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Tag Archives: 甲状腺がん
福島市の1歳児で少なくとも60ミリ〜甲状腺がん裁判意見書 via OurPlanet-TV
東京電力福島第一原発事故に伴う放射性物質の影響で甲状腺がんになったとして、事故当時、福島県内に住んでいた男女7人が東京電力に損害賠償を求めている「311子ども甲状腺がん裁判」の第4回口頭弁論が1月25日、東京地裁で開かれた。原告側は、放射性ヨウ素131による内部被曝は、吸引のみに限っても、福島市の1歳児で平均約60ミリシーベルトにのぼるとする意見書を提出した。 今回、原告側が提出したのは、黒川眞一高エネルギー加速器研究機構(KEK)名誉教授の意見書。福島第一原発事故当時の放射性物質の詳細なデータはあまり残っていないものの、KEKの平山英夫教授(当時)ら、研究グループが、原発から60キロ地点にあった福島市紅葉山のモニタリングポストに1時間ごとの核種別の線量が残っていたことに着目し、大気中の放射性ヨウ素131の濃度を算出した論文が存在していることを指摘した上で、その時間ごとの濃度をもとに、1歳の子どもの吸引による被曝線量を推計した。その結果、最も放射線量が高かった3月15日から16日の数時間にかぎっても、約60ミリシーベルトの内部被曝をしたと主張した。 原告は、ICRP(国際放射線防護委員会)のLNTモデル(しきい値無し直線仮説)に基づき、放射線被曝による健康影響に閾値はなく、線量が非常に低くても、病気になる可能性はあるとの立場をとる。しかし、UNSCEAR(国連科学委員会)の報告書をもとに、原告らは10ミリシーベルト以下の被曝しかしていないとする被告の主張は、あまりに過小評価であり、信頼性が低いと指摘した。 このほか、この日の弁論では、原告2人が証言台に立ち、意見陳述をした。事故当時、中通りで生活していた20代の男女ひとりずつで、男性はこれまでに4回の手術を経験。7時間におよぶ2回目の手術では、「死んだ方がましだ」とさえ考えた苦しみを、涙声で訴えた。 また、もう一人の女性は、1年前の裁判提訴の新聞記事を見て、原告団に加わった経緯に触れ、自分と同じような境遇の患者による裁判の存在により、心が救われた思いを吐露した。女性は、「坂本三郎さん、野口晶寛さん、原健志さん。」と裁判官の名前を一人ひとり呼び、「私たちは今、匿名で戦っていますが、一人ひとり名前があります。私の名前はわかりますか。」と問いかけ、「かつての私のように、裁判官の皆さんにとっては、ひとごとかもしれません。私がそうだったから、痛いほどわかります。でも、私たちがなぜこのように立たざるを得なかったのか。それだけでも理解してほしいです。」と声を振り絞って訴えた。 次回の第5回口頭弁論期日は3月15日(水)14時から東京地裁103号法廷で開かれる。また、第6回期日は6月14日、7回期日は9月日に決まった。 原文と動画
原告「被曝が原因」9割以上と主張〜甲状腺がん裁判 via OurPlanet-TV
東京電力福島原子力発電所事故以降、甲状腺がんと診断され、手術を受けた男女7人が東京電力を訴えている裁判で9日、がんの原因が放射線被曝による確率(原因確率)が、多くの公害事件などで因果関係が認められてきた水準に比べてはるかに高く、90%以上であるとする意見書を裁判所に提出した。 原告側が今回、裁判所に提出したのは、岡山大学の津田敏秀教授の意見書。津田教授は「福島県内で過酷事故に遭わなければ、甲状腺がんがなかったであろう」確率を「原因確率」と呼ぶとした上で、原告7人の原因確率は、最も低い人で約95%、最も高い人では99・5%に達するとしている。 原告側の西念京佑弁護士は法廷で、これら原因確率は、過去の裁判で因果関係を認められてきたヒ素中毒や環境アスベスト(50%)や大気汚染訴訟やじん肺(70〜80%)に比べても、はるかに高い水準にあると主張。過去の判例では、原因確率が7〜8割を超えると、その事実だけで因果関係があると認めてきたとして、裁判所に対し、原告のがんは放射線被曝に起因するものだと考えるべきだと強調した。 […] 意見書を書いた津田教授は、これまでに水俣病、じん肺、淀川大気汚染などの裁判に関与してきた環境疫学の専門家で、福島原発事故については、福島で多数、見つかっている小児甲状腺がんは、放射線影響以外には考えにくいとする論文を2015年に、国際的な科学雑誌「エピデミオロジー」で公表している。 口頭弁論で、当時中学1年生だった原告は、「病気になったのが身内や友達じゃなく自分でよかった」「母に申し訳ない」「友達のことが心配」「看護師さんに申し訳ない」など複雑な胸中を語った。これに対し、期日後の会見で、北村賢二郎弁護士は「10代20代でがんになった若者がそんなことを言うということがどういうことなのか、実状を捉えて、この問題について取り扱ってほしい」と強く訴えた。 原文とビデオ ◆アーカイブ「311子ども甲状腺がん裁判」第3回口頭弁論期日集会
小児甲状腺がん328人に〜福島県民健康調査 via OurPlanet-TV
東京電力福島第一原発事故後に福島県で行われている「県民健康調査」の検討委員会が3日、福島市内で開かれ、新たに12人が甲状腺がんと診断された。これまでに、県の検査によってがんと診断された子どもは296人となり、がん登録で把握された集計外の患者43人をあわせると、事故当時、福島県内に居住していた18歳以下の子どもの甲状腺がんは338人となった。 […] アンケートをめぐり県外と県内の委員が対立 事故から11年が経過し、「甲状腺検査」以外の検査は事実上、終了した県民健康調査。検討委員会の議題も初めて、甲状腺検査のみとなった。この日は、検査対象者と保護者向けのアンケート調査の質問項目をめぐり、議論が白熱した。 口火をきったのは、環境省の神ノ田昌博環境保健部長。アンケート項目に、「放射線被曝による健康影響は将来的にも見られそうにない」としているUNSCEAR(国連科学委員会)2020報告書の結論について、理解しているかを追加すべきだと強く主張した。また、検査の見直しなどを主張してきた宮城県立こども病院の室月淳産科科長や国立がん研究センター社会と健康研究センター検診研究部の中山富雄部長も、神ノ田氏の意見に賛同した。 これに対し、双葉郡医師会の重富秀一会長や福島県病院協会の佐藤勝彦会長は、県民にはさまざまな意見があると反論。一方的な意見を押し付けかねないと反対した。また、福島大学の富田哲特任教授は、甲状腺がんとなった当事者がどうおもうのかと強く反発。さらに、甲状腺がんが被曝によるものではないという意見が、検討委員会の結論となっているが、2巡目解析の際には意見が対立したと指摘。両論併記を求めたにもかかわらず、自分の意見は報告書に盛り込まれなかったと怒りをあらわにした。 アンケート調査は、甲状腺評価部会から要望が出ていたもの。甲状腺がんが、通常よる数十倍の割合で見つかっていることについて、精密な検査の結果、治療の必要のないがんを見つけているとする「過剰診断」論を主張する委員らが、検査の「デメリット」が県民に伝わっていないなどとして、調査を求めていた。来年度以降、無作為抽出した6,000人に対して、アンケートの質問票を送付するとしている。 […] ビデオ
甲状腺がん裁判で20代女性が追加提訴へ via OurPlanet-TV
福島原発事故後に甲状腺がんになった男女6人が東京電力を訴えている裁判で、原告側の弁護団は2日、女性一人が新たに追加提訴すると明らかにした。女性は中通り出身で、現在は首都圏に住む20代。同裁判の第2回口頭弁論が行われる9月7日に提訴する。 原発事故当時小学校6年生だったという女性は、1年前の2021年夏に甲状腺がんの半分を摘出する手術を受けた。会見に臨んだ女性は、手術後、「殻に閉じこもる生活」をしていたところ、父親から裁判のことを聞かされ、「自分以外にも苦しい思いをしている人たちがいるんだ」と、提訴を決意したという。 女性のがんが見つかったのは、福島県が実施している甲状腺検査の4回目検査。過去3回の検査では、毎回「あなたは健康です。何も心配ありません」と言われたため、「安心しきっていた分、ショックだった」という。2年ごとに検査を受けているにもかかわらず、腫瘍はすでに1センチを超えており、医師には「手術を後回しにすれば再発や転移のなどの確率はあがる」と説明を受けた。 「病気になってしまたのは仕方がないとあきらめたくはありません。どんな結果になろうとも、原告として、最後まで覚悟を持って、この裁判に挑みます」と力を込めた。 「311子ども甲状腺がん裁判」の原告はこれで男性2人、女性5人のあわせて7人となる。同裁判の第2回口頭弁論期日は9月7日の14時から、東京地裁の806号法廷で開かれる。 ビデオを見る
