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「原発は儲かる。堅いシノギだな」 街の顔役だったヤクザが見せた正体とは via 文春オンライン

『ヤクザと原発 福島第一潜入記』#1

鈴木 智彦

 30年近くヤクザを取材してきたジャーナリストの鈴木智彦氏は、あるとき原発と暴力団には接点があることを知る。そして起こった東日本大震災――。鈴木氏が福島第一原発(1F)に潜入したレポート、『ヤクザと原発 福島第一潜入記』(文春文庫)より、一部を転載する。(全2回の1回目/後編に続く)

原発は儲かる

「海から固めた。まずは漁協の組合に話を通して、抜け駆けがないようまとめたんだ」

(略)

原発について質問したのは、ただの好奇心からだった。今回の来訪は20年以上前の抗争事件の取材が目的だ。

 殺し殺され、という話の核心は、祭りの翌日、事務所で訊かせてもらうことになっていた。前日入りしたのは、親分から「ヤクザは警察がいうようなごろつきじゃない。暴力団と呼ばれるのは心外だ。いっぺんうちの祭りに来い。あんたの目で確かめてくれ」と要望されたからだ。

 たまたま近くに原発があったから訊いた。座持ちのための世間話に過ぎない。

「原発は儲かる。堅いシノギだな。動き出したらずっと金になる。これ一本で食える。シャブなんて売らんでもいい。俺、薬は大嫌いだからな。薬局(覚せい剤を密売する組織をこう呼ぶ。暴力団内部でも侮蔑的なニュアンスがある)やるくらいなら地下足袋履くほうがましだ。それに原発はあんたたちふうに言えば、タブーの宝庫。それが裏社会の俺たちには、打ち出の小槌となるんだよ。はっはっは」

(略)

代紋なしでは捌ききれん

「なにも特別なことじゃない。どでかい公共工事が小さい街にやってくる。言ってみりゃ、ただそれだけのこと。ダムや高速道路と同じ。それが原子力発電所という、わけのわからんもんいうだけじゃねぇか。街を代表して電力会社と交渉し、ゼネコンと話付けて、地元の土建屋に仕事を振る。それだけじゃとても人手が足りんから、あとはよその場所にいる兄弟分なんかに話を振ったり、普段から仲のいい組長連中の会社を使う。どでかいシノギになるから、代紋なしではとても捌(さば)ききれんし、工事だって進まない。俺が何度もいうように、悪は悪でもヤクザは必要悪。百聞は一見にしかず。この祭りをみれば、あんたも分かっただろう。

 そういう情報は……真っ先に俺らのとこに入ってくるようになってる。選挙で票をまとめたのは俺たちだ。恩返しなんていうと語弊があっけど、持ちつ持たれつで生きているってこと。それに俺はこの街が好きで、街を守るためならいつ命を捨ててもかまわないと思ってる。この辺の町議会だったら、俺たちが後援すれば誰でも当選する。お前、金がないんだろ。どうだ、ここに引っ越して、うちの土建屋で何年か働いて、立候補したらどうだ?」

(略)

「原発って……安全なんですか?」

 話をそらすため質問した。ICレコーダーは回してあった。喧噪の中で上手く録音できるか不安でも、メモを取るわけにはいかない。こういう際には頻繁にトイレに駆け込む。使えると思った話があれば、便座に座り、ポケットの手帳に殴り書きする。

「原発がいいか悪いか、普通の人間にはわからんよ。電力会社が東大あたりの偉い先生を連れて説明に来る。やれ日本には石油がない、指先ほどのウランがあれば、たくさんのドラム缶に入った石油と同じだけ電気が作れる、なんて言われたら、へぇ、となる。俺らの世代は石油ショックを経験しとるから説得力があったね。

 じーさん、ばーさん連中なんて、一通り説明されれば、原発は夢工場だと思っただろう。実際、そうなんだ、この街にとっては。なにしろ国のお墨付き。偉い先生と一緒に『放射能は厳重に管理されている』と説明を受けるからみんな信用する。田舎の人間は権威に弱い。大学の先生、これが効く。

 それにちょっと考えれば、誰だって損得勘定が出来る。原発の関係会社が街にいっぱい出来て、飲み屋、飯屋にだって活気が出ると計算する。ここら一帯は元々なにもない寒村だ。国道から一本入れば砂利道ばかりで、人もいない、活気もない。金もない。若いヤツは学校を出るとすぐ都会に出て行ってしまう。それは仕事がないからだ。

(略)

俺たちは街のため、みんなのため、地元が少しでも多くの金を取れるよう努力する。それをちゃんと地元に還元する。街の人間に嫌われたらヤクザなんてやっていけない。地元密着の人気商売だから、みんなで儲けてハッピーにならないと生きてはいけない。きっちりそれを有言実行してるから、警察だって見て見ぬふりをしてくれる。それに警察だって、ほとんど俺らの幼なじみだよ。あいつらも仕事だ。上からヤクザを取り締まれと言われたら逆らえない。だからメンツは立ててやる。共存共栄。だからこうして、祭りの時にはみんなが挨拶してくれるわけだ。カタギさんを大事にしないとヤクザは生き残れない。暴対法みたいなもんができたらなおさらだろう。カタギの生き血を啜(すす)るような暴力団は消える。俺たちにとっても大歓迎だ」

 表面上、親分は頼もしい街の顔役にみえた。地域密着に関しては仰せの通りだ。が、何年も暴力団取材をしていれば、言葉のすべてを額面通り受け取るウブさは消えている。慕われているのか、怖がられているのか、その両方か、割合の判別はある程度できる。

全文は

続きは「原発は儲かる。堅いシノギだな」 街の顔役だったヤクザが見せた正体とは

「みんな狂うんだよ、金に」 福島のヤクザが「墓でがっつり」を狙ったワケ『ヤクザと原発 福島第一潜入記』#2

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