放射線被曝 足りない情報via 朝日新聞

■《甲状腺がん》 推定に悪戦苦闘

 原発事故当時、18歳以下だった約38万人を対象に福島県が実施する甲状腺検査。これまで計115人で甲状腺がんが確定した。

 県検討委員会は「現時点で放射線の影響とは考えにくい」とする。だが、一人ひとりにどの程度の甲状腺への被曝があったか、実はわからない。
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国の対策本部は2011年3月下旬、飯舘村と川俣町、いわき市で1千人余りの子どもを対象に甲状腺被曝の簡易測定をした。1080人分のデータから甲状腺がんのリスクが明らかに増える100ミリシーベルト超はなかったと判断する根拠になっている。だが精度が低く、当時の国の原子力安全委員会は「個人の健康影響やリスクを評価することは適切でない」とした。

 また、簡易測定後の追跡調査については「本人や家族、地域社会に不安を与えるおそれがある」などの理由を付けて見送られたことが明らかになっている。
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■《白内障》 研究、足踏み状態

 「白内障になる可能性がある初期変化が急激に増えたことが確認できた」

 今年6月下旬、福島第一原発の作業員の目を調べた金沢医科大の研究報告書が国立保健医療科学院のホームページに公表された。

 対象は、政府が「緊急作業」に指定した11年12月15日までに作業に従事して、全身の累積被曝量が50ミリシーベルトを超えた作業員。同大の研究者らが東電の実施する検診に立ち会い、水晶体を撮影して判定する。13年度からの3年間で約150万円の研究費が厚生労働省から出されている。

 13年度に331人、14年度に510人を診断。その結果、水晶体の繊維のなかに水がたまっている人は、13年度の2・4%から、14年度は12・6%に増えた。こうした結果は9月の日本白内障学会でも発表された。研究代表の佐々木洋教授(眼科学)は「水は自然と消えることもあるが、白内障の初期変化の可能性もあり注意が必要」と話す。
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 作業員一人ひとりの年齢や13年度に検査を受けた331人のうち何人が翌年検査を受けたのかのデータも提供を受けていない。そのため一人ひとりの水晶体が1年間でどう変化したかという肝心なことがわからない。佐々木さんは「東電にはずっとデータを求めてきたが、まだもらえてない」と説明する。

 データ提供の遅れについて東電広報部は「どのようなデータを提供すればいいかはっきりわからなかった。厚生労働省の研究なので渡さないということはない」と話す。今年夏ごろ、求められているデータが具体的にわかり、どんなデータを提供できるのかを「検討中」という。ただ、時期は「未定」としている。

 一方、研究を支援する厚労省には、作業員の被曝量や年齢、業務の内容、検査の結果などをまとめた非公開のデータベースがある。厚労省の担当者は「データベースの利用についても申請があれば検討する」とする。

 研究はまもなく最終3年目の撮影が終わろうとしている。
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