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【ウクライナの女たち②】私はふるさとを2度失った チェルノブイリと紛争 via Globe +

彼女たちの「あれから」をたどる旅2014年春、ウクライナという東欧の国が突如、世界の注目を浴びた。隣の大国ロシアとの関係をめぐって紛争に陥った「ウクライナ危機」。当時、紛争地を取材した記者が、6年ぶりにウクライナを訪れ、原発事故や紛争に翻弄され、故郷を失ってもたくましく生きる女性たちの胸の内に迫った。第2回は、チェルノブイリ原発事故と東部紛争で二度ふるさとを失った女性、そして、紛争で壊れたひとり息子との関係修復を願いながら希望を探し続ける女性に会いに行った。(渡辺志帆 文中敬称略) 【アナ・ジュルディツカヤ】それでも「こうなる運命だった」2度、ふるさとを失ったウクライナ女性がいる。1度目は、旧ソ連時代の1986年に起きたチェルノブイリ原発事故で、2度目はウクライナ危機で東部ドネツクを逃れて。今春、首都キエフ北部のアパートに暮らす、アナ・ジュルディツカヤ(38)を訪ねた。 82年4月、アナはチェルノブイリ原発の従業員たちが暮らすニュータウン、プリピャチに生まれた。父イブゲニ(66)は原発で働くエンジニアだった。 アナに、世界を震撼させた原発事故の記憶はほとんどない。ただ、事故の6日前、4歳の誕生日を迎えて、両親に開いてもらったパーティーのことは、今もよく覚えている。町中に淡いピンク色のアンズの花が咲き乱れる、美しい季節だった。プレゼントやおもちゃに囲まれ、友達と楽しい一日を過ごした。そして、事故後まもなく住民全員の避難が命じられた。平静を装って支度をする両親や周囲の大人の目に恐怖が宿っていたこともまた、アナははっきりと覚えている。 一家が移り住んだのは、プリピャチから約800キロも離れたウクライナ東部ドネツクだった。プリピャチ住民の多くが130キロほどしか離れていない首都キエフや近郊の都市に避難していた。「両親がここまで遠くに逃げたのは、原発事故で感じた恐怖の大きさゆえだと思う」と、アナは考えている。 ドネツクで育ったアナは18歳の時、友人の紹介で2歳年下のアンドレイと出会い、22歳で結婚。すぐに子どもを望んだが、10年たっても授からない。医師に相談すると、妊娠するのに重要な甲状腺ホルモンの値に問題があると診断された。「不妊の原因は、原発事故で大量に放出された放射性物質に被曝(ひばく)したせいだと思う」。アナはそう考えているが、証明できるものはない。母もまた甲状腺に腫瘍(しゅよう)ができるなどして、体調がすぐれない。家族の中で政府の医療補償を受けられるのは、原発従業員で事故処理にも携わった父だけだ。経済的な余裕はなく、ドネツクでは十分な不妊治療を受けられなかった。 さらなる試練が襲う。愛情深い夫と築いてきたドネツクでの静かな暮らしは、14年に勃発した東部紛争で壊されていった。鉄鋼会社のエンジニアだったアンドレイは、紛争が始まった14年春、単身キエフに移り、ITプログラマーに転職するための勉強をスタート。安全と、よりよい生活を求めての決断だった。アナも3カ月後の14年7月、政府軍と親ロシア派との戦闘が激しさを増す中、命からがら夜行列車に乗り、夫を追ってキエフに向かった。 アンドレイは努力のかいあって、キエフのIT企業に転職。アナも市内の質屋で働いてお金を貯め、本格的な不妊治療を始めた。約3年後の18年、7回目の人工授精で長女ミラスラヴァ(2)を授かった。愛らしい娘の成長が、家族の苦い思い出を幸せに変えていった。 続きは【ウクライナの女たち②】私はふるさとを2度失った チェルノブイリと紛争

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キエフは世界で最も大気汚染がひどい都市に チェルノブイリの森林火災 via Sputnik

