Tag Archives: 東京電力

「チャレンジャー事故」と重なる…原発事故の実態が刑事裁判で判明 via Aeradot

 未曽有の被害をもたらした福島第一原発事故。東京電力旧経営陣の責任を問うた裁判で、「無罪」が言い渡された。ただ裁判では、事故調査委員会が明らかにできなかった事実も判明した。AERA 2019年10月7日号に掲載された記事を紹介する。 【図表で見る】判決の骨子やこれまでの経緯はこちら *  *  * 東京電力の勝俣恒久・元会長、武黒一郎・元副社長、武藤栄・元副社長の旧経営陣3人が、福島第一原子力発電所事故をめぐって業務上過失致死傷罪で強制起訴された刑事裁判で、東京地裁は9月19日、全員に無罪を言い渡した。 「津波予測はまだ信頼性が高くなかった」として無罪を導いた裁判所の論理は、ずいぶん雑で腑に落ちないものだったが、その結論は置くとしても、裁判の過程で驚くべき新事実が次々と掘り起こされ、刑事裁判の威力を見せつけられた。  政府や国会の事故調査委員会は2012年までに報告書を公表していたものの、裁判が明かした事故の真相には、到底迫れていなかったからだ。 (略)  東電社員、地震の研究者、原子力安全・保安院の役人ら21人が証言台に立ち、証言と並行して、関連する会合の議事録、電子メールなどの証拠類が、法廷に2台設置された65インチのディスプレーに次々と映し出された。これらは、数カ月後には民事裁判にも送られ、裁判所内で閲覧もできるようになったので、詳しく読み解くことも可能になった。  私は国会事故調の協力調査員として報告書作成にもかかわり、その後も文書開示請求を使ったり、関係者にインタビューをしたりして、何年も取材を続けている。この分野には詳しいつもりだった。  ところが、刑事裁判では、強制捜査の権限を持つ検察の情報収集力のすごさに圧倒された。知らないことが山のように出てきたのだ。  驚いた事実の一つは、東電の技術者たちは、事故3年前の時点で「津波対策は不可避」という意見で一致していたことだ。  技術者たちが「対策不可避」と判断したきっかけは、政府の地震調査研究推進本部(地震本部)の予測だ。岩手・宮城県沖で発生した明治三陸地震(1896年)と同じような津波が福島県沖でも起こりうるという予測を、地震本部が02年7月に発表していた。  津波担当の社員は、この予測に基づくと福島第一の津波の高さは、敷地の高さ(10メートル)を大きく超える15.7メートルになることを08年3月までには計算し、対策着手を提言していた。しかし被告人の武藤氏は「研究しよう」と言っただけで、すぐには対策を始めなかった。そして経営陣は、09年6月に予定されていた対策締め切りを16年まで延ばし、事故当時まで結局、何もしていなかったのだ。 武藤氏が対策を保留にした08年7月の会合の様子について、検察官役の指定弁護士に問われた津波担当の社員は、こう証言した。 「それまでの状況から、予想していなかった結論に力が抜けた。(会合の)残り数分の部分は覚えていない」(18年4月、第5回公判)  この裁判で、最も印象に残る場面だ。 (略) シャトル事故の数カ月後の調査報告書には、技術者の実名入りで、そんなやりとりが記載されている。しかし日本では、事故から7年も経過して、刑事裁判でようやく明らかになった。(ジャーナリスト・添田孝史) ※AERA 2019年10月7日号より抜粋 全文は「チャレンジャー事故」と重なる…原発事故の実態が刑事裁判で判明

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指定弁護士側が控訴=旧経営陣「無罪」に不服-東電原発事故 via Jiji.com

 東京電力福島第1原発事故をめぐり、業務上過失致死傷罪で強制起訴され、東京地裁で無罪判決を受けた元会長勝俣恒久被告(79)ら3人について、検察官役の指定弁護士は30日、判決を不服として東京高裁に控訴した。 指定弁護士は「判決は結果回避義務という重要な論点の判断を回避し、(巨大津波の)予見可能性を否定した」などとするコメントを発表。 (略) 地裁は19日の判決で、「事故を回避するには原発の運転を停止するほかなかった」と判断。その上で、勝俣元会長や、いずれも元副社長の武黒一郎(73)、武藤栄(69)両被告には「停止義務を課すほどの巨大津波の予見可能性はなかった」と述べ、全員の刑事責任を否定した。 全文は指定弁護士側が控訴=旧経営陣「無罪」に不服-東電原発事故

