東京電力福島第一原発事故から12年を前に、原子力政策が大きな転換点を迎えました。政府は原発の運転期間の延長などや次世代型原発への建て替えなどを柱とする新たな原発政策の方針を正式に決定しました。岸田総理の指示から、わずか4か月。十分な議論は尽くされたのでしょうか。
■「勝手に決めるのは…」原発運転期間延長・新増設へ
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岸田文雄総理
「現在直面するエネルギー危機に対応した政策を加速していくためには、国民や地域の信頼を積み上げていく地道な取り組みも不可欠」
政府は最長60年としてきた原発の運転期間について、運転を停止してきた期間はカウントせず、実質的な延長を認める。
さらに、廃炉が決まった原発を次世代型へ建て替えることなどを決定しました。
■原発新政策 議論は尽くされた?総理指示から4か月で
安倍晋三元総理(2018年)
「原発の新増設については、現時点では想定しておりません」
2011年の東京電力・福島第一原発事故を受け、「新増設や建て替えは想定しない」としてきた政府。
一方で、菅前総理が「2050年までに温室効果ガス排出の実質ゼロ」という目標を掲げる中、2021年4月には、原発新増設を目指す議員連盟が発足。
当時、顧問として、安倍元総理も名を連ねていました。
岸田総理は2022年8月、経済産業省に対し新たな原発政策の検討を指示しましたが、2022年7月時点の資料には「2030年代半ばには運転開始」という想定とはいえ、かなり具体的なロードマップが示されています。
岸田総理の指示からわずか4か月での決定に西村大臣は・・・
西村康稔経済産業大臣
「ロシアのウクライナ侵略以降、エネルギー情勢は一変した。原子力を含めてあらゆる選択肢を追求していく」
政策の見直しを議論してきた委員の一人は、議論の進め方に苦言を呈しています。
経産省原子力小委員会 松久保肇 委員
「推進派が9割を占める委員会で議論の多様性はない。福島第一原発事故から11年の積み重ねを、一挙に4か月で覆したわけだから、少なくてももうちょっと丁寧な議論が必要だったと思う」
原発事故後、避難指示解除に合わせて、福島県大熊町に戻ってきた夫婦は・・・
避難指示解除後に大熊町に期間 伏見明義さん
「安心安全と言ってもやっぱりわからない。口ではなんとも言えるけど、いざ大きな地震なんかきたりすると、どうなるかわからないから」
避難指示解除後に大熊町に期間 伏見照さん
「やっぱり孫たちの時代が果たして、安全にいくかどうかは一番心配するところ」
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■4か月でスピード決定の理由は?
国山ハセンキャスター:
日本の原発政策が22日、大きな転換点を迎えたわけですが、まずは今ある原発について見ていきます。
未稼働・運転停止中のものを含めると、原発は全部で33基あります。そのうち4機が運転開始から40年以上、13機が30年から39年経過しているということです。
小川彩佳キャスター:
原発事故を受けて、この40年というのが運転期間の一つの区切りになっていますよね。
国山キャスター:
そんな中12月22日、政府の会議で決まったのが原発の運転期間延長です。今までは運転期間は40年、そして延長を認める期間20年、最大60年とされてきました。それが今回、既存の原発を可能な限り活用するため、福島第1原発事故後の長期停止期間を除外する方針となり、60年を超える運転というのが可能になりました。
また安全性の確保や地域住民の理解を前提に、次世代型の原子炉の開発建設に取り組む方針も決まったということです。
TBSスペシャルコメンテーター 星浩氏:
停止分を延長するということなんですけど、これ10年に限らないで15年とか20年ぐらいになっても、場合によっては70年ぐらい使う、70年80年使う、というようなことにもなりかねないわけです。
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それから何よりも、その使用済み核燃料をどうするかっていう問題、今回一切触れてないんですよね。ウクライナ戦争で使用済み核燃料が攻撃されたらもう大変なことになるっていうのは、我々も目の当たりにしてるわけです。
そこがスルーされてるというのは、非常に問題が大きいと思います。
小川キャスター:
もう一つの防衛費を巡る問題と同じくプロセスの問題ですけれども、総理が検討を指示してからわずか4か月のスピード決定ということになりました。なぜ政府はこんなに決断を急いだのでしょうか?
星氏:一つは、柏崎刈羽の再稼働を進めて東京電力の経営を安定させたいというのが本音だと私は見ています。一方で防衛費と同じように、これだけ政策の大転換をするわけですから、決定プロセスも転換すべきだと思います。
少なくとも福島の関係者の意見を聞くとか、タウンミーティングを重ねるとか、新しい形でその民意をくみ取るという工夫をする必要があると思います。