<2020年 核廃絶の「期限」>五輪パラ期間・前後 第五福竜丸館休館 競技会場すぐそば via 東京新聞

米国によるビキニ環礁水爆実験で一九五四年に被ばくしたマグロ漁船「第五福竜丸」を保存する東京都立第五福竜丸展示館(江東区)が、東京五輪・パラリンピック期間に合わせて休館する。展示館がある夢の島公園はアーチェリー会場となり、警備で園内の通路が封鎖され、展示館に行くのが困難になるためだ。核廃絶に取り組む市民からは、国内外から観戦客らが訪れる絶好の機会に、核兵器による被害の悲惨さを伝えられないことを惜しむ声が上がっている。 (北條香子)

展示館は七六年に開館し、船の実物を展示。昨年四月に改修工事を終えてリニューアルオープンしたばかりだ。入館無料で、公園を訪れる人らが気軽に立ち寄って核による被害の実態を学ぶ場となっている。

五輪・パラリンピックでは、展示館南側にある陸上競技場でアーチェリーの本選、同じく南東のアーチェリー場で予選が開かれる。

展示館が休館するのは七月三日から。五輪開会式は七月二十四日だが、大会組織委員会の広報担当者によると、五輪の開会式前から競技会場周辺を封鎖して危険物などがないかを細かく確認し、安全な状態を保つ必要があるという。公園内にある熱帯植物館も同様で、いずれもパラリンピック閉会式翌日の九月七日まで休館する。

都オリンピック・パラリンピック準備局の担当者は「競技会場となるアーチェリー場は既に工事で使えないが、展示館や植物館などは大会直前ぎりぎりまでアクセス路を確保する努力をしている」と話す。展示館を管理運営する公益財団法人「第五福竜丸平和協会」は休館中、展示パネルなどを全国に貸し出す方針。

(略)

カヌー・スラローム会場が隣接する葛西臨海公園サービスセンター(江戸川区)によると、大会期間中、葛西臨海水族園などは営業する。重量挙げなどが行われる東京国際フォーラム(千代田区)内にある相田みつを美術館は、六月二十二日から十月五日まで休館する予定。

<第五福竜丸> 1947年に和歌山県でカツオ漁船「第七事代(ことしろ)丸」として建造。約140トン、全長約30メートルの木造船。遠洋漁業用のマグロ漁船に改造され、買い取った静岡県焼津市の船主が「第五福竜丸」と名付けた。54年3月1日、操業中にマーシャル諸島ビキニ環礁で米国の水爆実験に遭遇。乗組員23人が被ばくし、半年後に1人が死去。その後も多くの人ががんで亡くなった。船はその後、旧東京水産大の練習船となり、67年に廃船。東京・夢の島の埋め立て地に捨てられていたが、保存を求める声が高まり、76年に開館した展示館に保存されている。

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