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福島事故、問われた「15.7m津波」 裁判で科学者は via 朝日新聞

東京電力の旧経営陣に無罪判決が出た福島第一原発事故をめぐる強制起訴裁判では、地震や津波をめぐる科学の扱いも焦点になった。何人もの研究者が法廷で証言し、自然災害への対策のあり方が問われた。東電が、国の審査にかかわる専門家の発言を重視し、根回しに動いた状況も判明した。 最大の争点の一つは、東電が2008年に15・7メートルの津波を計算しながら対策をとらなかった点だった。 この計算は、国の地震調査研究推進本部(地震本部)が02年に公表した「長期評価」に基づき、東北のどこででも大きな津波に見舞われる可能性を示していた。原因となる地震が福島沖で発生した例は知られていないものの、過去400年に3回の津波があり、繰り返しているとみられた。 東電の担当者らは、長期評価は「権威ある機関」の見解で、無視できないと考えていた。裁判で検察役の弁護士は、多くの専門家が関わった唯一の公的な見解であることを重く見た。一方、被告側は評価に異論があったこと、地震の歴史記録にはあいまいさがあったなどと主張した。 長期評価のまとめ役だった東京大の島崎邦彦名誉教授は「理学では、ほかの人の言わないことを言うことに価値がある」と地震研究者の特徴を説明し、ざっくばらんに意見を出してもらって合意した最大公約数の結論だったと証言。近代観測が始まる前の古文書にしか残っていないような地震も知見として扱う重要性も強調した。 (略)  実際、東電以外の電力事業者には、長期評価を前提に対策に着手していた事業者があったことが公判で判明した。日本原子力発電東海第二原発(茨城県)は、津波が敷地に入ってこないように盛り土をしたり、建物に水が入らないよう扉を水密化したりしたと当時の社員が証言した。 予見すべきだったのは実際に東日本大震災で起きた津波か、敷地の高さである10メートルを超える津波かも争われた。実際の津波は敷地の東側から来たが、15・7メートルの予測は主に南側からだった。被告側は、仮に対応する防潮堤を造っていたとしても、東側からの津波は防げなかったと主張した。 これに対して判決は、被告側の主張する津波の予見までは不要とした。津波が敷地の高さを超えれば、建物が浸水して原子炉が冷却機能を失うことは予見可能とし、10メートルを超える津波を予見できたかどうかで判断した。 審査委員、対策の保留に理解も 国は08年当時、原発の地震対策を最新の知見で見直して報告するよう事業者に求め、内容を原子力安全・保安院と原子力安全委員会の専門家が公開で審査していた。 「審判がだめだと言っているのでやっかい」。東電の担当者は法廷でこう証言した。審判とは、保安院の審査の委員で津波工学が専門の今村文彦・東北大教授。08年2月に面談した際、長期評価の考慮を求められたことを気にしていた。7月、武藤栄・元副社長が15・7メートルに応じた対策を保留にすると、今村氏ら複数の専門家を回り感触を探った。 (略) 社内の記録には、専門家4人の感触が「◎◎○△」の評価とともに残る。すぐに対策を取るよう求めた専門家はいなかった。今村氏は「◎=異論なし」。担当者は以前の反応との違いを意外に感じたというが、法廷で今村氏は「長期評価は検討はすべきだが、直ちに取り入れる知見ではなかった」と証言した。 「△=否定的」だった高橋智幸・関西大教授は「(長期評価を取り入れないなら)理由をきちんと示す必要がある。一般の人に説明しなければならない」と応対していた。担当者は「非常に緊迫したムード」と記していた。 担当者はさらに、保安院の主査だった地震学者の阿部勝征・東京大名誉教授(故人)も訪ねた。阿部氏は「地震本部がそのような見解を出している以上、事業者はどう対応するのか答えなければならない」と説明責任を求めた。その上で「対策を取るのも一つ。無視するのも一つ。ただし、無視するためには、積極的な証拠が必要」として、過去の津波堆積(たいせき)物がないことを調べる手段を例示した。 (略)  公判では、東電と東北電力、日本原電などの担当者が、互いの原発への影響が小さくなるよう、長期評価や貞観地震の想定方法や文書表現を調整していたことも明らかになった。 実際に起きた津波は、長期評価の津波地震と貞観地震の特徴を兼ね備えていた。判決は、専門家も国も、原発の運転停止を求めなかったことを無罪の理由に挙げた。ただ、津波をめぐる東電の報告書は国に提出されず、議論されないまま。広く社会に説明したわけでもなかった。 (編集委員・佐々木英輔) 全文は福島事故、問われた「15.7m津波」 裁判で科学者は