原発事故の被ばく、国連科学委が「健康被害の可能性は低い」と結論も…福島の会場からは疑問の声 via 東京新聞
東京電力福島第一原発事故後の放射線被ばくによる健康への影響に関する報告書をまとめた国連の科学委員会(UNSCEAR)が21日、福島県いわき市で研究者らとの意見交換会を開いた。ギリアン・ハース前議長は「総合的に被ばく線量は少なく、がんなどの健康被害が増加する可能性は低い」と説明。研究者らからは「被ばくを過小評価している」などと疑問の声が上がった。 報告書は、事故後から2019年末までに公表された査読付き論文などの結果をまとめ、昨年3月に公開された。執筆したミハイル・バラノフ博士は、福島県で小児甲状腺がんが多く確認されていることについて「超高感度のスクリーニング検査の結果が影響していると思う」と述べた。 会場からは多くの質問が出た。「3.11甲状腺がん子ども基金」代表理事で医学博士の崎山比早子さんは、50年以上前の論文などに基づき、日本人は海産物を多く食べるために事故で放出した放射性ヨウ素の被ばくを世界平均の半分と推計したことを問題視。「福島県民健康調査で分かる通り、摂取量は日本人も世界平均と変わらない。被ばくの明らかな過小評価になっている」と指摘した。 高エネルギー加速器研究機構の物理学者、黒川真一名誉教授は「誤ったグラフやデータが複数あるほか、物理的にあり得ない数値を出し、論文引用の誤りで被ばく線量の過小評価をしている。科学的な報告書とは程遠い」と批判。黒川氏らの研究者グループは、報告書を独自に検証して結論の撤回を求めてもいる。 […] 委員会のメンバー3人は20日、福島県知事と面会。その直後、小児甲状腺がん患者らを支援する「あじさいの会」の千葉親子ちかこさん(74)がボリスラバ・メットカーフ事務局長に「報告書の結論は、患者や家族への差別や偏見を助長しかねない」と直接再考を求めた。 千葉さんに同行した、事故当時中学生で甲状腺がんになった女性は「初期被ばく線量の十分なデータがない中、被ばくとがんの因果関係がないと決め付けられ苦しい。正しい調査をしてほしい」と訴えた。(片山夏子) 全文
国連科学委員会のメンバーが県立医科大学で講演 via NHK Web
去年、東京電力福島第一原子力発電所の事故による健康への影響に関する報告書をとりまとめた国連の科学委員会のメンバーが福島県立医科大学で講演し、「被ばくによる甲状腺がんの発生率の上昇が識別できる形で起こる可能性は低い」などと見解を述べました。 県立医大を訪れたのは、放射線の影響に関する国連の科学委員会=UNSCEARのギリアン・ハース元議長やボリスラバ・メットカーフ事務局長ら3人です。 委員会は去年、放射線被ばくによる住民の健康への影響について、「被ばくが直接の原因となる発がんなどの健康への影響が将来的にみられる可能性は低い」とする報告書をまとめています。 […] 国連の科学委員会の報告書には、疑問の声もあがっています。 20日は、原発事故当時県内に住んでいて、その後、甲状腺がんと診断された20代の女性と支援グループが記者会見し、「放射線が直接影響した健康被害はない」とした結論について、「患者の不安を押さえつけ、患者と家族を孤独に追いやるものだ」と批判しました。 その上で、「事故の初期にどれだけ被ばくしたかは十分なデータがない」などとして、報告書の再検討を求めました。 また、今回の委員会の来日に合わせ、国内の研究者らで作るグループが報告書の検証結果を発表し、甲状腺被ばくの原因となる放射性物質のヨウ素131が、原発事故の発生直後、大気中にどれだけ存在したか試算した部分で、元となった論文のデータを誤って引用し、被ばく量を少なく評価しているなどと指摘しました。 グループによりますと、委員会側は一部誤りを認めて訂正の意向を示しているということですが、内容に関わる本質的な質問には回答がないということで、グループ側は結論の撤回を求めています。 全文