ウクライナの首都キエフは、同国のチェルノブイリ原発立入禁止区域で今月発生した森林火災が原因で、世界で最も大気汚染がひどい都市となった。この事実は、大気の状態データをリアルタイムで公開している「エア・ビジュアル」のサイトで示されている。 日本時間の16日6:30時点でキエフの大気汚染指数は196、キエフの一部の地区では343に達している。14時の段階では、キエフの指数は169にまで低下した。通常時では、この街の指数は150を超えないという。 […] ウクライナのオンライン紙「ストラナ.ウア」によると、キエフの大気汚染の直接の原因は、チェルノブイリ原発の立入禁止区域の森林火災。火災は一旦鎮火したものの、砂嵐によって16日に再び発生した。スモッグは立ち入り禁止区域から風に乗ってキエフに運ばれた。 キエフ当局は、住民に窓を開けず、外出せず、液体を多めに飲み、室内を加湿するよう呼びかけた。住民らは強い焦げ臭や煙で黒く汚れるなどの苦情を訴えている。 チェルノブイリの森林火災 先に、チェルノブイリ原発禁止区域で森林火災が発生し、約2週間にわたって消火活動が続けられ、作業は難航していたが、14日に降った雨により、森林火災の延焼が食い止められたと報じられた。火の手はプリピャチ川の左岸に燃え広がり、原発と放射性廃棄物の貯蔵施設に迫った。この火災で原発近くの多くの旧村落が燃え、『赤い森』(原発から10キロ以内の汚染された森)が失われた。非公式の見解では、火災の原因は数カ所で放たれた放火。なお、火災は砂嵐によって16日に再び発生した。 全文

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チェルノブイリ原発近くで山林火災、懸念深まるも制圧宣言 via CNN.co.jp

(CNN) ウクライナの緊急事態対応当局は16日までに、世界最悪の原発事故が1986年に起きた同国チェルノブイリ近くでここ数日間続いていた山林火災が制圧されたと報告した。 […] 原発事故後に設けられた広さ1000平方マイル(約2590平方キロ)の居住禁止区域内での山林火災は以前にもあった。ただ、今回は火勢が原発施設や放射性物資の廃棄物貯蔵施設に及びかねないとの懸念も出ていた。 同原発の見学ツアーを手がける業者は13日、原子炉や廃棄物施設から2キロ内で火災が続いているとフェイスブック上で指摘。「状況は重大。地方行政当局は全てを制御していると主張しているが、実際は火勢は新たな範囲に急速に広がっている」との危機感を表明していた。 一方、緊急事態対応当局は14日、首都キエフや周囲の地域における放射線レベルは通常の正常値内にあると発表した。また、ウクライナの大統領府は声明で、居住禁止区域内での火災の全てのくすぶりは数日間内に消し止められるとも約束した。 消火作業には航空機3機、ヘリコプター3機に消防士400人以上を出動させていた。 同原発は近年、人気の観光地としての様相も呈していた。米ケーブルテレビ局HBOが昨年、事故を題材にしたミニシリーズを放映後は訪問客が激増してもいた。ウクライナ政府は昨年7月、原発を公式な観光資源に指定することも決めていた。 全文

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「原因は放火」 チェルノブイリ立ち入り禁止区域の火災、1週間余りでようやく鎮火via Sputnik

チェルノブイリ原発の立入禁止区域での森林火災が14日、発生から1週間余りでようやく鎮火した。雨が降り、鎮火を助けた。ウクライナの国家立入禁止区域管理庁付属社会協議会のメンバー、ヤロスラフ・エメリヤネンコ氏は火災の原因について、立ち入り禁止区域内の侵入者による放火の可能性があると発表した。ウクライナの「グロマドスケ」が伝えた。 エメリヤネンコ氏は「今回の火災は、誰もいないところで起きた。なぜならこの区域は隔離で閉鎖されているからだ。しかし『ストーカー』を自称する立ち入り禁止区域への不法侵入者がおり、火災は彼らが通った『小道』で起きた」と述べた。チェルノブイリの森林火災 火の手は原発へ12またエメリヤネンコ氏は、現場では現在も「草が燃え、煙が出ている」とし、救助隊や森林警備隊が事態の掌握に努めており、「我々は線量計を片手に移動している」と語った。 先にウクライナ当局は、立入禁止区域内の使用済み核燃料貯蔵施設(チェルノブイリ原発)への延焼はないと発表した。同施設は不燃性の鉄筋コンクリート建造物であるほか、その半径100メートルの森林は伐採されているためとしている。 […] 火災はプリピャチ川の左岸に燃え広がり、チェルノブイリ原発に迫った。原発近くの旧村落の多くのエリアが焼失し、1986年の原発事故によって生じた有名な「赤い森」の一部が失われた。航空機による空中消火も行われた。火災による損失は、推定数千万フリヴニャ(1フリヴニャは3.98円)。 先に、地元警察が、キエフ州の村在住の男(27)を放火の疑いで拘束した。その後、もう一人の容疑者が拘束されたと報じられた。 この状況を背景に、ウクライナの原子力エネルギーと産業の元関係者らでつくる協会は、同国の原子力分野における脅威的な状況と「次なるチェルノブイリ」が起きる危険性を指摘した。 全文

