政府の原子力損害賠償紛争審査会(会長・内田貴東大名誉教授)は29日、福島市や大熊町を訪れ、現地視察をした。損害賠償(慰謝料)の指針を変える必要があるか調べるのが目的。東京電力福島第一原発の事故から11年半たって初めて、被害者から直接話を聴く場を設けた。
現地視察はほぼ毎年、開催されていたが、これまでは避難自治体などの首長の意見を聞くだけだった。今回は2日間、被害者と意見交換をする。29日は大熊町役場に広野、楢葉、富岡、大熊、双葉の5町から被害者9人が参加した。
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原賠審の委員は午前中、福島市の県自治会館で、5市町村の首長から話を聞いた。福島第一原発から30キロ以上離れているが、賠償の対象になった「自主的避難等対象区域」などの首長だ。木幡浩・福島市長は、事故の苦痛だけではなく、世間に「見捨てられた」と感じる人がいる、と指摘。「最高裁でこれまでの賠償指針が不十分と示された。見直しが遅れるほど、それ自体が精神的苦痛につながる」と話し、早急な見直しを求めた。(酒本友紀子、大月規義)