1986年に起きたチェルノブイリ原子力発電所事故は、原発周辺住民はもちろんのこと、周辺地域の動植物にも放射線被曝による大きなダメージを与えまし た。しかし放射線による被害はそれだけにとどまらず、昆虫や微生物などの小さな生き物にも深刻な被害が出ており、これが巡り巡って事故から28年経過した 現在になって問題化しているようです。
Forests Around Chernobyl Aren’t Decaying Properly | Science | Smithsonian
http://www.smithsonianmag.com/science-nature/forests-around-chernobyl-arent-decaying-properly-180950075/?no-ist2014年でチェルノブイリ原発の事故発生から28年が経過しましたが、事故発生地域の近くではこの事故による影響がいまだに感じられます。この事故発生地域の周辺は立ち入り禁止区域、通称「ゾーン」と呼ばれ、一部の人たちを除いて今も人が住んでいないわけですが、このゾーン内に存在する動植物の変化が、原発事故の恐ろしさを物語っています。
例えばゾーン周辺に生息する鳥は、その他のエリアに生息する鳥と比べて明らかに脳の大きさが小さくなっていたり、ゾーン周辺の木々の成長速度が明らかに遅 くなっていたり、クモやハチ、チョウチョ、バッタなどの昆虫の数が少なくなっているなど、ソーンと放射線量が少ない地域とでは動植物の生態に大きな違いが みられます。
また、チェルノブイリからはほど遠いドイツで捕獲された野生のイノシシの、放射線量がいまだに危険なレベルであったりするように、原発事故の影響は事故発生ポイント周辺だけにとどまりません。
しかし、ゾーン周辺の環境ではより大きな問題が起きているようで、Oecologiaの中で公表された最新の研究によると、昆虫や微生物のような自然界で有機物を「分解する役割(有機物を土に返す役割)」をもった生物たちが、放射線により死滅しているとのことです。
このレポートを作成した、原発事故による影響調査の第一人者であるサウスカロライナ大学のTimothy Mousseau氏と彼の研究チームは、1991年からゾーン周辺の調査を開始しています。彼らはゾーン周辺を調査する中で、原発事故で発生した放射性物 質を取り込んで赤みがかった色に変色して枯死した松の木の森「赤い森」が、原発事故発生から15~20年経過しても枯死したはずの木々が腐食していないことに気づきます。
通常、木々が倒れて10年もすれば、それらのほとんどは腐食しておがくずのようになってしまうにもかかわらず、赤い森の枯死した木々は数十年経過しても無 傷のまま残っており、さらにこの赤い森の地面には枯れ葉が年々増えていることが研究チームによって確認されました。このことから、赤い森に生息している昆 虫や微生物などの有機物を分解してくれる小さな生物たちに、何か異変が起きているのではとMousseau氏の研究チームは考えるようになり、彼らはいく つかの野外実験を行うことにしました。
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この実験の結果、放射線のないエリアでは葉っぱの70~90%が分解されて袋の中からなくなりました。しかし、放射線が存在するエリアに置いたバッグの約60%は元の重さのまま残っており、袋の中に詰めた葉っぱが全てなくなることはありませんでした。
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また、その他の研究でチェルノブイリのゾーンは火災のリスクが高まっている、と指摘するものもあります。これは、ゾーンで起きている昆虫の減少や微生物の 分解活動の鈍化により、事故発生から28年間分の落ち葉が溜まりに溜まっており、この落ち葉は山火事が起きた際にはちょうど良い燃料になってしまうからと のこと。
さらに、火災が起きれば放射線が再び周囲にまき散らされることになり、ゾーンの外に放射線が拡散されることになるかもしれない、とMousseau氏は指 摘しており、「大火災が今後数年の内に発生する確率は確実に高まっている」とも言います。しかし、この問題を解決するための明確な方法は現在のところ見つ かっていないとのこと。
なお、Mousseau氏と研究チームは日本の研究チームと協力して、福島原発事故の事故現場付近でも微生物の数が減少していないかどうか調査を進める予定とのことで、福島でもチェルノブイリと同じ状況が起きる可能性を示唆しています。
全文はチェルノブイリ原発事故の立ち入り禁止区域では今何が起きていて、福島では何が起きるかもしれないのか
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