東京電力が柏崎刈羽原発(新潟県)の核燃料装填(そうてん)に向けた検討を始めた。
同原発は、再稼働に必要な原子力規制委員会の審査を事実上終えたものの、地元自治体の同意は見通せない状況が続く。
装填後は、制御棒を引き抜けば原子炉が動かせる。通常は稼働の直前に行う作業だ。東電側からは「同意は原子炉起動までに得れば良い」との声が聞かれる。
福島第1原発事故を起こした後も、東電は、原発を抱える地域の不安や要望より経営を優先させるような対応を繰り返してきた。
同意の見通しもなく再稼働に向けた既成事実を積み重ねていくとは、地元住民を軽視する姿勢の表れと言わざるを得ない。
(略)
新潟県は現在、避難計画の実効性など3点について独自の検証を進めている。まだ時間がかかる見通しで、検証が終わるまで再稼働の可否を議論しない方針だ。原発が立地する柏崎市と刈羽村も、積極的に可否判断に動くことはないとしている。
立地自治体に限らず、原発から30キロ圏内の自治体議員らが研究会を設立し、同意が要る範囲の拡大を求める動きも出ている。
東電は、再稼働を経営再建計画の柱にしている。廃炉や賠償の費用で年間5千億円を確保する必要があり、1基の再稼働で年1千億円の収益改善を見込む。
企業再生のためとはいえ、住民の不安を置き去りにして再稼働にこだわるような手前勝手は通用しない。原発に頼る再建計画から大幅に見直すべきだ。