福島第一原発事故の原因を追究し続けるNHKスペシャル、現場の対策を混乱させた「調整コスト」via Wedge Infinity

「メルトダウン File.7 そして冷却水は絞られた~原発事故 迷走の2日間~」

田部康喜 (東日本国際大学客員教授)

 メルトダウンが連続して起きた福島第一原子力発電の大事故から7年。NHKスペシャルはその原因の追究を続けて、File.7(3月17日放送、3月29日午前1時~再放送予定)に至った。政府、東京電力や原子力の専門家のインタビューと事故に関するデータ分析、それに加えて再現ドラマの手法は一貫して変わらない。

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1日当たりの放射性物質の量が最も多かったのは、1号機がメルトダウンした後の3月12日である。15日に2、3号機がメルトダウンしている。しかし、量が多い二番目が20日、三番目が18日、四番目が19日である。

取材班は、量が急速に増える18日とその前日の17日の二日間に謎を解くカギがある、と考えた。インタビューの対象者は500人以上に及んだ。政府の対策本部と東京電力などがやり取りしたファックスは2万枚以上を入手した。さらに、東京の対策本部と第一原子力発電所の吉田昌郎所長らを結んだテレビ会議の内容について、人口知能を使って分析した。

原発事故がなぜ起こり、メルトダウンの連続という世界で最悪の事態に陥ったのか。それを防ぐためには今後どのような施策が必要なのか。今回のFile.7もこうした視点に立った力作である。

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「冷却が続いていると考えるのは、夢のまた夢だ」

3月17日と18日は、運命の分かれ道だったことがわかる。3号機の冷却のために、消防車を使った原子炉への注水作業が続けられた。ここで、原子格納容器内の圧力が高まった。格納容器に付随しているサブチャンと呼ぶ装置内の圧力は、通常の20倍になった。

格納容器が破壊されれば、放射性物資の大量放出につながる。東京電力の本店と現地では危機感が一気に高まった。

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「冷却水を絞る」議論が進んでいたとき、第一原子力発電所の吉田所長が集中していたのは、1号機から4号機までに設置されている計3100本の燃料棒が入ったプールの冷却問題だった。燃料プールから水が抜けて燃料棒が露出すれば、大規模な爆発状態となって大量の放射性物質が拡散する。

テレビ会議の人口知能による分析によると、17日の吉田所長の会話のうち、燃料プールに関するものが242回に及んでいるのに対して、原子炉の冷却は6回に過ぎなかった。

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危機管理の専門家は、こうした関係各所との調整による事態の悪化を「調整コスト」と呼ぶ。あるひとつの部署に説明しても、別の部署に対して再び最初から説明しなければならない状況は、時間ばかりがとられて事態の悪化を招く。

「調整コスト」は時間ばかりではない。関係各所の要請に応じて、現地の作業員たちは室外での作業に迫られた。被ばく線量は刻々と上昇する。テレビ会議の吉田所長を再現ドラマで演じた、大杉漣の言葉が胸に響く。

「部下たちに高線量をもうこれ以上浴びせられませんよ。死んでしまう。本店さんどうにかしてもらえませんか」

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