安倍首相は今年2月の施政方針演説で、「安全が確認された原発は再稼働します」と明言。これを受け6月5日に公表された自民党の成長戦略 の素案には、「安全性が確認された原発の活用」との項目が入った(6月5日・毎日新聞)。しかし東電福島原発事故はいまだ収束せず、多くの人が避難したま まで、賠償費用や事故処理費用は膨大な額にのぼる。原子力関連施設の立地によって地域経済は一時的に潤ったが、ひとたび事故が起きれば取り返しのつかない 被害をもたらす。地域の持続可能な道はどこにあるのか。青森県六ケ所村と岩手県葛巻町で現地調査を行っている岩手県立大学の茅野恒秀さんに話を聞いた。 (聞き手=編集部・温井)
◆六ヶ所村の現地調査をされてきました
まず六ヶ所村の核燃料サイクル施設ですが、ウラン濃縮工場、低レベル放射性廃棄物埋設センター、そして核心的な施設としての再処理工場があります。再処理工場は使用済み核燃料を再処理してプルトニウムとウランを取り出す施設です。
また、再処理工場の稼働に付随して高レベル放射性廃棄物が生み出されます。六ヶ所村にはすでに日本の電力会社が海外に再処理を委託した結果発生した高レベル放射性廃棄物も運び込まれています。
これら3つの施設は1985年から建設されており、3兆円を超える投資が行なわれています。青森県の資料によると、ウラン濃縮工場の建設費が約 2500億円、低レベル放射性廃棄物埋設センターが約1600億円です。特に再処理工場は電事連によれば3兆3000億円を超える建設費がかかるとされて います。
その建設費の多くは東京に本社を置く大企業に流れますが、それを支える下請け、孫請け、ひ孫請けの会社にも当然流れます。つまり六ヶ所村内、あるいは青森県内の企業にも相当な額のお金が落ちているということです。
(略)
◆村の財政構造はどう変化したのですか
財政規模ですが、村の予算は1995年頃から毎年のように年額100億円を超えています。村の人口は多少増減はありますが、約1万1千人で推移しています。この人口で100億円の財政規模となると、村民1人当たり約100万円の予算が組まれていることになります。
ちなみに日本の人口約1億2500万人で1人当たり100万円の予算を組むと125兆円の国家予算が必要になります。日本は現在、約90兆円の国 家予算となっていますが、その半分近くが国債の発行によるものです。国家財政に入る直接的な税金収入は約40兆円。したがって六ヶ所村は1人当たりでいう と国家予算の3倍もの税収を確保できているわけです。
オンライン版全文は原発マネーに依存しない地域資源を活かした戦略へ 青森県六ケ所村と岩手県葛巻町の比較から 岩手県立大学総合政策学部准教授・茅野恒秀さん
インタビュー全文はActio本誌1338号。
<建設業を維持するための宅地開発>
<六ヶ所村と同じ構造の東通村>
<住民が求めているのは雇用の確保>
<建設業が再生可能エネルギーに参入>
<第一次産業に力を入れた岩手県葛巻町>
<マネーの地域内循環をどう実現するのか>
<国に依存しない持続的な地域戦略を>