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◆温室ガス実質ゼロ宣言なのに原発、ずっこけた
―2050年までに温室効果ガス排出を実質ゼロにする、と政府は昨年10月に宣言しました。どう感じましたか。 ようやくっていう感じがして、めちゃくちゃうれしかったです。けど、どう達成していくかで、安全最優先で原発を進めるって言っていて、ずっこけたというか。福島の原発事故以降、原発を減らそうとする動きは増えていて、私は「自然だな」と思うんですけど。使用済み核燃料の問題が残っていたり、安全基準が高くなったのでコストも膨らんでいる。そういう状況で原発を続けるって、すっごく不可解だと思っていて。
「原発は超クリーンなエネルギーですよ」っていう反発がきたときには、何を読んでそう思ったのかを聞いてみています。確固たる思いには、裏付ける理由があって、それを知ったら私も考えが変わるかもしれないし、自分も違うもの出してみたら相手の考えが変わるかもしれない。
◆アーティストとして、自分が一番好きなことに向かいたい
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―2017年の武道館コンサートを機に、「いま登っている成功者の山とは違う山を登ろう」と考えたとも聞きました。気持ちの変化があったんですか。 武道館のときは、たぶん2合目くらいしか登っていないんですけど、後に待ち構えているステップみたいなものは見えていて。ドームでやったり、ずっと(音楽)チャートに入って、今までの曲も歌い続けて、新曲も出してって思ったときに、あんまり興味がわかなくなってしまったんですよね。山を2合目以上登る気がなくなっちゃったっていう感じでした。 違う山でイメージしていたのは、音楽とか表現についてだけなんですけど、一番自分が好きなことに向かいたいなって思いました。
◆発言 「え、そうかな」って思っている人たちに伝えたい
―政治的な発言についての気持ちは、どうですか。 コロナのころからすごく変わった気がします。いろんな方が発言されてるし。私自身は、すごく勉強不足だって思いました。NPOとかNGO、研究機関の人たちと、発信力がある人たちとで、普通に友だちとして行き来があると面白いのかな。講座とか勉強会が自然に生まれたりとか。
(日本は)社会的な発言をしないことが、かっこいいとされているかもしれないですけど、私は、人間としての魅力はそっちの方が低いと思っていて。 批判が来ることも、私にはないインパクトだから、うらやましいというか。発言って、「絶対そうだ」と思ってくれる人に届けたかったわけじゃないと思うんですよ。「え、そうかな、どうかな」って思っている人たちに伝えたかったはずだから、反発が起きても自然だと思うし。反発している人以上に、何にも言っていない人たちは、意見があったことで「そうなんだ」って思えた気がするから。
◆将来ぼーっと暮らせるように、今騒いだ方がいい
―2050年には、どんな社会になっていてほしいですか。
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そのために今は騒いだ方がいいなって。一人一人が企業や政府に署名や手紙を送ることが結果的に大きな効果を生む。「この商品すごく好きなんだけど、ここはすごく気に入らないから、良くしてほしい」みたいな。森林破壊されて作られている食物とか。 「これが嫌でやめます」って伝えるのも、意味があると思います。それって日本人は苦手で、私もすっごく苦手。お互いが出し合っているカード(意見や考え)を否定しても、相手の人格批判になってはいけない。そういう教育がもっとあったらいいな。
◆若者に危機感、日本でも
コムアイさんが気候変動問題を重視し始めたきっかけの一つは、スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさん(18)が2019年9月、国連で、各国の対策の不十分さを指摘した演説だった。グレタさんに共感する若者らの活動「Fridays For Future(未来のための金曜日、FFF)」は日本各地にも広がっている。 日本では、温室効果ガスの排出実質ゼロを目指す政府の昨秋の宣言を受け、官民の取り組みの話題が増えた。FFF鹿児島メンバーの大学生中村涼夏さん(19)は「脱炭素という言葉が会話で通じるようになったのは進歩」と語る。 FFFが3月19日に行った「世界気候アクション」では、チラシ配布などに協力する飲食店や衣料品店もあり、変化の兆しはあるが、路上スピーチの際には素通りする人が多く、社会の大きな変化は感じられなかったという。FFF京都の大学生中野一登さん(19)は、「すぐに行動を変えなきゃという動きにはなっていない」と危機感を口にした。