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過酷避難「原発事故は人災」 両親亡くした女性「報いて」via 中日新聞

原発事故の刑事責任が認められるか否か、息をのんで見守るのは、事故後の避難で両親を失った福島県広野町の女性(66)だ。「裁判所は、亡くなった犠牲者と遺族の苦しみに報いる判決を言い渡してほしい」と願う。  二〇一一年三月当時、女性の父親=当時(92)=と母親=同(88)=は、原発から約四・五キロの老人介護施設「ドーヴィル双葉」(同県大熊町)に入所していた。 (略) ドーヴィル双葉と系列の双葉病院には震災当時、計四百三十六人が入所・入院。全員の避難までに五日かかり、衰弱するなどした四十四人が死亡。勝俣元会長ら三人は、避難を余儀なくさせて死亡させたとして起訴されている。 女性の両親は、施設に三日間置き去りにされた後、バスで二百三十キロもの移動を強いられ、同県いわき市の避難所で息を引き取った。 女性は「どうして両親が死ななければならなかったのか知りたい」と十回以上、東京地裁で公判を傍聴。しかし旧経営陣三人は「聞いてない」「記憶にない」と繰り返すばかり。女性は「あれほどの事故を起こしながら人ごとのよう。何らかの対策を取っていれば事故は防げた」と唇をかむ。 女性は十九日の判決公判も傍聴に行くつもりだ。「原発事故は明らかに人災。誰も責任を取らないことが許されるのか」。三人が責任をどのように自覚しているのか、判決が言い渡されたときの表情から見定めたいと思っている。 (小野沢健太) 全文は過酷避難「原発事故は人災」 両親亡くした女性「報いて」

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原発事故、津波の予見性焦点 東電旧経営陣に19日判決 via 日本経済新聞

福島第1原子力発電所事故を巡り、業務上過失致死傷罪で強制起訴された東京電力旧経営陣3人の判決が19日、東京地裁(永渕健一裁判長)で言い渡される。巨大津波を予見し、有効な対策を取ることができたかが争点。禁錮5年の求刑に対し、旧経営陣側は無罪を主張している。未曽有の原発事故の刑事責任が問われた裁判で、どのような判断が下されるのか。 強制起訴されているのは勝俣恒久元会長(79)、武黒一郎元副社長(73)、武藤栄元副社長(69)でいずれも「事故を予見するのは不可能だった」などと主張している。 2017年6月に始まった公判には、東電関係者や専門家ら20人超が証人として出廷した。太平洋側の日本海溝沿いで巨大地震が発生しうるとした政府の地震調査研究推進本部の長期評価(02年公表)や、津波の対策に関する社内での議論の経過について証言した。 (略) 指定弁護士は長期評価は科学的知見に基づき、高い信頼性があったと主張。08年6月、長期評価に基づく最大15.7メートルの巨大津波の試算を報告された武藤氏が対策検討を指示したが、その後方針を転換した点を挙げて「対策を先送りした」などと批判している。 指定弁護士は当時会長の勝俣氏らが出席した09年2月の会議でも担当幹部が14メートル程度の津波に言及しており、3人は巨大津波と原発事故を予見できたと指摘。「積極的に情報を集めて的確に対策を実行すれば事故は防げた」などと訴えている。 旧経営陣は「長期評価は信頼性がなく、対策を取る根拠としては不十分だった」などとして、巨大津波は予見できなかったと主張。実際に原発を襲った津波は試算を上回り、試算に基づく対策を取っていても事故は防げなかったとしている。 原発事故を巡り、東京地検は旧経営陣3人を嫌疑不十分で不起訴としたが、検察審査会が14年に「起訴相当」、15年に「起訴すべきだ」と議決し、指定弁護士が16年2月に強制起訴した。検察当局が起訴を見送った事件で有罪を立証するハードルは高いとされ、強制起訴に至った事件での有罪は2件にとどまる。 全文は原発事故、津波の予見性焦点 東電旧経営陣に19日判決

