【121カ月目の汚染水はいま】「風評被害でなく実害を招く」中通りからも海洋放出に反対の声「結論ありきじゃないか」 via 民の声新聞

  • 2021/04/10

原発事故後に大量発生している〝汚染水〟の海洋放出に「NO」と言っているのは浜通りの漁業者だけでは無い。東北新幹線が通る中通りでも反対の声があがっている。地元メディアでは連日「風評」の二文字が報じられているが、二本松市のコンビニ経営者は「薄めたって放射性物質はある。実害だ」と怒る。「結論ありき。時間延ばしを図って来ただけだろう」と怒る男性も。13日にも閣僚会議で海洋放出が正式決定されるとの報道が相次いでいるが、ギリギリまで抗議行動が展開される予定で、当事者無視の強行に県民の怒りはさらに高まりそうだ。

原発事故後に大量発生している〝汚染水〟の海洋放出に「NO」と言っているのは浜通りの漁業者だけでは無い。東北新幹線が通る中通りでも反対の声があがっている。地元メディアでは連日「風評」の二文字が報じられているが、二本松市のコンビニ経営者は「薄めたって放射性物質はある。実害だ」と怒る。「結論ありき。時間延ばしを図って来ただけだろう」と怒る男性も。13日にも閣僚会議で海洋放出が正式決定されるとの報道が相次いでいるが、ギリギリまで抗議行動が展開される予定で、当事者無視の強行に県民の怒りはさらに高まりそうだ。


【「薄めても放射性物質ある」】
 「まず『風評』という言葉が、これが違うんじゃないでしょうか。『実害』ですから。山にも畑にも、放射能はまだ実際に存在しています。今回も『汚染水を海に流したら風評が広まる』と言うけれど、放射性物質が含まれる水を海に流すのは事実でしょう。『風評』でも何でもありませんよ。なぜそれを『風評』なんて言ってしらばっくれているのか。おかしいと思います。『風評』じゃないです。放射性物質が含まれる水を流すんです。薄めたって放射性物質はあるんです」
 二本松市針道でコンビニエンスストアを経営する服部浩幸さん=「『生業を返せ、地域を返せ!』福島原発訴訟」(生業訴訟)原告団事務局長=は、そう語気を強めた。
 政府の避難指示が出されなかった中通りでは、早くから「ここで生きていくしか無い」との声が多く聞かれた。避難したくても出来ない人が少なくなかった。いつしか被曝リスクは「風評被害」という言葉にかき消された。汚染や被曝リスクを口にすると、復興の足を引っ張るかのような言われ方をされる事もあった。実害に光が当たらず「風評」ばかりが叫ばれる構図は、汚染水の海洋放出問題でも同じだと服部さんは言う。
 「日々の生活では、放射能ばかり気にしているわけにもいきません。個々人が判断してどこかで折り合いを付けながら、妥協点を探しながら生きていかなくちゃいけません。それが現実です。そのためには正確な情報、開かれた情報が不可欠です。綿密な調査を継続し、データを公表する。それがあって初めて判断出来ます。そもそも放射線というのは、浴びなければ浴びないに越した事は無いんです。微量であっても、浴びなくて済むのなら浴びない方が良いんです。汚染水だって同じです。海に流さなくて済むのなら1ベクレルでも流さない方が良いに決まってる。どうしても海に流さなければならないのなら、世界中の魚や微生物の許可を得てからやれと言いたいくらいですよ」

【「住民投票なら反対多数」】
 「例えば花見。桜の名所を記した地図に最新の放射線量を示せば、『ここは高いから、幼い子どもを連れていくのはやめておこうか』とか『このくらいだったら大丈夫かな』などと判断出来ます。それが本来のあるべき姿だと思います。でも、それが無いんです。そこが全部無視されてしまって、全て元通りになりましたというような…。逆に、こういう事を言うと『』風評加害者』のような言われ方すらされてしまう部分もありますよね」
 そう語る服部さんも、経営者として忙しい毎日を送る。「浜通りの人たちはその辺りは切実だと思うんだけど、私のように中通りに住む人の関心は低いと思う。どこか他人事のようなところがあるんじゃないかな。話題に上る事も少ない。原発事故そのものがそういう感じだけどね」。汚染水が海洋放出された場合に直接的な影響を受ける浜通りとは、どうしても温度差があるという。
 「私もコンビニを始めて丸3年になるんだけど、毎日の仕事に忙殺されていると、もうね、それで手一杯。仕事以外の事を考える余裕は無いな。テレビや新聞で見聞きしたとしても、より自分にとって重要な話題…消費税だとか感染症の支援策だとか、そっちに意識が行ってしまう。それはどこの家庭も同じだと思う。景気なんか良くなっていないし、感染症で追い打ちをかけられてる。その中でも何とか食って行かなくちゃならない。子どもを育てなきゃいけない。それに忙殺されるわけですよ」
 一方で「もし住民投票で決めましょうという事になったら、反対が多数を占めると思います。そのくらいやっても良いと思いますけどね」とも。だがこれまで、そのような機運は高まらなかった。
 「日本人が変わらなきゃいけない時期なんですよ」と服部さん。そもそも、汚染水は福島だけの問題では無い。福島県民だけが考えるべき問題では無いのだ。

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