チェルノブイリ原子力発電所の事故から25年。現地では今もなお除染作業が続いているが、健康被害の研究は十分とは言いがたい状況にある。日本はチェルノブイリから何を学ぶことができるだろう?
スラブティチ発の朝の電車は、トランプをしたり、電子書籍を読んだり、車窓から単調な氾濫原を眺めたりする通勤客で満員になっている。それは、ありふれた通勤風景に見える。しかし、40分の電車通勤を終えた彼らを迎えるのは、地下鉄の回転式ゲートではなく、ずらりと並んだ全身用放射線量モニターだ。こうして、世界最悪の原発事故現場となったチェルノブイリの1日が始まる。
作業員を乗せた電車がウクライナの荒廃した田舎を走り抜けている今この瞬間に、地球の反対側で、もう1つの危機的な原発事故が進行している。日本の福島第一原子力発電所で部分的な炉心溶融(メルトダウン)が発生してからまだ数日。車内ではときどき福島の事故が話題にのぼる。「深刻な事態になっているようだ」と、1人の通勤者が言う。「でもチェルノブイリほどではないさ」。その口調には、断固たる誇りのような響きが感じられる。
続きは『チェルノブイリの遺産』から。