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「Fukushima 50」特報公開 緒形直人、火野正平、萩原聖人、吉岡里帆、斎藤工ら豪華キャスト参加 via 映画.com

[映画.com ニュース]2011年に発生した東日本大震災、福島第一原発事故を描く映画「Fukushima 50」に、緒形直人、火野正平、平田満、萩原聖人、吉岡里帆、斎藤工、富田靖子、佐野史郎らが出演していることがわかった。あわせて、特報とティザービジュアルもお披露目。全世界を震撼させた未曽有の悲劇が圧倒的なスケールで描かれ、発電所で戦い続けた人々の熱い思いが垣間見える映像となった。 原作は、ジャーナリスト・門田隆将氏が90人以上の関係者への取材をもとにつづったノンフィクション本「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発」(角川文庫刊)。11年3月11日午後2時46分――マグニチュード9.0、最大震度7という日本の観測史上最大の地震が発生し、巨大津波が福島第一原子力発電所(通称イチエフ)を襲った。本作は、事故対応のため死を覚悟して発電所に残り、世界中のメディアから“Fukushima 50”と呼ばれた福島出身の作業員たちの真実を描き出す。 発電所内にあった、知られざる“もう1つの現実”にまつわる物語を紡ぐのは、福島第一原発1・2号機当直長、伊崎利夫役の佐藤浩市、福島第一原発所長・吉田昌郎役の渡辺謙、5・6号機当直副長、前田拓実役の吉岡秀隆、緊急時対策室総務班・浅野真理役の安田成美のほか、新たに発表となった豪華キャストたち。緒形は吉田がいる緊急時対策室で、大津波で失われた原子炉建屋の電源復旧のために尽力する発電班長・野尻庄一を演じる。現場最年長ながら危険な任務に挑む管理グループ当直長・大森久夫役の火野、地震発生直後にイチエフに駆けつける第2班当直長・平山茂役の平田、見回り中に大津波を目の当たりにする第2班当直副長・井川和夫役の萩原が脇を固める。 さらに、吉岡が伊崎の1人娘・遥香、富田が妻・智子、斎藤が遥香の恋人・滝沢大に扮し、佐野は地震発生後に自らイチエフへ向かう内閣総理大臣を体現。そのほか、堀部圭亮、石井正則、皆川猿時、金田明夫、矢島健一、篠井英介、ダンカン、小倉久寛、和田正人、田口トモロヲ、小市慢太郎、段田安則、前川泰之、中村ゆり、泉谷しげるらが顔をそろえた。 (略) ティザービジュアルには、福島第一原発を囲む美しい紺碧の海を背景に、主要キャストの力強い眼差しと、「自分たちが、最後の砦――」という決意が切り取られている。「Fukushima 50」は、20年3月から全国で公開。 全文は「Fukushima 50」特報公開 緒形直人、火野正平、萩原聖人、吉岡里帆、斎藤工ら豪華キャスト参加

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(社説)柏崎刈羽原発 地元に再稼働迫るのかvia朝日新聞