「子ども甲状腺がん裁判」 始まる~20代女性陳述「大学行きたかった」 via OurPlanet-TV
[…] この日の裁判では、弁護士らが訴状の要旨を陳述したほか、原告の20代女性が法廷に立ち、意見陳述した。女性は、高校生の時にがんが発覚。手術後、大学に進学したものの、再発と転移により、大学を中退。以来、治療中心の生活を送っている。放射性ヨウ素を服用する特殊な治療・アイソトープ治療の過酷さや、将来の夢を描けない苦しさを綴った陳述書を、約15分かけて読み上げた。 甲状腺がんをめぐっては、インターネットを中心に、被曝影響を主張する言説に対してバッシングが広がっていることもあり、原告は、傍聴席からは見えないよう、四角いパーテーションで囲われた中で陳述した。がんが分かった時のことや、大学を断念したことなど、苦しい経験を語るくだりでは、時折、声をつまらせたり、しゃくりあげるような泣き声となったが、声を震わせながらも最後まで読み続けた。 2回目以降の意見陳述は未定 この日は、意見陳述をした原告以外に、3人の原告が出廷。やはり傍聴席から見えないよう、パーテーションで仕切られた原告席で弁論に参加した。同席した弁護士によると、原告の陳述に聴き入りながら、3人とも涙が止まらなくなり、慟哭するようば場面もあったという。意見陳述の間中、法廷内は、鼻をすする声が終始聞こえていた。 原告の意見陳述をめぐっては、4月に行われた進行協議で、東京電力が原告の意見陳述の実施に反対を唱えており、2回目以降の予定は決まっていない。原告弁護団は弁論の最後に、原告の意見陳述を認めるよう改めて主張。被告側代理人は明確に反対はせず、裁判所に委ねると述べた。裁判所は1週間程度で方針を示す。 被曝との因果関係が争点 この裁判の最大の争点は、事故に伴う放射線被曝とがん発症の因果関係となる見通しだ。原告側は、年間で100万人に1~2人しか発症しない小児甲状腺がんが、この10年間に293人が発症したと指摘。また、子どもの甲状腺がんの最大の発症因子は放射線被曝であることから、疫学的な手法で、因果関係は証明できると主張している。 一方、原告側によると、東電側は答弁書で、原告らは被曝していないなどと反論しているという。次回の裁判は、3ヶ月後の9月7日に開かれる。 […] 原告の意見陳述要旨 あの日は中学校の卒業式でした。友だちと「これで最後なんだねー」と何気ない会話をして、部活の後輩や友だちとデジカメで写真をたくさん撮りました。そのとき、少し雪が降っていたような気がします。 地震が来た時、友だちとビデオ通話で卒業式の話をしていました。最初は、「地震だ」と余裕がありましたが、ボールペンが頭に落ちてきて、揺れが一気に強くなりました。「やばい!」という声が聞こえて、ビデオ通話が切れました。 「家が潰れる。」揺れが収まるまで、長い地獄のような時間が続きました。 原発事故を意識したのは、原発が爆発した時です。「放射能で空がピンク色になる」そんな噂を耳にしましたが、そんなことは起きず、危機感もなく過ごしていました。 3月16日は高校の合格発表でした。地震の影響で電車が止まっていたので中学校で合格発表を聞きました。歩いて学校に行き、発表を聞いた後、友達と昇降口の外でずっと立ち話をして、歩いて自宅に戻りましたが、その日、放射線量がとても高かったことを私は全く知りませんでした。 甲状腺がんは県民健康調査で見つかりました。この時の記憶は今でも鮮明に覚えています。その日は、新しい服とサンダルを履いて、母の運転で、検査会場に向かいました。 検査は複数の医師が担当していました。検査時間は長かったのか。短かったのか。首にエコーを当てた医師の顔が一瞬曇ったように見えたのは気のせいだったのか。検査は念入りでした。 私の後に呼ばれた人は、すでに検査が終わっていました。母に「あなただけ時間がかかったね。」と言われ、「もしかして、がんがあるかもね」と冗談めかしながら会場を後にしました。この時はまさか、精密検査が必要になるとは思いませんでした。 精密検査を受けた病院にはたくさんの人がいました。この時、少し嫌な予感がしました。血液検査を受け、エコーをしました。やっぱり何かおかしい。自分でも気づいていました。そして、ついに穿刺吸引細胞診をすることになりました。この時には、確信がありました。私は甲状腺がんなんだと。 