、「覆土なし」で急遽、始められた野菜栽培の理由や目的が一切、明らかにされていない点。市民の間には、セシウムの移行係数が低い野菜を計測することで、汚染土の安全をアピールし、汚染土壌での野菜栽培に道を開くのではないかとの懸念もある。

「汚染土壌の受入れ」〜苦渋の決断を迫られた住民
原発事故後、政府が行った避難区域の見直しにより、「帰還困難区域」に指定された地域は、放射線量の高さを理由に当初、避難指示を解除する予定はなかった。しかし2016年に方針を変更。帰還困難区域の一部を「特定復興拠点」に指定して除染を行い、避難指示を解除する方針が打ち出されたのである。

だが長泥地区の「特定復興拠点」として政府から示されたのは、、集会所周辺のわずか2ヘクタールほど。村は拠点の範囲を拡大しようと国と交渉したが、認められることはなかった。

当初示された「特定復興拠点」はピンクのエリアわずか2ヘクタールのみだったが、除染土の受け入れと引き換えに、地区面積の1割に当たる186ヘクタールが復興拠点に指定され除染対象に含まれることとなった。

そんな中で、拠点の拡大と引き換えに、環境省から持ちかけられたのが汚染土壌の受入だった。村内の除染土を受け入れれば、その場所を再生のうちとして拠点に組み入れ、除染も行うというものだ。地元住民は当初、故郷への汚染土持ち込みに躊躇していたが、原子力規制委員会の委員長だった田中俊一氏や伊達市の市政アドバイザーを務める多田順一郎氏らがたびたび地域に入って説得にあたり、徐々に受け入れに傾いたという。

農地再生の方針を話し合っている「飯舘村長泥地区環境再生事業運営協議会」の終了後に開かれた記者会見で、飯舘村の門馬伸市副村長は「いま思えば、あのまま終わっていれば、集会場周辺くらいで終わっていた事業が、このような大規模な事業にできて、将来、作物も作れるということですからよかった」と喜びを口にし、復興再生拠点外の避難指示解除にも意欲を示した。

また長泥地区の行政区長を務める鴫原新一さんは、「除染土を自分たちの部落に入れるのは本当に悩んだ。」「除染も何もしないでただ放っておいたのでは、自分の土地が荒れてしまう」と苦渋の決断を強いられた背景を振り返り、高齢化が進む中、一歩でも二歩でも前に進みたいという気持ちが、地域住民の合意につながったとの述べた。

次回から会議は公開へ また注目を集めている「覆土なし」土壌での野菜栽培については、「安全が基礎となって進めてほしいということで、汚染土の受け入れを決めた」「(汚染土を活用した栽培は)慎重に考えていきたい」と、除染土での野菜栽培に否定的な見方を示した。また「50センチの砂だけでは、作物や農産物を作るのは難しい」とした上で、汚染土とまぜずに、元の土壌と同じような肥沃な土壌が蘇るよう、県や関係者に協力を仰ぎたいと期待を寄せた。

汚染土壌を再利用して、農地を造成するという、前代未聞の「環境再生事業」。10月6日の運営協議会では、会議の持ち方そのものについても検討され、次回から原則、会議を公開することを決定した。

同協議会をめぐっては非公開なうえ、議事録も公開されていないため、審議のあり方に批判があがっていたが、8月に突如、「覆土なし」での野菜栽培が進められていることが判明。議事録や会議の公開を求める声が高まっていた。

次回の開催日程は未定だが、この会議の中で、栽培した野菜の分析結果なども公表される見通しだ。なお今回の協議会で公表された実証時血権による野菜の分析結果によると、「覆土あり」の農地で栽培収穫したかぶに含まれている放射性セシウムは、根の部分が1キログタムあたり1.1ベクレル、葉は2.3ベクレルだった。

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