 東京電力が、新潟県に持つ柏崎刈羽原発の将来について、新しくて出力が大きい6、7号機の2基が再稼働した後、「5年以内に、1~5号機のうち1基以上で廃炉も想定したステップ」に入ると表明した。  原子力規制委員会の主要審査を通った2基を動かしたい東電に対し、地元の柏崎市長が、認める条件として残る5基の廃炉計画を示すよう求めていた。その回答が、これである。  初めて廃炉に言及したとはいえ、計画を示すどころか「まずは再稼働を」と迫るような言いぶりだ。理解に苦しむ。  6、7号機の審査が大詰めだった2017年、東電が重要施設の耐震性不足をきちんと報告・説明していなかったことが明らかになった。朝日新聞は社説で「原発を運転する資格があるか」と改めて問い、福島第一原発事故への賠償や廃炉の費用は再稼働に頼らず稼ぎ出す方策を考えるべきだと訴えた。 東電は今夏にも、地震の際に柏崎刈羽原発の一部設備に異常があるとの誤情報を発信し、陳謝している。そこに「再稼働ありき」のような姿勢だ。不信感を抱く住民が強く反発したのは当然である。  柏崎刈羽の2~4号機は中越沖地震後の12年間止まったままだ。1号機は原則40年の運転期限まで残り6年。これらの再稼働は極めて難しいとみられている。それでも東電が廃炉を確約できないのには理由がある。  福島の事故で経営が立ちゆかなくなって実質国有化された東電は、国とともにまとめた再建計画で柏崎刈羽の1~5号機も段階的な稼働を想定している。火力発電の燃料費が節約でき、1基で年1千億円ほどの収益改善を見込む。廃炉に動けば再建の前提が崩れかねない。  温暖化対策として、発電時に二酸化炭素を出さない原発や再生可能エネルギーの「非化石電源」の割合が法律で義務づけられたことも理由にあげる。達成には「現時点では1~5号機は必要な電源だ」という。 だからといって再稼働を迫るなら筋違いだ。原発は安全対策コストの上昇で、経済合理性からも廃炉の決定が相次いでいる。現実にあわせた再建計画の再考や、将来の電源構成の見直しが必要なのではないか。 […] 全文

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東電、原発事故被害者への「賠償の誓い」反故…賠償金を値切り、和解手続き打ち切り via Business Journal