わたしの場合、吸引する細胞の組織が硬くなっていたため、なかなか細胞が取れません。首に長い針を刺す恐怖心と早く終わってほしいと言う気持ちが増すなか、3回目でようやく細胞を取ることができました。 10日後、検査結果を知る日がやってきました。あの細胞診の結果です。病院には、また、たくさんの人がいました。結果は甲状腺がんでした。 ただ、医師は甲状腺がんとは言わず、遠回しに「手術が必要」と説明しました。その時、「手術しないと23歳までしか生きられない」と言われたことがショックで今でも忘れられません。 手術の前日の夜は、全く眠ることができませんでした。不安でいっぱいで、泣きたくても涙も出ませんでした。でも、これで治るならと思い、手術を受けました。 手術の前より手術の後が大変でした。目を覚ますと、だるさがあり、発熱もありました。麻酔が合わず、夜中に吐いたり、気持ちが悪く、今になっても鮮明に思い出せるほど、苦しい経験でした。今も時折、夢で手術や、入院、治療の悪夢を見ることがあります。 手術の後は、声が枯れ、3ヶ月くらいは声が出にくくなってしまいました。 病気を心配した家族の反対もあり、大学は第一志望の東京の大学ではなく、近県の大学に入学しました。でも、その大学も長くは通えませんでした。甲状腺がんが再発したためです。 大学に入った後、初めての定期健診で再発が見つかって、大学を辞めざるをえませんでした。「治っていなかったんだ」「しかも肺にも転移しているんだ」とてもやりきれない気持ちでした。「治らなかった、悔しい。」この気持ちをどこにぶつけていいかわかりませんでした。「今度こそ、あまり長くは生きられないかもしれない」そう思い詰めました。 1回目で手術の辛さがわかっていたので、また同じ苦しみを味わうのかと憂鬱になりました。手術は予定した時間より長引き、リンパ節への転移が多かったので傷も大きくなりました。 1回目と同様、麻酔が合わず夜中に吐き、痰を吸引するのがすごく苦しかった。2回目の手術をしてから、鎖骨付近の感覚がなくなり、今でも触ると違和感が残ったままです。 手術跡について、自殺未遂でもしたのかと心無い言葉を言われたことがあります。自分でも思ってもみなかったことを言われてとてもショックを受けました。手術跡は一生消えません。それからは常に、傷が隠れる服を選ぶようようになりました。 手術の後、肺転移の病巣を治療するため、アイソトープ治療も受けることになりました。高濃度の放射性ヨウ素の入ったカプセルを飲んで、がん細胞を内部被曝させる治療です。 1回目と2回目は外来で治療を行いました。この治療は、放射性ヨウ素が体内に入るため、まわりの人を被ばくさせてしまいます。病院で投薬後、自宅で隔離生活をしましたが、家族を被ばくさせてしまうのではないかと不安でした。2回もヨウ素を飲みましたが、がんは消えませんでした。 3回目はもっと大量のヨウ素を服用するため入院することになりました。病室は長い白い廊下を通り、何回も扉をくぐらないといけない所でした。至る所に黄色と赤の放射線マークが貼ってあり、ここは病院だけど、危険区域なんだと感じました。病室には、指定されたもの、指定された数しか持ち込めません。汚染するものが増えるからです。 病室に、看護師は入って来ません。医師が1日1回、検診に入ってくるだけです。その医師も被ばくを覚悟で検診してくれると思うととても申し訳ない気持ちになりました。私のせいで誰かを犠牲にできないと感じました。 薬を持って医師が2、3人、病室に来ました。薬は円柱型のプラスチックケースのような入れ物に入っていました。 薬を飲むのは、時間との勝負です。医師はピンセットで白っぽいカプセルの薬を取り出し、空の紙コップに入れ、私に手渡します。 医師は即座に病室を出ていき、鉛の扉を閉めると、スピーカーを通して扉越しに飲む合図を出します。私は薬を手に持っていた水と一緒にいっきに飲み込みました。 飲んだ後は、扉越しに口の中を確認され、放射線を測る機械をお腹付近にかざされて、お腹に入ったことを確認すると、ベッドに横になるように指示されます。 すると、スピーカー越しに医師から、15分おきに体の向きを変えるように指示する声が聞こえてきました。 … Continue reading
【傍聴記】311子ども甲状腺がん裁判 via ウネリウネら