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4月4日、ウクライナ・チェルノブイリ原子力発電所付近の居住禁止区域で起きた火災は、一週間経った現在も消火活動が続けられている。via Sputnik

最初の火災は、原発から半径30キロ圏内に位置し、立入禁止区域となっているウラジミロフカ村で発生した。その後周囲の森林地帯に延焼。これにより、約35ヘクタールが焼失した。 リアノーボスチ通信によると、現在、火災は原発に隣接するプリピャチ市まで到達し、高レベル放射性廃棄物の保管庫まで火の手が迫っているという。 なお、放火したとみられる人物の身元は既に特定され、刑事事件が提起された。 画像を見る

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チェルノブイリで森林火災、高い放射線に阻まれ消火活動難航 via Yahoo!Japan ニュース

[…] ウクライナにあるチェルノブイリ原発周辺で今月3日に発生した火災は、周囲の森林地帯に延焼。11日も消防当局による懸命の消火活動が続いたが、現場では高い放射線量が計測され、作業は難航している。  当局によるとこれまでに数十エーカーを焼失。また激しく燃えている場所で通常の値を超える放射線量を計測したという。 […] 火災は今月3日、規制区域の西側で発生し付近の森林地帯に延焼。この一帯は依然として放射線レベルが基準値を超えている。  ヘリや航空機、そして多数の消防士を動員して、消火活動が続いている。 全文とビデオ

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チェルノブイリ原発の立ち入り禁止区域でウクライナ人4人が拘束される via Sputnik

チェルノブイリ原子力発電所の立ち入り禁止区域で狩猟をしようとしていたウクライナ人4人が、ウクライナの治安当局に拘束された。15日、ウクライナ国家国境庁が発表した。 同庁は「ウクライナ人4人が、設置されたチェックポイントの外の強制移住区域の後方境界を車で通過した」と発表した。 ウクライナ国家国境庁によると、4人の男はそれぞれ狩猟用ライフルと弾を持っていた。 4人に関する行政報告書が作成され、4人には罰金が科される可能性があるという。 続きはチェルノブイリ原発の立ち入り禁止区域でウクライナ人4人が拘束される

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ザッピング 原発が生んだ犠牲と不正 via 毎日新聞

有料BS放送「スターチャンネル」で9月に放送が始まった米国の連続ドラマ「チェルノブイリ」全5話を視聴した。1986年に起きたソ連(現ウクライナ)のチェルノブイリ原子力発電所爆発事故を題材に、当時の緊迫した様子を生々しく再現した実録ドラマだ。  印象的なシーンがある。第3話で、核物理学者のホミュック(エミリー・ワトソン)が事故の原因究明のため、入院した原発作業員らに話を聞きに行く。そこでは、おそらく日本の地上波テレビでは“過激な描写”に分類されるような、深い傷を負った作業員の顔や体が映し出される。しかし、その後でホミュックが別の作業員と会う場面では、彼の脚しか映されない。なぜかと思ったら、ホミュックはこう口にした。彼は「顔がなくなっていた」と。 (略) ドラマは同局で11月以降も再放送される。【屋代尚則】 全文はザッピング 原発が生んだ犠牲と不正

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放射能の恐怖とソ連の闇を語る(前編) チェルノブイリの元“清掃員”「原発の内部は奇妙なほど美しかったが…」via Courrier.jp

