政府、週内にも農・漁業団体と
政府は東京電力福島第1原子力発電所でたまり続ける処理水の処分を巡り、週内にも関係団体と大詰めの協議をする。漁業関係者を中心に海洋への放出による風評被害への懸念は根強いが、処理水を敷地内にため続ければ今後の廃炉作業に影響が出かねない。2022年にもタンクの容量が満杯になる見通しで、海洋放出の決定に向けた調整を急ぐ。
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11年の東日本大震災に伴う津波の影響で炉心溶融事故を起こした福島第1では壊れた建屋に地下水や雨水が入り込み、高濃度の放射性物質に汚染した水が1日180トン(19年度)発生している。東電は専用装置で主要な放射性物質を取り除いた処理水として、敷地内のタンク1000基に約123万トンを保管している。
20年中に計137万トン分のタンクを確保するが、東電によると足元の汚染水の発生状況などを踏まえると、22年10月にも満杯になる見通しだ。敷地内にタンクが増え続ければ、政府・東電が41~51年の完了を目指す廃炉作業に遅れが出かねない。
ただ、地元を中心に風評被害への懸念があるため、慎重に処分方法を検討してきた。有識者による検討にのべ6年かけ、20年2月には、全国の原発で実績がある海洋放出が「より確実に処分できる」とした。
処理水には現在の技術では十分取り除くのが難しい放射性物質トリチウム(三重水素)が残っている。トリチウムは自然界にも大気中の水蒸気や雨水などにごくわずかに存在し、放つ放射線は弱い。通常の原発でもトリチウムを含む水は発生しており、濃度を基準値以下に薄めて海に流すことが国際的に認められている。国内外の原子力施設も海に放出している。
東電は政府が方針を決めたら、放出設備の設計や規制手続きに入る。放出を始めるまでには少なくとも2年程度の時間がかかる。放出はトリチウム以外の放射性物質を取り除いた処理水に、新たに水を加えて500~600倍に薄めて時間をかけて海に流す計画だ。
東電によると放出時のトリチウム濃度は基準値の40分の1程度にとどまる見込みだ。原発周辺における海水の放射性物質濃度の監視を強化して異常があれば速やかに放出を止める。廃炉完了までに放出を終える方針だ。