原発ゼロを実現するため、地域に再生可能エネルギーを広めたい――。そんな思いで活動する市民団体が川崎市に発足した。「原発ゼロ市民共同かわさき発電所」。中原区のマンション屋上に第1号の太陽光発電所を開設。メンバーたちは持続可能な社会へ向けた取り組みを誓い合った。
東急東横線の元住吉駅から徒歩約10分、武蔵小杉駅からも約15分。3階建てのマンション屋上に5月下旬、10人ほどが集まった。「日当たりがいいなあ」「広い場所が確保できた」。メンバーのマンションオーナーから借り受けた。ここに、164センチ×99センチのソーラーパネル100枚を設置し、年内の稼働をめざす。発電力は25キロワット。一般家庭7~8世帯分の電力だという。
設置費用は約1千万円。市民から出資を募るほか、借り入れや寄付でまかなう。地域の商店街で「地域債」を発行することも検討中。電力を売ることで得られる収入は出資者へ還元するなど、地域に貢献できる仕組みを考えたいという。
メンバーは約30人で3月末に発足した。弁護士や環境問題に取り組むNPO、経営アドバイザーや建築関係者、看護師、子育て中の主婦など職業はいろいろ。30~40代が主力だ。昨年の夏から勉強会を開き、各地の取り組み例を学んできた。
発起人の川岸卓哉さん(29)は弁護士になって3年目。福島第一原発事故で被災した住民の集団訴訟にかかわっており、月に2、3回は福島に通う。「福島を応援するためにも、それぞれの地域で再生可能エネルギーを普及させたい。それが脱原発へつながる道だと思います」
川岸さんは2011年3月の東日本大震災後、仲間と「原発ゼロ」を訴える集会を毎年3月に川崎市内で開いてきた。翌12年は1600人が集まったが、13年は1400人、今年は1200人。「風化を感じざるを得ない。原発反対を訴えるだけではだめだ」と実感したという。
昨年たまたま訪れたドイツで、チェルノブイリ原発事故後に市民が送電網を買い取り、再生可能エネルギーを供給する電力会社をつくった町があることを知った。太陽光や風力、バイオマス発電などできちんと地域に利益が還元できる仕組みをつくっていた。日本でもこうした取り組みが必要だと思った。
「市民の力で、市民のために電力の使い方を決める。市民の意識を変えていく可能性を秘めている」と川岸さん。市民が先例をつくり、行政にも働きかけていくつもりだ。
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