(略) 米HBOの新作ドラマ『チェルノブイリ』の放送によって再び事故が注目を集めるなか、元清掃員のマイケル・フィシュキン氏が「未知の恐怖」と闘った自身の体験をイスラエル紙に語った。 真夜中の訪問者 ──あなたはチェルノブイリの「清掃員」だったそうですが、清掃員とは何ですか? マイケル・フィシュキン(以下、フィシュキン) 清掃員とは、1986年の原発事故の後にチェルノブイリを除染するために送られた人々です。汚染のひどさを把握したソ連政府は、できるだけすみやかにこの一件を終わらせたいと考えました。 ソ連体制下で最も安価に手に入ったもの、それは人間です。 放射線防護を施した車両といった最先端の機器と違って、人間はタダで利用できます。それで、国民を事故現場へ送り込んで除染活動をさせたのです。 ──そこである夜、あなたは連行されたのですね。当時、あなたは26歳ですでに医師でした。 フィシュキン 1986年の5月9日の深夜のことです(爆発事故は4月26日に起こった)。 その頃、私はウクライナのイヴァーノ=フランキーウシク州(チェルノブイリからは数百キロ離れている)にある小さな病院に勤めていて、低所得者向け集合住宅の一室に住んでいました。 午前3時ごろ、誰かが私の部屋をノックしました。集合住宅の住人の具合が悪くなり、医師の私を呼びに来たのだと思いました。 ところがドアを開けると、見知らぬ男が2人立っていました。どちらも私服でした。相手が誰なのか見当もつかなかったので、病院で何かあったのかと訊ねました。 すると、「病院とは関係ない。3分以内に出発の準備をしてほしい。下でバスが待っているから」と言われました。 (略) ──兵士でもなく、チェルノブイリから遠く離れたところに住んでいたあなたが、なぜ選ばれたのでしょう? フィシュキン じつはその数日前に病院で、あるKGBの高官の治療をしたのです。彼から血液中にアルコールが検知されたことを報告しないでほしいと言われたのですが、私は断りました。それに腹を立てた男が、報復として「清掃員」のリストに私の名前を入れたそうです。後日、ある党幹部から聞きました。 (略) ──ジギタリスですね。 フィシュキン そう、とても匂いの強い花です。私が屈みこんでその花を摘もうとすると、いきなり将校のひとりが「草木に触れてはいけない! 危険だから!」と叫びました。 「この草なら知っています。危険ではありませんよ」と私が答えると、その将校は「草は危険でなくても、そこに積もっている塵が有害なのだ」と言うのです。 ──それが真実を知るきっかけだったのですね。 フィシュキン 「どういうことですか?」と訊ねると、「ここの原子力発電所で爆発があって塵が飛散した」という答えが返ってきました。 ベラルーシに行くはずじゃないのかと問い詰めると、「君に説明する義務はない」と腹を立てて行ってしまいました。 その後、私たちは事故のあった原発の隣に設営されたキャンプへ連れて行かれ、何も触らないで命令を待つように言われたのです。 (略) ある夜、大きな壕を掘るように言われ、一晩中掘りました。翌朝になると清掃員全員が集合させられました。 民間人と兵士を合わせて6000人ほどいたでしょうか。そして、こう告げられたのです。 「諸君がここへやってきたのは原子力発電所で爆発があったからだ。諸君はもう二度と故郷へはもどれないかもしれない。 我々にも諸君をいつ解放できるかはわからない。諸君は祖国の防衛にあたっている。祖父や祖母たちが国を守るために戦争で死んでいったように、いまが君たちの責任を果たすときだ」と。 (略) ある日の任務で、私たちは近隣の村々を訪れて住宅を洗浄するように言われました。住宅の屋根から水をかけて洗い、汚染された水が周辺の地面に滴り落ちたら、土を引っくり返さなくてはなりませんでした。 ──その一帯の住民はすでに退避した後だったのですね。 フィシュキン 第3次世界大戦が終わった後のようでした。大きな村で広い農場もあるのですが、人っ子ひとりいないんです。全員が逃げたあとで、家畜もすでに処分されてしまったあとでした。 体毛に放射性物質が付着しているという懸念から、犬もほとんど殺されていましたが、猫は自由にそこらをうろつき回っていました。なぜ犬は殺されて猫は殺されなかったのか、私にはわかりませんでした。 (略) ──原子力発電所の内部に入ったのはいつのことですか? フィシュキン 発電所に近い戸外で3週間ほど作業した後、すでに原発で作業をしていた兵士と交代で内部で働くことになりました。 (略) 私たちの最初の仕事は除染作業でした。 爆発によって軽いものは空中に飛散して塵となりましたが、石炭や黒鉛などの重いものは多量の放射線を浴び、破片となって地上に落下しています。 … Continue reading

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最悪の原発事故、元モスクワ支局長が見たドラマの本質 via 朝日新聞

