東京電力福島第1原発事故で避難指示解除準備区域に指定されている福島県川内村東部で26日、3カ月の長期宿泊が可能になった。今月1日に避難区域が初めて解除された田村市都路(みやこじ)地区に次ぎ2例目。3年ぶりに我が家で夜を過ごせる住民は歓迎するが、放射線への不安やインフラ復旧の遅れから実際に戻る住民は、対象者276人のうち40人程度となっている。【深津誠】
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放射線量は比較的低く、心配はしていない。ただ、次男らが盆暮れに帰省してくれるかは分からない。「みんなが来たくなるように花を咲かせたい」。8人いる姉弟もこの家に泊まれるようにし、庭には露天風呂を作るつもりだ。「夢だからね。中国の言葉で『桃源郷』って言うでしょ。そんな場所にしたいんだ」ただ、この長期宿泊を望む住民は少ない。24日までに長期宿泊を希望したのは18世帯40人だけ。避難先に落ち着いたり、生活圏の復興が見えないためだ。
村から約50キロ離れた郡山市の仮設住宅に住み、避難中に妻を亡くした半谷(はんがい)敬治さん(80)は戻るつもりはない。大熊町に住んでいた長男も同市に避難しており、孫とも頻繁に会える。不便な村に戻れば孫に会えなくなってしまう。震災直前にひざを手術し、週1回は病院に通う必要もある。「自分の家が住めるようになったと言われても、原発事故で何もかも変わっちゃったから」と力なく話した。
[…]◇福島県川内村
人口約3000人。原発から20キロ圏内の旧警戒区域は12年4月、避難指示解除準備区域(134世帯276人)と居住制限区域(18世帯54人)に再編された。今回の対象は、年間被ばく線量20ミリシーベルト以下の同準備区域に限られる。20キロ圏外の緊急時避難準備区域は11年9月に解除され、12年1月に「帰村宣言」。同4月から学校の再開などが始まったが、帰還は約3割にとどまる。
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