「黒い雨」相談利用者が急減 被害者「国は死を待たず救援急いで」via 毎日新聞

米軍による原爆投下後に広島市や周辺に降った放射性物質を含む「黒い雨」について、援護対象区域外で浴びたと訴える人を対象にした国の相談支援事業の利用者が急減している。開始時の2013年度には半年で300人を超えたが、18年度は6分の1の50人で、国は高齢化による対象者の減少などが一因とみている。市などは独自の調査結果を基に雨の地域をより広く考え、広島市長の平和宣言では今年も含め10年連続で援護対象区域の拡大を要望しているが、国は応じていない。被爆者としての援護を求める体験者らは、早急な実現を訴えている。

 黒い雨の実態は不明だが、国は爆心地から北西に長さ19キロ、幅11キロを大雨が降ったと認め、1976年に援護対象区域に指定。区域内にいた人は被爆者と同じ健康診断を受けられ、がんなどになれば被爆者健康手帳が取得できる。

ただ、区域外でも黒い雨による健康被害を訴える人は多く、市と広島県は08年、住民約3万7000人を対象に調査を実施。国の援護対象区域の6倍相当の地域に雨が降ったと結論付けたが、厚生労働省の検討会は「原爆由来の放射性降下物が存在した明確な根拠が見いだせない」として区域拡大を認めなかった。

厚労省は13年10月、健康被害の訴えは「精神的不安に起因」などとして、不安軽減の相談支援事業を始めた。国が費用を負担し、市と県が医師らによる健康相談などを受け付ける。市によると、延べ利用者数は▽13年度(6カ月)316人▽14年度150人▽15年度104人▽16年度98人▽17年度73人▽18年度50人。厚労省の担当者は「不安が解消した人が一定数いたことに加え、高齢化で体験者自体が少なくなった影響もあるのでは」と分析する。

市と県は一貫して援護対象区域の拡大を求め、松井一実市長は6日の平和宣言でも言及した。式典後の「被爆者代表から要望を聞く会」では「国は黒い雨被害者が死ぬのを待つのではなく、現実をみて救援を急いでほしい」と訴えがあったが、根本匠厚労相は従来の立場を変えなかった。

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