《あの日は中学校の卒業式でした。 友だちと「これで最後なんだねー」と何気ない会話をして、部活の後輩や友だちとデジカメで写真をたくさん撮りました。そのとき、少し雪が降っていたような気がします。》 記者は人の話を聞くのが仕事だけれど、こんなに必死になって人の話に耳を傾けたのは、久しぶりかもしれない。プライバシー保護のため、東京地裁103号法廷の中央はパーテーションで仕切られている。その仕切りの奥から、原告の方の声が聞こえてくる。 […] 午後2時の開廷から約1時間後、原告の1人による意見陳述は始まった。その声が聞こえてきた瞬間、法廷の空気は一変した。先ほどまで余裕ぶった表情で裁判に臨んでいた東電側の弁護士たちが、悄然として原告の声に耳を傾けている。 《甲状腺がんは県民健康調査で見つかりました。この時の記憶は今でも鮮明に覚えています。その日は、新しい服とサンダルを履いて、母の運転で、検査会場に向かいました。》 《私の後に呼ばれた人は、すでに検査が終わっていました。母に「あなただけ時間がかかったね。」と言われ、「もしかして、がんがあるかもね」と冗談めかしながら会場を後にしました。この時はまさか、精密検査が必要になるとは思いませんでした。》 この原稿を書いている今でも、原告の声音をはっきり思い出せる。やわらかくて、丁寧で。私は福島に住んで2年余り。数は少ないが、同じ年ごろの人たちと話したことがある。その人たちと同じ声をしている。 《医師は甲状腺がんとは言わず、遠回しに「手術が必要」と説明しました。その時、「手術しないと23歳までしか生きられない」と言われたことがショックで今でも忘れられません。》 《大学に入った後、初めての定期検診で再発が見つかって、大学を辞めざるをえませんでした。「治っていなかったんだ」「しかも肺にも転移しているんだ」とてもやりきれない気持ちでした。「治らなかった、悔しい」この気持ちをどこにぶつけていいかわかりませんでした。「今度こそ、あまり長くは生きられないかもしれない」そう思い詰めました。》 「治らなかった、悔しい」。そう言ったところで、原告の方は少し声をつまらせた。鼻をすするような声も聞こえる。それでも、陳述が止まることはなかった。声がかすれて聞き取れなくなることもなかった。この人は強い、と思った。傍聴席ではもう、みんなボロボロ涙を流していた。 《手術跡について、自殺未遂でもしたのかと心無い言葉を言われたことがあります。自分でも思ってもみなかったことを言われてとてもショックを受けました。手術跡は一生消えません。それからは常に、傷が隠れる服を選ぶようになりました。》 […] 《一緒に中学や高校を卒業した友だちは、もう大学を卒業し、就職をして、安定した生活を送っています。そんな友だちをどうしても羨望の眼差しでみてしまう。友だちを妬んだりはしたくないのに、そういう感情が生まれてしまうのが辛い》 ここのところで、原告の方はもう一度、声を詰まらせた。私は心の中で声援を送ることしかできなかった。 《もとの身体に戻りたい。そう、どんなに願っても、もう戻ることはできません。この裁判を通じて、甲状腺がん患者に対する補償が実現することを願います。》 […] 原告側の井戸謙一弁護士が立ち上がる。 「裁判長、原告側は6人全員の意見陳述の機会を求めます。きょう陳述を行った原告は6人の代表ではありません。皆さん、ひとり一人置かれた状況はちがいます。そのことを裁判官には早期に分かっていただきたい」 裁判長は被告側代理人に意見を求めた。東電側の弁護士が慎重に意見を述べる。 「(原告本人の意見陳述よりも)争点の整理が今後必要です。それを優先してほしいという考えではありますが……、意見陳述については裁判長のご判断にお任せします」 閉廷後の記者会見で、井戸氏はこう話した。 「裁判所は毎回原告の意見陳述をすることには当初から消極的でした。被告代理人も反対でした。今日も明確に『反対』と言うかと思ったら、原告の意見陳述を聞いた直後でしたから、その迫力、うったえる力が大きかったので、被告代理人は『反対』とまでは言えなかったんだと私は受け止めました」 原告の声が、東電側弁護士の耳にも届いたのか? 私はそう信じたい。東電側の弁護士も結局は一人の人間である。一人の人間としてこの日の意見陳述を聞けば、心を動かさない者はいないはずだ。そして、この声がもっと多くの人に届けば、裁判を始めてから原告たちが浴びているという全く正当化できない誹謗中傷など生まれる余地がない。私はそう信じている。 […] 全文
