採取されると不都合なのか。福一原発処理水を1km先の海に放出する謎 via MAG2NEWS

国民の充分な理解が得られたとは言い難い中、2023年春の開始に向け着々と準備が進む福島第一原発の処理水海洋放出。そもそもこの処理水自体、「安全」と言い切れるものなのでしょうか。今回の『きっこのメルマガ』では人気ブロガーのきっこさんが、東電と政府が処理水の安全性に関してつき続けている「二重の大嘘」をリーク。さらにわざわざ海底トンネルを建設してまで1キロ先の沖合に処理水を放出する理由を訝るとともに、当時の首相として「自分が責任者となり汚染水問題を解決する」と宣言するも、ただの一度も対策会議を開かなかった安倍晋三氏を強く批判しています。

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しかし、これほど「反対」の声が高まっているのに、このまま計画通りに進むのでしょうか?海洋放出の決定から1年となった4月13日、福島民報社は福島県内59市町村長を対象に「海洋放出について、この1年で政府との合意形成が進んだか?」というアンケート調査を実施しました。その結果「かなり進んだ」はゼロ、「少しは進んだ」が5人(8%)で、83%に当たる49人の首長が「あまり進んでいない」と回答したのです。

「地元自治体の了解」が海洋放出の条件ですから、政府にとって、これは大きなハードルでしょう。また、4月5日には、全漁連(全国漁業協同組合連合会)の岸宏会長が岸田文雄首相と面会して「いささかも反対の立場に変わりはない」と全国の漁業関係者の声を伝えています。地元の漁業関係者も風評被害を懸念して海洋放出に反対していますが、昨年も福島沖で試験操業されたクロソイから基準値の5倍の100グラム当たり500ベクレルの放射性セシウムが検出されたのですから、すでに風評被害ではなく実害が出ているのです。

そもそも、この「風評被害」という表現は、海洋放出する自称「処理水」が、東電や政府が言うように、本当に環境へ何の影響も及ぼさない安全な水だった場合の表現です。実際には何の影響も出ていないのに、悪い噂が広まって福島の魚が売れなくなる、これが風評被害です。しかし実際は、海洋放出する前から福島沖で獲れた魚から基準値を超える放射性セシウムが検出されているのです。その上、900兆ベクレルという天文学的なトリチウムが残留した自称「処理水」を130万トン以上も海洋放出すれば、風評被害ではなく実害が出ることは自明の理でしょう。

東電は「安全なレベルまで海水で希釈してから海洋放出するので問題ない」などと説明していますが、これは完全にペテンです。どれほど海水で希釈しようとも、900兆ベクレルというトリチウムの総量は変わりません。たとえば、人間が1グラム摂取すると死んでしまう毒薬があったとします。これを水で薄めて飲めば、死ななくなると思いますか?100倍に薄めようとも、1,000倍に薄めようとも、薄めた水をすべて飲めば、その人は死んでしまうのです。

しかも、これは「トリチウムしか残留していない処理水である」という東電と政府の大嘘を鵜呑みにした場合の話です。これは、2021年4月14日に配信した第114号の「海洋放出という破綻したシナリオ」にも詳しく書きましたが、2018年8月、メディアのスクープによって、信じられない事実が発覚したのです。当時、約89万トンまで溜まっていた自称「処理水」のうち、84%に当たる約75万トンが安全基準を満たしていなかったことが発覚したのです。それも、基準値を大幅に超えたストロンチウム90、ヨウ素129、ルテニウム106、テクネチウム99などの放射性核種が次々と検出されたのです。

最も危険なストロンチウム90は、含有量の高い貯水タンクのものは1リットル当たり約60万ベクレル、なんと基準値の約2万倍でした。他の放射性核種も、基準値の数十倍から数百倍のものが数多く検出されました。これのどこが「処理水」なのでしょうか?だからあたしは、自称「処理水」と呼んでいるのです。つまりは、当時の安倍晋三首相が「汚染水処理の切り札」として鳴り物入り導入した多核種除去装置「ALPS(アルプス)」に、期待したほどの除去能力がなかったということなのです。

現在、130万トン以上ある自称「処理水」の約70%は基準値を超えており、基準値の100倍を超えるものも10万トン以上も存在します。「ALPS」の処理能力は1日500トン、3基あるので1日1,500トンですが、100万トン以上の処理水を再処理するためには、毎日増加し続ける新たな汚染水の処理と並行して行なった場合、3基をフル稼働しても3年以上は掛かってしまいます。

その上、一度の処理で基準値の2万倍も残留している猛毒のストロンチウム90が、もう一度処理しただけで基準値以下になるとは、とうてい思えません。他の放射性核種が残留している自称「処理水」も、その残留率が基準値を大幅に超えているタンクのものは、二度や三度の再処理では、基準値以下にはできないでしょう。

結局、東電と政府は、この事実にフタをして、あくまでも「トリチウムしか残留していない処理水である」「そのトリチウムも安全なレベルまで海水で希釈してから海洋放出するので問題ない」という二重の大嘘で押し切るつもりなのです。そして、いつものようにパブリックコメントの結果を無視し、いつものように地元の漁業関係者や首長の頬を札束で叩き、海洋放出を強行するつもりなのです。

東電も政府も、この自称「処理水」を「安全だ」と言い張り続けていますし、麻生太郎副総理などは「飲んでも問題ない」とまで公言しました。それなら、目の前の港湾へ放出すれば良いじゃないですか。どうして、莫大な予算をかけて沖合1キロまで海底トンネルを建設するのでしょうか?もしかすると、海洋放出している自称「処理水」を誰かに採取され、分析されると困るのでしょうか?

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こうした状況を受け、安倍首相は「汚染水問題は、今後は東電に丸投げせず、この私が責任者となり、政府が前面に立ち、完全に解決すると国民の皆さまにお約束いたします」と宣言しました。しかし、それ以降、安倍首相は6年後に政権を丸投げして辞任するまで、一度たりとも汚染水問題の対策会議をひらきませんでした。

ようするに、毎度おなじみの「無責任に言い散らかしただけ」だったのです。そして、その結果が、この「嘘に嘘を塗り重ねた海洋放出」なのです。ただでさえ、新型コロナによる収入減とウクライナ問題による物価高騰で多くの国民が疲弊しているのに、その上「アベ政治の負の遺産」まで背負わされるなんて、冗談じゃありません。

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