<社説>3・11から11年 避難者の人権は画餅か via 東京新聞

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 根本さんは、東京電力福島第一原発から三十キロの福島県沿岸の地域に住んでいました。二〇一一年三月、爆発した原発建屋から煙がわき上がる瞬間を見た根本さんは放射能の恐怖におびえながら県境を越え、約二百五十キロ離れた新潟市に避難します。 そこで立ち上げたのが、避難者を支援する団体「スマイルサポート新潟」です。支援対象は大半が自分と同じように母子だけで避難した自主避難者でした。

◆コロナ禍、生活苦の悲鳴

 国が定めた避難指示区域外からの自主避難者には、原発周辺の双葉や大熊、浪江町など強制避難地域の人たちのような東電からの賠償はありません。生活費は持ち出し。夫は妻子に仕送りするため福島に残って働く。切り詰めた二重生活に耐えてきた人たちも、コロナ禍で一気に困窮しました。 二十四時間対応の根本さんの相談電話には助けを求める連絡が頻繁に入ります。「食べるものがなくて」「仕事がなくなった」「コロナで陽性になった」。皆、身近に頼れる人がいないのです。 寄付で集めた食糧を配ったり、送ったり。月数件だった相談は多い月で五十件以上に増えました。命が危ないと感じれば、根本さんは夜中の雪道でも駆けつけます。活動には福島県から助成を受けていますが、支援物資の送料も膨らんで資金難です。日本中がコロナ禍に苦しんでいますが、原発事故で壊された生活が、さらに追い詰められていることは分かってほしい、と根本さんは訴えます。 福島県によると、原発避難者はピーク時に県内外で約十六万四千人いましたが、今年三月時点では約三万三千人です。新潟県への避難者も約七千人から約二千人に減りました。自主避難者の統計はありませんが、スマイルの支援先でも帰還する人が増えています。 背景にあるのは、放射線量低下を理由に福島県が一七年三月、災害救助法に基づく借り上げ住宅の無償提供を打ち切ったことです。生活費や教育費に加え、新たに家賃まで負担することは難しいとして、避難をあきらめたのです。 自主避難者が古里を離れたのは放射能の影響を避けたかったからです。根本さんの故郷の家も、裏山が除染されず放射線量は高いまま。やむなく新潟に中古の家をローンを組んで買ったものの、その選択が正しかったのか。根本さんは「いつも先が見えなくて、手探りです」と苦笑します。

◆社会の冷淡、政治が助長

 原発事故がなければ苦労することもなかった自主避難者に、日本社会は冷淡です。「勝手に避難した。困窮は自己責任」「いやなら福島に帰れ」。心ない言葉がネット上にあふれます。 「避難するならご勝手に」と言わんばかりに自主避難者を顧みない政府の姿勢が、社会の冷たさを助長してはいないでしょうか。 福島県は一部地域を残して避難区域を解除し帰還を促しています。撤去方針が示された放射線量測定のモニタリングポストは街中に存続することになりましたが、事故から十一年を経ても避難を続ける人は、「復興」を掲げる政府には不都合な存在なのでしょう。 原発事故の翌一二年には、当時野党だった自民党も含む全会一致で「子ども・被災者支援法」が成立します。無用な被ばくを免れる「避難する権利」が明記された画期的な法律でしたが、政府は限られた支援策しか基本方針に盛り込まず、同法は骨抜きにされます。逃げる権利を担保する仕組みもつくられず、放置されたままです。 人権は、それを守る仕組みが伴わなければ、絵に描いた餅にすぎません。避難した選択を自己責任と片付け、何も公的に支援しないのでは、避難する権利が「ある」状態とは言えないのです。 国連の人権機関も、古里から避難する、しないにかかわらず、住民の被ばくを避ける方策をとるように日本政府に勧告しました。

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◇                                                                                                                     2022年3月15日 東京新聞論説主幹様

3/9の社説「避難者の人権は画餅か」、ありがとうございました。

自主避難者に心を寄せた素晴らしい論考でした。

ところでお手紙しましたのは、内容に関して一点お聞きしたいことがあるためです。

質問は以下の通りです。

「子ども・被災者支援法」について「『避難する権利』が明記された(画期的な法律)」と書かれていますが、『避難する権利』という字句は、同法のどの部分にどのように明記されているのでしょうか?

