福島県内で多くの小児甲状腺がん患者を執刀している福島県立医科大学の鈴木眞一教授が3日、福島県立医科大学主催の国際シンポジウムで講演し、自身が執刀した180例の甲状腺がんについて発表した。これらのデータは、昨年5月に仙台で開催された日本内分泌学会ですでに発表していたが、マスコミや一般市民の前で言及したのは初めて。
鈴木教授が公表したのは、2018年12月末までに執刀した、事故当時18歳以下だった甲状腺疾患の患者180例のデータ。県民健康調査県の公表されている人数より19人多い。鈴木教授は、術後の診断で72%がリンパ節転移しており、組織外浸潤も47%あったと報告。腫瘍が小さく、リンパ節の転移などがない低リスク症例(T0N0M0)は7.2%(13例)と、「アクティブサーベランス(非手術経過観察)」が推奨される「超低リスク症例」は含まれていないと強調した。
再発患者は12人
また手術した患者のうち、片側の甲状腺だけを摘出した患者164人のうちにあたる11人(7%)、全ての甲状腺を摘出した患者16人のうち1人(6%)でがんが再発し、再手術したことも明らかにした。10月に前橋市で開催された日本甲状腺学会で、片葉切除した患者のうち11人が再手術していると発表してたが、全摘患者の再発に言及するのは初となる。
福島県内の甲状腺検査をめぐっては、手術の必要がない小さながんを見つけてしまう「過剰診断」が指摘されているが、鈴木教授は、「これまで治療した症例に過剰診断がないとまでは言い切れないが極めて限定的」だと主張。一方で、「事故後の福島における甲状腺がんの増加は、放射線被ばくの影響ではなく、大規模の精緻な超音波検査をしたことによるマススクリーニング効果」によるものだとした上で、「福島での小児若年甲状腺がんの発症増加のリスクに放射線の影響があるかないかを検討するために長期にわたり続けなければならない」と述べた。
[…]