311小児甲状腺がん損害賠償裁判はじまる/東京電力福島第一原発事故から11年 via 関西労働者安全センター/大阪
シンプルな因果関係 なお120ページの訴状(公開版)が、311甲状腺がんこども支援ネットワークのホームページに掲載されている。 311甲状腺がんこども支援ネットワーク訴状(公開版) 下に紹介する弁護団長の話にも出てくる問題の「福島県県民健康調査」批判に多くのページが割かれているのでぜひ一読いただければと思う。 また、裁判開始に合わせるように岩波書店発行の雑誌「科学」2022年4月号が【特集】原発事故と小児甲状腺がんを掲載している。その巻頭エッセイ 提訴にあたって因果関係の立証の困難さも指摘されているが、因果関係や環境保健が専門の者にとっては、科学的因果関係の立証がこれほどシンプルな事例は珍しい。 雑誌「科学」2022年4月号 その答えは「被ばく」-井戸謙一弁護団長(2022/1/27記者会見) そもそも小児甲状腺がんというのは100万人に1人か2人という極めてまれな病気です。福島県の子どもの数は三十数万人ですから、福島県では2、3年に一人でるかでないか、です。 ところが、原発事故後の福島では、福島県県民健康調査で266名、それ以外で27名、あわせて293名の小児甲状腺患者がすでに発生しています。 原告たちはそのひとりになってしまい、思い描いていた人生を狂わされ、なぜ自分が十代でがんにならなければならなかったのか、考え続けてきました。 しかし、いくら考えてもその答えは「被ばく」しか考えられないのです。 あの2011年3月中旬以降、被ばくをきびしく注意してくれるおとなはいなかったし、被ばくなんて気にしないで今までどおりの生活をしていました。それぞれが相当量の被ばくをしたと考えられます。 しかし、今の福島では、自分のがんの原因が被ばくではないか?などとは言えません。医者に質問すれば頭から否定されます。質問しないのに、きみのがんの原因は被ばくが原因ではないからね、と言う、そういう医者もいます。 周りの人たちにそういう疑問を口にすれば、福島の復興に水を差す、風評加害者としてバッシングされます。彼らは甲状腺がんに罹患したことさえ隠して生活してきたのです。 しかし、将来の不安は高まるばかりです。 六人とも甲状腺の半分を手術で摘出しましたが、そのうち四人は再発し、甲状腺全部を摘出しました。甲状腺を全部摘出すると、残った甲状腺組織をやっつけるために放射性ヨウ素の入ったカプセルを内服するRAI治療という過酷な治療を受けなければなりません。そのカプセルに入っている放射性ヨウ素はなんと、すくなくとも10億ベクレル。さらに甲状腺がありませんから、生涯、ホルモン剤を飲み続けなければなりません。再発を繰り返し、四回も手術を受けた若者がいます。再手術の可能性を医師から指摘されている若者もいます。肺転移の可能性を指摘されている若者もいます。全員が再発を恐れています。進学にも就職にも支障が出ています。将来の結婚、出産なども不安です。 このまま泣き寝入りするのではなく、加害者である東京電力に自分たちの甲状腺がんの原因が被ばくであることを認めさせ、きっちりと償いをさせたい、思い悩んだ末、彼らはそう決意し、提訴するという重い決断をしました。 しかし彼等が提訴の決断をしたのはそれだけが原因ではありません。 同じ境遇の300人近い若者達が同じように苦しんでいるだろう、だれかが声をあげればその人達の希望になる、そしてできればその人達ともいっしょに闘いたい。さらに、原爆の被爆者の方々が、被爆者健康手帳をもらって生涯にわたって医療費や手当の支給を受けているように原発事故による被ばく者にも支援の枠組みをつくってほしい。そこまでつなげたい、と彼らは願っています。 国や福島県が小児甲状腺がんと被ばくとの因果関係を認めていないなかで、裁判所にこれを認めさせるのはむずかしいのではないかと考えられる方がおられるかもしれません。 しかし、100万人に一人か二人のはずだった病気が数十倍も多発しているのです。そして、甲状腺がんの最大の危険因子が、被ばくであることは誰もが認めることです。