ご多用中恐縮ですが、ご教示をお願いしたく、メールかお手紙での返信をお待ちしております。どうぞよろしくお願い致します。

市民が育てる「チェルノブイリ法日本版」の会

◇ 3月9日付東京新聞の<社説>3・11から11年 避難者の人権が画餅かを受けて、本会(市民が育てるチェルノブイリ法の会)正会員で、琉球大学名誉教授の矢ヶ崎克馬氏の意見を紹介します。 
 以下、「子ども被災者支援法」に関して、チェルノブイリ法との比較メモです。
チェルノブイリ法では放射能被曝の危険性の認識、人権に基づく危険からの防護に関する認識が前文で明示されています。

チェルノブイリではどのように人権を守ろうとしたか⇔日本では統治的感覚で「権利無し」 汚染地域の法制度に関するウクライナ国家法A チェルノブイリ原子力発電所事故は、ウクライナの広範な地域において、人々の健康及び自然環境に対し、放射性物質による極めて危険な状況を生み出した。・・・かかる災害の被害対策は、放射性物質による異なる地域の法制度の法的な定義及びその法制度の確保を目的とする施策次第である。本法律は、地域の然るべき区域への区分に関する問題、その利用及び保護制度、住民の居住及び活動条件、かかる区域における経済、科学研究及びその他の活動を定めるものである。本法律は、人の健康及び環境システムに対する放射線による影響を削減することを目的として、かかる地域の利用及び保護制度の確保を定め、保障する。    社会的保護に関するウクライナ国家法B チェルノブイリ激甚災害は数百万人の人々に惨禍をもたらした。広範囲に及ぶ多くの地域において全く新しい社会的経済的状況が生まれ、ウクライナは環境災害地域に指定された。チェルノブイリ激甚災害被災者に対する実効性ある福祉システムの構築のために、あらゆる財源、膨大な物資と先端科学を総動員する必要がある。 この法律は、チェルノブイリ激甚災害被災者に対し、憲法で保障する生存権に関する総則を定め、放射能汚染地域区分設定の統一規則と該当地域における居住・労働条件を定め、被災国民のための社会福祉制度を構築するものである。 子ども被災者支援法
   「権利」保護意識無し(1msv/年 法律無視)⇔統治
   (文言に)科学的に十分に解明されていない云々
        ⇒はじめから放射線被曝の健康被害を不透明化し,健康被害を
         免れる人権を無視する観点を明示
    具体的汚染基準無し・具体的施策無し
 (目的) 第一条  この法律は、「東京電力原子力事故」により放出された放射性物質が広く拡散していること、当該放射性物質による放射線が人の健康に及ぼす危険について科学的に十分に解明されていないこと等のため、一定の基準以上の放射線量が計測される地域に居住し、又は居住していた者及び政府による避難に係る指示により避難を余儀なくされている者並びにこれらの者に準ずる者(以下「被災者」という。)が、健康上の不安を抱え、生活上の負担を強いられており、その支援の必要性が生じていること及び当該支援に関し特に子どもへの配慮が求められていることに鑑み、子どもに特に配慮して行う被災者の生活支援等に関する施策(以下「被災者生活支援等施策」という。)の基本となる事項を定めることにより、被災者の生活を守り支えるための被災者生活支援等施策を推進し、もって被災者の不安の解消及び安定した生活の実現に寄与することを目的とする。 (基本理念)第二条 ・・   2  被災者生活支援等施策は、被災者一人一人が第八条第一項の支援対象地域における居住、他の地域への移動及び移動前の地域への帰還についての選択を自らの意思によって行うことができるよう、被災者がそのいずれを選択した場合であっても適切に支援するものでなければならない。

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