韓国の斗山(ドゥサン)重工業が中核部分を担う次世代原子力発電所「小型モジュール原発(SMR)」が米国で設計認証を取得した。米国がSMRに認証を出すのは初めて。原発産業には逆風が吹くが、SMRは安全性が高いとされる。商用化が軌道に乗れば、効率重視で大型化一辺倒だった原発の転機になる可能性がある。
■12基1400億円分受注
米ニュースケール・パワーがユタ州公営電力システム(UAMPS)の発注で進めている原発プロジェクトが、米原子力規制委員会(NRC)の設計段階の安全認証を取得した。斗山は出力5万キロワットの小型原子炉やタービンなどの主要機材を12基分納入する。受注金額は13億ドル(約1400億円)規模という。2023年に着工し29年に稼働する計画だ。
斗山のSMRは地下に設けた水槽に原子炉を沈める構造だ。地震などの外部要因で原子炉を冷やす機能が失われるリスクが小さい。主要部分を工場で作り現場では組み立てるだけで済むため、工期が短く初期費用が安く済むメリットもある。出力が小さい分、発電効率は大型原発を下回るが、普及により量産効果が働けば総発電コストは引き下げられるという。
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■日米の原子炉メーカーも開発中
SMRには日本勢も期待をかける。日立製作所と米ゼネラル・エレクトリック(GE)が共同出資するGE日立ニュークリア・エナジーも米国での建設を目指し、NRCの安全審査を受けている。ガス火力発電所の建て替え需要などを見込んでおり、長期では日本での展開も視野に入れる。
三菱重工業は2040年代の実用化を目指す。既存技術を生かして発電プラントや船舶などに搭載できるSMRの開発を進める。島しょ部などでの地産地消電源としてのニーズを見据えている。
経済産業省も19年度からSMRなど次世代の原子力技術開発の支援をしている。三菱重工などは国の補助事業の枠組みで実用化に向けた開発を進める方針だ。
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斗山にとっては経営再建に光明が差した格好だ。文在寅(ムン・ジェイン)政権は脱原発を掲げて韓国内での原発新設計画を凍結。斗山は火力発電設備やプラント事業などの低迷も重なり経営危機に陥った。19年まで6期連続の最終赤字が続いており、政府系金融機関から支援を受けて事業売却などを進めている。
従業員の10%超にあたる650人の希望退職実施や、建設会社や不動産など非中核事業の売却を進めて財務基盤の改善を急いできた。今回、1400億円の受注につながるSMRの認証に、資本増強や油圧機器事業の売却契約も重なり、斗山の株価が急騰する場面もあった。SMR関連機材の輸出拡大が実現すれば再建に弾みがつきそうだ。(ソウル=細川幸太郎、東京=川上梓)
■燃料処分、残る懸念
東京電力福島第1原子力発電所事故以降、欧米を中心に「原発離れ」の動きが相次いだ。エネルギー安全保障などの観点から原発への投資継続を訴える立場にとって、安全性が高いとされる小型モジュール原発(SMR)は「希望の星」(日本の電力会社)だ。ただ、大量生産が可能で、導入コストが安いことから、核拡散につながるリスクも指摘されている。