編集委員・副島英樹 (略) 職員が嘔吐…「核の恐怖」を可視化 その名の通り、1986年4月26日に旧ソ連(現ウクライナ)のチェルノブイリ原子力発電所で起きた20世紀最悪の原発事故をベースにしたドラマだ。事故対応にあたった核物理学者のレガソフ氏ら実在の人物を主人公に、当時の状況が生々しく再現される。 チェルノブイリ原発の原子炉は、核分裂に伴って出る中性子を減速するのに水ではなく黒鉛(炭素)を使う黒鉛減速炉(RBMK)と呼ばれる。旧ソ連が独自に開発したもので、レガソフ氏はその専門家だった。 この事故では4号炉が動作実験中に制御不能となって爆発。炉心がむき出しになり、放射性物質をまき散らした。周辺住民は移住を強いられ、半径30キロ圏内が居住禁止区域に。事故処理には「克服」や「清算」とのニュアンスを込めて「リクビダートル」と呼ばれた作業員が投入され、ヘリから砂やホウ素、鉛を投下する消火作業などにあたった。ロシア政府は2000年、約86万人の作業員のうち5万5千人以上が死亡したと公表したが、放射線障害による犠牲者数をめぐっては大きな幅があり、今も定説はない。 第1話は、「ウソの代償とは?」という問いかけから始まる。それは、「本当に危険なのはウソを聞きすぎて真実を完全に見失うこと」という意味深な言葉へと続く。 現場で黒鉛の破片を手にした消防士が強烈な放射線で肉がただれ、原発職員が突然嘔吐(おうと)して崩れ落ちる場面などは、「核の恐怖」を可視化している。 しかし、このドラマの本質はさらに深いところにある。保身のための隠蔽(いんぺい)や責任転嫁、不都合な真実は見たくないという「あったことをなかったことにしよう」とする行為こそ、もたらす代償は計り知れないという教訓だ。その一端が、ドラマで何度も語られるセリフ「アンダーコントロール(制御下にある)」に表れている。2011年の東京電力福島第一原発事故後、日本でもよく耳にした言葉だ。 (略) 重なる「チェルノブイリの祈り」 第1話の冒頭に消防士の夫婦が出てくる。事故が起きた日の午前1時23分。妻は窓越しに、原発から青白い光が上るのを目撃し、直後の震動に驚く。夫はまもなく作業員として現場へ出動する。この夫婦が、ノーベル文学賞作家スベトラーナ・アレクシエービッチ氏のドキュメンタリー「チェルノブイリの祈り 未来の物語」(岩波書店)の最初に出てくる消防士夫婦と同姓同名であることに気づいた。「チェルノブイリの祈り」を参照しているのは明らかだ。 ノーベル賞受賞翌年の2016年、アレクシエービッチ氏にインタビューしたことがある。住民避難が遅れた背景に何があったのか、彼女はこう語った。「原子炉の黒鉛は2日間燃え続けました。とても美しく燃えたと言います。通常の火災とは違う何らかの発光があったそうです。近くの村の住民たちは子どもを連れ、その光景を見に行きました。中には物理の先生もいました。原発の排水をためる貯水池では、子どもたちが魚を釣っていたのを今でも覚えています」 ドラマでも、粉雪のような死の灰が舞う中、住民たちが不思議な光を発する原発を見学するシーンがある。核被害への無知とともに、「原子力=パワーの象徴」という核ナショナリズムの裏返しであるように思えた。これも「チェルノブイリの祈り」に重なる。 (略) ロシアでも進む映画化 ロシアでもチェルノブイリ原発事故をテーマにした映画製作が進行中だ。7月にクランクアップし、来年秋に公開の予定という。プロデューサーはノーボスチ通信に対し、「HBOと比較されても気にしない」と語っている。視点も狙いも全く異なるからとの理由だ。映画はCIA(米中央情報局)とのスパイ戦のような形になるという。ここでも、チェルノブイリを巡って米ロが火花を散らしているといえそうだ。 チェルノブイリ原発は事故後、放射能を封じ込めるためコンクリート製の「石棺」で覆われた。記者も30キロゾーンに入ってゲートで被曝(ひばく)線量の測定を受けたことがあるが、石棺の巨大さに圧倒された記憶は鮮明だ。その後は老朽化で放射能が漏れ出し、今は石棺ごとさらに巨大なシェルターに覆われ、風景は一変した。 全文は最悪の原発事故、元モスクワ支局長が見たドラマの本質

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