教科書にいの一番に書いてあります。 そして原告らは確かに被ばくをしました。 最近、福島県県民健康調査では必要の無い手術をしているという過剰診断論が流布されていますが、原告らのがんは進行しており過剰診断では有り得ません。 したがって、原告らのがんの原因が被ばく以外にあるんだということを(被告が)証明しない限り、原告らの甲状腺がんの原因は被ばくであると認定されるべきであると我々は考えておりますし、その考えは裁判所にも十分ご理解していただけるものと考えています。 6名の若者は本日闘いの第一歩を踏み出しました請求金額は全摘の若者4名が1億円に弁護士費用1000万円、片葉切除の若者2名は8000万円に弁護士費用800万円。 長い闘いになります。本当はひとりひとりが皆さんの前で顔と名前を出して、その気持ちを訴えたいのですが、いまの福島、いまの日本に現状ではそれをすることはできません。 今後も匿名で訴えることとなりますが、その点はぜひご理解をお願いしたいと思います。最後にメディアの皆さまには、福島の事故は終わった、福島事故による健康被害者はゼロだなどという政府にウソのプロパガンダに惑わされることなく、この現実を日本中、世界中の人々に幅広く伝えて頂きたくお願い申し上げる次第です。ありがとうございました。 311子ども甲状腺がん裁判提訴会見(ノーカット版)より 全文
甲状腺がん手術4回「因果関係知りたい」 原発事故当時中2の男性 対東電訴訟、26日口頭弁論 via 東京新聞
東京電力福島第一原発事故時に福島県内にいた、約300人の子どもたちに確認された甲状腺がん。「事故と因果関係があるのか」ー。事故当時、中学2年だった男性(25)は4度の手術を受け再発の恐れを抱えながら、その答えが知りたくて裁判を起こした。男性ら若者6人が東電に損害賠償を求めた訴訟の第一回口頭弁論が26日、東京地裁である。(片山夏子) ◆再発・転移の懸念、常に 「いつかまた転移し、体調に影響があると覚悟して生きています」。男性は福島県中部の中通り出身で、東京都内の企業で働く。薬は生涯飲み続けなければならないが、体調は良く仕事は充実しているという。 だが、再発や転移の懸念は常につきまとう。声が出なくなったり、体調が悪化して仕事ができなくなったりしたら…。「先のことは考えられない」と言う。当初は裁判に積極的ではなかったが、今は「裁判であった事実の記録を残し、甲状腺がんに苦しむ他の子の助けになれたら」と思う。 甲状腺がんと分かったのは、都内の大学に通っていた19歳の時だった。父親は医師から「悪性度が高く、広範囲に転移がある。5年もたないかもしれない」と告げられたことを、男性には言えなかった。 別の医師にも「チェルノブイリで見られたのと同じ」「原発事故関連と推察される」と言われた。父親は「がんと告げた時、息子は淡々と受け止めていた。心の中で泣いた」と話す。「福島にいてはいけなかった」。避難しなかった後悔が今も消えない。 男性は20歳で片側の甲状腺を切除。半年後に全摘したが、リンパ節への転移もあり、手術は6時間に及んだ。長時間同じ姿勢でいたため、手術後はひどい床ずれの痛みで眠れなかった。声が出ずに痛みを訴えることすらできず、チューブにつながれたまま耐えた。心が沈み、家族の言葉にも反応できなかった。「死んだ方が楽かもしれない」と初めて死を意識した。 ◆「半年は避妊を」文書に衝撃 21歳の時にリンパ節への転移で3回目の手術を受け、24歳で再発。手術後の放射線治療では「半年は避妊すること」と書かれた文書をもらった。結婚して子どもがほしいと思っている男性は、子どもに影響するかもしれないと衝撃を受けた。男性は「父親が原発事故に憤りを感じたり、子どものために病院を必死で探したりした気持ちが初めて分かった」と話す。 政府や福島県は、県内で見つかっている小児甲状腺がんと原発事故の因果関係は「現時点で認められない」との立場だ。提訴後、父親は男性ら原告に向けられる差別的な空気も感じ取っている。「せっかく福島が良い方に向かっているのに水を差すな」という声や、離れていった知り合いもいた。 […] 男性は言う。「原発事故じゃなかったら何があるのか。何も言わなければなかったことにされ、事実が埋もれていく。価値ある裁判にしたい」 全文