文=明石昇二郎/ルポライター 東電が反故にした「賠償3つの誓い」  2011年3月の東京電力福島第一原発事故で被災した人たちの損害に関する「賠償請求権」の時効が迫っている。原発事故の発生から10年となる2021年3月を過ぎると、加害企業である東電に対する請求権が消滅するのだ。 民法上の時効は3年である。だが、原発事故という特殊な事情を勘案して、2013年12月に原賠時効特例法が成立。福島第一原発事故による損害に限り、時効が10年へと延長された。一方、賠償金を請求される東電に対しては、政府が原子力損害賠償支援機構(原賠機構。現在は原子力損害賠償・廃炉等支援機構と改組)を設立し、税金を兆円単位で投入。東電が被害者に対して迅速に賠償を行なうよう、資金面で支援した。 ところで、東電は同社のホームページに「損害賠償の迅速かつ適切な実施のための方策」を掲げている。この中で東電が「3つの誓い」として挙げた賠償方針は次のようなものだ。 1.最後の一人まで賠償貫徹 2.迅速かつきめ細やかな賠償の徹底 3.和解仲介案の尊重 (略)  東電が「誓い」を反故にし、和解案には応じない方針を取る限り、ADRを通じて被災者を救済することは不可能である。つまり今のADRでの賠償交渉では、加害企業が賠償のルールを決め、被害者より威張っている。ならば東電も、ハッタリの「誓い」をホームページから削除すればよさそうなものだが、「誓い」は今も掲げ続けられている。 原発事故で破綻した東電は、血税が投入されて救済され、今では事実上の国営企業(原賠機構の子会社)である。賠償費用にしても原子力損害賠償・廃炉等支援機構に用立ててもらっており、身銭を切らずに済んでいる。被害者に対し、とても威張れる立場ではない。にもかかわらず、ADRでの和解案を拒否し始めた東電に対し、国が是正するよう指導することもない。これでは、東電の「ADR和解案拒否」はこれ以上の税金からの支出を抑制すべしという国の方針だと見られても致し方ない。 (略) ADRセンターにおける仲介費用は無料。ADRセンターが個別の事情に応じた和解案を提示して、東電との賠償交渉を仲介してくれる。通常であれば半年程度で和解案が示され、解決を図ることを目指した。ただし、和解が不成立に終わった場合は、被害者は裁判を通じて損害賠償請求することになる。一審、控訴審、上告審を経て判決が確定し、実際に賠償が果たされるまでには、気の遠くなるような歳月がかかることになる。 そして事故から8年後の今、ADRセンターが和解を打ち切るようになった。こうなった最大の原因は、東電を従わせる強制権限がADRセンターにはない――ということに尽きる。 東電と和解できず、賠償が果たされなかった被害者は、裁判をするか、賠償請求を諦めるかの瀬戸際に立たされている。ADRでの協議で東電との間で長年積み重ねてきたやり取りや証言、証拠の数々も、新たに始める裁判では一からやり直さなければならない。 (略) それだけに、原発事故の被害者救済のため、原発事故を機に米国流の集団訴訟「クラスアクション」の制度を我が国に導入し、最大限活用すべきだったのだ――と、今さらながらに思う【注1】。時効を10年延長することや、強制権限のないADRセンターを設けるより、「クラスアクション」制度の導入にこそ尽力すべきだったのだ。加害企業である東電が、法律の素人である一般市民を相手に白昼堂々と「赤子の手をひねる」ようなマネをするなら、それに対抗できる手段が必要だったのである。 注1】2011年11月に上梓した『福島原発事故の「犯罪」を裁く』(宝島社刊)の中で筆者は、作家の広瀬隆氏、弁護士の保田行雄氏とともに、福島第一原発事故の被害者救済のために「クラスアクション」制度を導入するよう提案していた。 だが、法曹界や政界は、この提案を無視し続けてきた。日本の法曹界は原発の大事故が実際に起きるまで、被害者が数十万人から百万人規模で生み出される損害賠償事件が発生することに対し、何の備えもしておらず、福島第一原発事故後、泥縄式に対処してきた。 (略) 「クラスアクション」制度とは?  クラスアクションとは一種の集団訴訟なのだが、普通の集団訴訟ではない。公害事件や薬害事件などの被害者をまとめて救済しようという趣旨で設けられた、米国の裁判制度のことだ。少数の原告が被害者全員を代表するかたちで裁判を行ない、判決で得た成果はすべての被害者が享受できる。その裁判を「クラスアクション」とするかどうかは、判決が下される以前に裁判官が判断する。こうした進歩的かつ民主的な裁判制度は、まだ日本に存在しない。 このクラスアクション制度のメリットは、裁判を躊躇する被害者にまで法的救済の道を開くことだけにとどまらない。実は、裁判所にとっても多大なメリットがある。福島第一原発事故に関連する同一ケースの訴訟が裁判所に殺到するのを未然に防ぐことができるのだ。すなわち、国費(=税金)の大幅な節約にもつながる。この制度をいきなりすべての裁判に適用するのが難しければ、まずは福島第一原発事故のケースに限った「特措法」「特例法」のかたちで導入すればよい。 (略) 最大の利点は、損害賠償案をまとめる際に、裁判所という「第三者」のチェックが入ることだろう。「賠償スキーム」(賠償の枠組み)を加害者である東電側がつくるという異常事態が、これで一気に是正・解消される。 賠償のモデルケースができれば、放射能汚染によって故郷を追われ、慣れない土地や住居で暮らしながら、生活の再建と同時にADRや裁判をやらなければならないという苦労を、被害者はしなくて済む。損害賠償請求に注力しなければならなかった時間を、生活再建のために使うことができるようになるのである。つまり、被害者の経済的、時間的、心理的負担を大幅に減らせるのが、クラスアクション制度導入の最大のメリットだ。 ※  先にも触れたが、日弁連では賠償請求権の時効を20年へと再延長する立法措置を国に要望するのだという。これが叶った暁に一番の恩恵を被るのは、東電とともに賠償金を値切り続けてきた東電弁護士軍団【注2】かもしれない。被害者の前に立ちはだかり、時効が延長された20年の間、救済の邪魔をすることで食いつなぎ、さらにもう10年、生き永らえることができるのである。そんな彼らに支払われる報酬の原資は、東電に注ぎ込まれた私たちの血税だ。彼らはまさに悪徳弁護士の鏡だと、筆者は思う。 【注2】東電弁護士軍団が賠償金を値切るため、どのような法廷戦術を駆使しているのかについては、「週刊プレイボーイ」(集英社/2015年3月30日号)の記事『3年で108億円もの弁護士費用をゲットした東電リーガル・ハイ軍団のトンデモ屁理屈集』で、弁護士らの実名入り・写真付きで解説したことがある。 全文は東電、原発事故被害者への「賠償の誓い」反故…賠償金を値切り、和解手続き打ち切り

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「福島第一原発は津波が来る前に壊れていた」元東電社員“炉心専門家”が決意の実名告発 via 文春Online

