シンポジウム“復興の人間科学2021”『福島原発事故10年の経験から学ぶ』~当時小学生だった若者達との対話から via 早稲田大学人間総合研究センター+ ある避難者による感想と報告

原発事故による避難生活という過酷な人生体験を小学生の時期に経験した被災者は、今年で17歳〜22歳となります。 現在大学生となった被災当事者は、あの震災をどう受けとめ,またこの10年間をどのような社会経済状況におかれ、どのような心理状態で、どのように思考を重ね、どのように生き抜いてきたのでしょうか。 […]

[第1部.被災当事者学生による講演] 被災当事者学生5名(双葉町・福島市・郡山市・いわき市出身)による講演:「原発事故10年の経験/いま考えること」

【第2・3部】金菱清「現在大学生になる被災当事者との対話から私たちは何が学べるか」・パネルディスカッション

【第4・5部】萩原裕子「被災当事者の語りに耳を傾け学ぶことの意義」・シンポジウムのまとめ

会場で一部始終を見届けた一避難者のレポートと感想です。

8時間に及ぶシンポジウム。
中でも避難大学生の講演とパネルディスカッションは圧巻でした

①Kくん:19歳、避難元は福島県いわき市、避難先は都内。
都内に避難後、「福島からの避難者」というだけでいじめを受けた。

避難者はスクールカーストの底辺であるという表現にショックを受けた。
特筆すべきは、その避難者の中ですらいじめが起こっていたという話。

そうした経験から不登校になり、救いを求めローマ教皇に手紙を出したところ、謁見が実現。
手紙を出すという自身の小さな行動が、ローマ教皇との謁見に繋がった事実から、「発信する事」の大事さを学び、福島の原発事故のリアルと自身へのいじめの体験を発信し、二度と同じ悲劇を繰り返さない社会にしていきたいと講演活動を始めたそうです。

②Aさん:20歳、避難元は福島県福島市。
原発事故後、山形、北海道、福島県喜多方市、沖縄を経て京都へ避難後、現在は都内の大学に在学中。

AさんはもまたKくん同様、避難先の学校でいじめに遭う。
そのため必死で関西弁を習得しつつ、みんなに馴染もうと努力。

また、福島のことや避難について発信したところ、発言内容についてのバッシングを受けたことから、発信する際の言葉の選び方などについて「誰も傷つけないよりよい伝え方」を探しているそうです。

③Uさん:20歳、避難元は福島県双葉郡双葉町。
原発事故後、栃木を経由し、埼玉へ避難。

Uさんもまた避難先でいじめに遭い、担任に相談するも向き合ってもらえず人間不信に。
その後不登校になり、通信高校へ。

そうした中、仏教に出会い、仏教が学べる大学へ進学。
少しずつ心の傷と向き合いつつも、まだまだ心は完治しておらず、現在も休学中。

④Tくん:19歳、避難元は福島県郡山市。
原発事故後、神奈川に避難し、現在は都内の大学に通う。

多くの避難者が孤独に避難している中、Tくんは仲の良かったご近所さんともども避難していることから孤立感を感じることなく、スムーズに避難先にもなじめた。

母親が立ち上げた避難者同志のカタリバに関わる中、学習支援を受けていたことから、自身もまた同じ境遇の子どもたちに寄り添いたいと学習支援をしている。

⑤Kさん:21歳、避難元は福島県福島市。
原発事故後、大阪を経て京都に避難し、京都の大学に通う。

放射能汚染から「みんな」ではなく、「自分たちだけ」が避難をすること、また、避難先では、「福島からの避難を隠さなければならなかったこと」に疑問を持つ。
高校生の時、日韓高校生交流での体験から国を越えた交流に関心を寄せる。

大学生になってからも日韓青少年交流キャンプに参加をし、そこで原発事故避難者としてのスピーチをした際、韓国の若者が関心と心を寄せてくれたことに感動するとともに「発信すること」の大事さを実感。

しかし原発事故当時の混乱と理不尽さはトラウマとなっており、当時の話をすると感情が乱れてしまう。
今回の参加も当初はZOOM参加を考えていたが、現地で生の声を伝えたいと参加を決めた。

5人の大学生の発言内容のレベルの高さが半端なく高いことに驚きを隠せませんでした。
その理由を私なりに分析をすると、彼らの10年は、同年代が20-30年でゆっくりと経験することを多感期な10年でぎゅっと経験をしてしまったからではないか?

そこには当然歪みが発生する。
見た目は子どもでも、知識や思考は大人。

そうしたギャップや、避難先の保護者の不勉強さ、無関心さが複雑に絡み合うことで彼らへのイジメが発生したのではないか?
そんなことが想像されるような彼らの冷静かつ的確な分析に、驚くとともに、胸が締め付けられ、そして、勇気をもって発信したことを称賛したいと思いました。

それと同時に、彼らが名前を出して発言していることから、こうした発信が「再び彼らを追い詰めないよう」、私たちは細心の注意を払い、きちんとフォローしていくこともまた次世代を育てていく上で最も大切なことだと感じました。

最後に、主催者のおひとりである早稲田大学辻内先生からのメッセージです。

「様々な意見をお持ちの方がいらっしゃると思いますが、話し合いや議論のキッカケになることを望んでいます。誹謗中傷など、人を傷つける心ない対応のなきようお願いいたします。」

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