明石昇二郎 2020年9月19日
大変使い勝手の良くなった全国がん登録データ
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全国がん登録のデータは2015年分まで、国立がん研究センターがまとめており、データの公表も同センターのホームページ上で行なわれてきた。それが、2016年分以降の全国がん登録データからは、所管が厚生労働省へと移り、政府統計のホームページで公表されることになった。今年8月現在、2017年分のデータまで公表されている(注)。
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6年連続で胃がんが「有意な多発」をする福島県
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男女ともにさまざまな年齢層で、全国平均を上回っている年齢階級が散見される。
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その結果は【表2】のとおりである。福島県においては12年以降、6年連続で男女ともに胃がんが「有意な多発」状態にあり、それが収まる兆しは残念ながら一向に見られない。
ちなみに、米国のCDC(疾病管理予防センター)では、2001年9月の世界貿易センター事件(同時多発テロ事件)を受け、がんの最短潜伏期間に関するレポート『Minimum Latency & Types or Categories of Cancer』(以下「CDCレポート」)を公表している。これに掲載されている「がんの種類別最短潜伏期間」を短い順に示すと、
【白血病、悪性リンパ腫】0・4年(146日)
【小児がん(小児甲状腺がんを含む)】1年
【大人の甲状腺がん】2・5年
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つまり、東京電力福島第一原発事故発生から4年が過ぎた2015年以降に胃がんに罹患した福島県民約7600人の何パーセントかは、同原発事故で放出された放射性物質による汚染や被曝で健康被害を受けた人である可能性がある。しかし、そのことに気づいている当事者――被曝者であり、胃がんを罹患した被害者――は、いったいどれほどいるのだろう。
この現実に目をつぶり続け、放置することは、もはや犯罪的でさえある。福島第一原発事故が発生するまでは、福島県民の胃がんSIRは全国平均と同等か、それ以下だったのであり、その〝超過分〟に当たる胃がん患者は原発事故の被害者かもしれないという観点から、実態調査を早急に実施し、その調査結果に基づく〝被害者救済〟が図られることが切に望まれる。
【肺がんを含むすべての固形がん】4年
【中皮腫】11年
もともとは甲状腺がん罹患率が大変低かった福島県
続いて、若年層における多発が懸念されている甲状腺がんを検証する。CDCレポートに従えば、その最短潜伏期間は大人で「2・5年」、子どもで「1年」である。
甲状腺がんの年齢階級別罹患率と、それから弾き出した年齢階級別罹患数を【表4、5】として示す。若年層に限らず、20歳以上50歳以下の女性たちでも著しい増加が見られる。
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