事故検証結果は「津波が原因」。しかし、それは間違っていた…… (略) 「東京電力(株)福島第一原子力発電所の事故では地震の後に襲来した津波の影響により、非常用ディーゼル発電機・配電盤・バッテリーなど重要な設備が被害を受け、非常用を含めたすべての電源が使用できなくなり、原子炉を冷却する機能を喪失しました。この結果、炉心溶融とそれに続く水素爆発による原子炉建屋の破損などにつながり、環境への重大な放射性物質の放出に至りました。こうした事故の検証を通じて得られた教訓が、新規制基準に反映されています」 元東電社員が突き止めた本当の事故原因 要するに、「津波で電源を喪失し、冷却機能を失ってメルトダウンが起こり、重大事故が発生した」ということだ。 この点に関して、津波の規模が「予見可能だったか、想定外だったか」という議論がなされてきた。しかし双方とも「津波が事故原因」という点では一致し、多くの国民もそう理解している。 ところが、「津波が原因」ではなかったのだ。 福島第一原発は、津波の襲来前に、地震動で壊れたのであって、事故原因は「津波」ではなく「地震」だった――“執念”とも言える莫大な労力を費やして、そのことを明らかにしたのは、元東電「炉心専門家」の木村俊雄氏(55)だ。 木村氏は、東電学園高校を卒業後、1983年に東電に入社、最初の配属先が福島第一原発だった。新潟原子力建設所、柏崎刈羽原発を経て、1989年から再び福島第一原発へ。2000年に退社するまで、燃料管理班として原子炉の設計・管理業務を担当してきた“炉心屋”である。 東電社内でも数少ない炉心のエキスパートだった木村氏は、東電に未公開だった「炉心流量(炉心内の水の流れ)」に関するデータの開示を求め、膨大な関連データや資料を読み込み、事故原因は「津波」ではなく「地震」だったことを突き止めた。 「津波が来る前から、福島第一原発は危機的状況に陥っていた」 「事故を受けて、『国会事故調』『政府事故調』『民間事故調』『東電事故調』と4つもの事故調査委員会が設置され、それぞれ報告書を出しましたが、いずれも『事故原因の究明』として不十分なものでした。メルトダウンのような事故を検証するには、『炉心の状態』を示すデータが不可欠となるのに、4つの事故調は、いずれもこうしたデータにもとづいた検証を行っていないのです。 (略) 7基もの原発が稼働中の現在、このことは重大な意味をもつ。「津波が原因」なら、「津波対策を施せば、安全に再稼働できる」ことになるが、そうではないのだ。 木村俊雄氏が事故原因を徹底究明した「福島第一原発は津波の前に壊れた」の全文は、「文藝春秋」9月号に掲載されている。 全文は「福島第一原発は津波が来る前に壊れていた」元東電社員“炉心専門家”が決意の実名告発

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原発ADR、打ち切り急増 東電の和解拒否で昨年から via 東京新聞

東京電力福島第一原発事故の賠償を求め住民が申し立てた裁判外紛争解決手続き(ADR)で、国の原子力損害賠償紛争解決センターの和解案を東電が拒否し、センターが手続きを打ち切るケースが二〇一八年から急増している。センターは、東電が和解に応じず膠着(こうちゃく)状態となり、解決の見込みがないまま手続きが長期化したことから、住民に訴訟も検討してもらうための対応だと説明している。 東電は賠償への姿勢を一四年に示した「三つの誓い」で「和解案を尊重する」と表明している。住民側の弁護団は誓いを実行していないとして東電を批判している。 センターによると、東電の和解案拒否による打ち切りは一四~一七年の四年間で計六十一件あったが、全て東電の社員や家族が賠償を求めた申し立てで、一般住民の申し立てはなかった。 しかし一八年は全四十九件のうち東電関係は九件で、大部分は住民からのものだった。この中には福島県浪江町(約一万五千人)や飯舘村(約三千人)、川俣町(約五百六十人)の住民が集団で申し立てたADRが少なくとも十八件あり、申立人は約一万九千人に上る。 各弁護団によると、継続中のADRでも東電が和解案を拒否している案件が複数あるという。 東電は拒否の理由として、和解案が国の指針を超える賠償を提示していることなどを挙げる。センターは、指針に明記されていない損害でも個別事情に応じて認められるとして受諾を勧告してきたが、東電は拒否を続けている。 続きは原発ADR、打ち切り急増 東電の和解拒否で昨年から

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