<東海第二原発 再考再稼働>(6)東電の支援は背任行為 国際環境NGO事務局長・満田夏花さん(52)via 東京新聞

 東京電力が昨年十月、日本原子力発電(原電)東海第二原発の再稼働に必要な資金支援を正式に決めた。福島第一原発事故で多くの人がふるさとや生きがいを失っている中で、東電が出したお金が原発再稼働につながるというのは、事故の被害者への裏切り行為だ。

東電は、自力では被害者への賠償や廃炉の費用を賄えず、国や他の大手電力会社から巨額の資金を注入され、形だけ破綻を免れている。賠償や廃炉に専念すべきで、他社の再稼働を支援するのは許されない。

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だが、原電が所有する原発は二〇一一年度以降、一基も動いていない。赤字額は平均十七億円で、原発以外に発電手段を持たない原電は倒産してもおかしくない状況だ。

さらに東海第二の事故対策費は、原子力規制委員会の審査段階では千七百四十億円とされていたが、三千五百億円まで膨らんだ。仮に再稼働しても、その電気はとてつもなく高くつくと予想される。このような電気を前払いで買うのは、賠償や廃炉の費用を負担する国民や電力消費者にとっても背任行為だ。

全く発電していない原電が生き延びているのは、大手電力各社から巨額の「基本料金」を得ているからだ。東電の支払額は最も多く、一一~一八年度で総額三千七百十三億円に上る。東電は経営合理化を言うなら、不当な支払いは即刻やめるべきだ。やめようとした時期もあると聞くが、原発を推進する国の意向には逆らえないのかもしれない。

東海第二は東日本大震災で外部電源を喪失し、三日以上かかってかろうじて冷温停止した。強い揺れによる被災を全て確認できているわけではない。三十キロ圏に九十万人以上が暮らし、実効性ある避難計画の策定も不可能だ。

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国が原発にしがみついているために、多くの人が「原発反対」と言い続けなければならないのは、社会的コストだ。原発反対運動をしなくて済めば、再生可能エネルギーの出力調整や送配電網の適正な運用といった前向きな議論がもっとできる。(聞き手・宮尾幹成)

<みつた・かんな> 1967年、東京都東久留米市出身。東京大卒業後、地球・人間環境フォーラム主任研究員を経て、2009年に国際環境NGO「FoE Japan」へ。3・11後は原発事故被害者の権利や生活再建、エネルギーに関する政策提言に取り組む。脱原発社会を目指す民間シンクタンク「原子力市民委員会」の座長代理も務める。

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