「原発がどんなものか知ってほしい」というタイトルのテキストがネット上に出回っている(http://www.iam-t.jp/HIRAI/)。
さまざまなサイトに転載されているこのテキストは、現場監督として原発に携わってきた一級プラント配管技能士・平井憲夫氏の講演録だ。1997年、58歳の若さで亡くなった平井氏。しかし、このテキストだけが独り歩きし、これまでネットの世界で生き延びてきた。
そんな平井氏とともに、原発を取材してきたのが『福島原発 現場監督の遺言』(講談社)を刊行したジャーナリストの恩田勝亘だ。本書は、生前に行われた平井氏との取材の様子や、平井氏が遺した言葉などから、原発の現場が抱える構造的な問題を浮かび上がらせる。
(中略)
本書が告発する原発の姿は、にわかには信じがたいものばかりだ。僕は、震災前に、「原発がどんなものか知ってほしい」を偶然発見したとき、その内容 を信じることができなかった。そこに描かれる仕事ぶりは「原発」というイメージからはあまりにもかけ離れたずさん過ぎるものだったため、逆に「アンチ原発 派による恣意的な文章なのではないか」と疑った。まさか、「原子力」などという最先端かつ危険なものを取扱っている現場に、このようなずさんな工事がある はずがない。だが、福島第一原発事故以降の東電や政府の対応を見ていると、どちらが本当のことを語っているかは自ずとわかってくる。これまで日本社会には、平井の言葉に耳を傾ける者はほとんどいなかった。そして、福島第一原発事故は発生した。
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