原爆投下時に国が指定する地域の外にいたため被爆者と認められていない161人の「被爆体験者」と遺族が、長崎県と長崎市に被爆者健康手帳の交付などを求めた訴訟で、最高裁第1小法廷(深山卓也裁判長)は原告の上告を退ける決定をした。原告のうち10人を被爆者と認定した1審判決を取り消し、原告側の訴えを全面的に退けた2審判決が確定した。21日付。5裁判官全員一致の結論。
国が指定する被爆地域は爆心地から南北約12キロ、東西約7キロ。被爆者援護法は(1)被爆地域にいた人(1号被爆者)(2)投下から2週間以内に市内に入った人(2号被爆者)(3)投下時やその後に放射能の影響を受ける事情があった人(3号被爆者)-を被爆者と規定している。訴訟の争点は、原告らが3号被爆者に該当するかどうかだった。
福岡地裁は、原告側が提出した年間の放射線被曝線(ひばく)量の推計値を基に、原告のうち10人は、年間の被曝線量が自然界の約10倍(25ミリシーベルト)を超える場合は健康被害が生じる可能性があると指摘。国が指定する被爆地域外で原爆に遭った被爆体験者を被爆者と初めて認定した。これに対し、福岡高裁は「100ミリシーベルト以下の低線量放射線被曝で健康被害が生じる可能性があるとの科学的な知見は確立してない」と判断し、原告全員の訴えを退けていた。